すべての元凶はあなた
第24話『弱点』
弱点を探ろうと決意を固めたものの、いまだに大した情報は掴めていない。
言葉が話せれば、簡単に聞き出すことも可能だろうに。ミアさんに話しかけても、「どうされました?」と気づかいを受けるだけだった。聖霊くんも、わたしの言葉を伝えてくれればいいのに、そういう便利機能はないらしい。
文字にしてみようかと思ったけれど、羽ペンと紙を手に入れるまでに手間がかかってやめた。
結局、ウィルがそばにいるときに、言葉の一語一句を全力で聞き取るようにしたくらい。大半は説教じみたことと皮肉だったのは、当たり前だといえば当たり前のことだった。
だけど、続けた。いつか、弱点をつかんでみせると、臭いくらいの魂を持って。
日課のお祈りが終わって部屋を出たときに、ウィルが別の人と話している場面に出くわした。別の人が膝をついているところから部下のひとりだと判断した。
「救い主様と謁見されたいとの申し出でした」
「またあの連中か。俺は連中と救い主とを会わせる気は一切ない。適当にあしらっておけ」
ウィルにしてみれば部下なのか、短い命令で終わらせる。わたしが話を聞いていたことに気づいたらしく、仏頂面がこちらを向いた。
「そんな顔をするな。お前をたやすく手放すことはしない」
ウィルの前でどんな顔をしていたのだろう。手放すとか手放さないとか、いつの間に、そんな話になったのかよくわからないけれど、「うん」とうなずいた。
ウィルが先に行ってしまう。思わず、目の前の服を掴んだ。
「おい」
いきなり声をかけられて、全身が飛び上がりそうになった。やっぱり、服を掴んだのは不快だっただろうか。自分だっていきなりやった行動に説明がつかない。なぜだか、わからないのだ。
ウィルの顔が振り向いたのは何となくわかっていた。でも、顔を上げるのは無理だった。怒られるのを待つ子供の気分でうつむく。
「急に服を掴むな。驚くだろうが」
拒絶されるかと思ったのに拍子抜けだ。それだけ? 他には何も言われない。手を払うこともしない。許されたということなのか。
ウィルが動き出した。わたしは服を掴んだまま、いくらかゆっくりになったテンポに合わせて通路を歩いた。
弱点なんて、どうでもよくなってしまった。ウィルに弱点が合ったとしても突かないかもしれないと思う。突いたら後で恐そうだし、手放されたら嫌だし。
この天敵の男がつまずいて転がってほしい。それくらいの小さな呪いが、わたしにはちょうどいいのかもしれない。
弱点を探ろうと決意を固めたものの、いまだに大した情報は掴めていない。
言葉が話せれば、簡単に聞き出すことも可能だろうに。ミアさんに話しかけても、「どうされました?」と気づかいを受けるだけだった。聖霊くんも、わたしの言葉を伝えてくれればいいのに、そういう便利機能はないらしい。
文字にしてみようかと思ったけれど、羽ペンと紙を手に入れるまでに手間がかかってやめた。
結局、ウィルがそばにいるときに、言葉の一語一句を全力で聞き取るようにしたくらい。大半は説教じみたことと皮肉だったのは、当たり前だといえば当たり前のことだった。
だけど、続けた。いつか、弱点をつかんでみせると、臭いくらいの魂を持って。
日課のお祈りが終わって部屋を出たときに、ウィルが別の人と話している場面に出くわした。別の人が膝をついているところから部下のひとりだと判断した。
「救い主様と謁見されたいとの申し出でした」
「またあの連中か。俺は連中と救い主とを会わせる気は一切ない。適当にあしらっておけ」
ウィルにしてみれば部下なのか、短い命令で終わらせる。わたしが話を聞いていたことに気づいたらしく、仏頂面がこちらを向いた。
「そんな顔をするな。お前をたやすく手放すことはしない」
ウィルの前でどんな顔をしていたのだろう。手放すとか手放さないとか、いつの間に、そんな話になったのかよくわからないけれど、「うん」とうなずいた。
ウィルが先に行ってしまう。思わず、目の前の服を掴んだ。
「おい」
いきなり声をかけられて、全身が飛び上がりそうになった。やっぱり、服を掴んだのは不快だっただろうか。自分だっていきなりやった行動に説明がつかない。なぜだか、わからないのだ。
ウィルの顔が振り向いたのは何となくわかっていた。でも、顔を上げるのは無理だった。怒られるのを待つ子供の気分でうつむく。
「急に服を掴むな。驚くだろうが」
拒絶されるかと思ったのに拍子抜けだ。それだけ? 他には何も言われない。手を払うこともしない。許されたということなのか。
ウィルが動き出した。わたしは服を掴んだまま、いくらかゆっくりになったテンポに合わせて通路を歩いた。
弱点なんて、どうでもよくなってしまった。ウィルに弱点が合ったとしても突かないかもしれないと思う。突いたら後で恐そうだし、手放されたら嫌だし。
この天敵の男がつまずいて転がってほしい。それくらいの小さな呪いが、わたしにはちょうどいいのかもしれない。