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槍とカチューシャ(1~50)

第24話『ピンク色の箱』

 翌日もその翌日も7日が経っても、夏希はわたしの授業終わりを待っていた。あんた、騎士団の訓練をちゃんとやっているのかと聞いたら、夏希はしれっとした顔で、「訓練を終わらせて来ています」と答えた。それならいいんだけれど。

「で、今日は何を持ってきたの?」

 クッキーからはじまり、昨日は花束だった。小さくて可愛らしい弁の花で、机の上に飾ってあるけれど、やっぱり意味がわからなくて困った。今回は夏希の手元を見る限り、小さな四角い箱だ。団長さんに似合わず、これまた可愛らしいピンクのラッピングで包まれているけれど、箱だとわかる。

「僕も中身は知らないんです」

「爆発したりしないよね」

「……おそらく」

 何でそこで間を置くのか。ますます不安になってくるじゃないか。手渡された箱は軽く掲げてみても重さはない。耳を近づけて音を確かめても異常はなし。とりあえず、爆発物ではなさそうだ。夏希に授業で使った分厚い書物を持ってもらい、リボンを引き抜いた。ラッピングを解くと白い箱が現れた。

「箱だ」

「そのようですね」

 蓋を取り外してみると、今度は白い箱にぴったりと収まったピンク色の箱だった。金具がついていて、コンパクトみたいに開けられるやつだ。蓋を開けたら、そこにあったのは箱ではなかった。小さくて眩くて、わたしは思わず見なかったことにして蓋を閉じる。

「団長さんがこれをわたしにって本当に言ったの?」

「はい」

 団長さんはわたしにとって、わけのわからない人だ。夏希を使って贈り物をしてきたり、よりによって今回みたいなものを送りつけたりする。すべてが一方的な行為なのだ。

 夏希に中身が見えるようにピンクの箱を高く掲げてみる。イライラした気持ちをどうにか抑えつつ、わたしは「もらえるわけないよね」と訴えた。

「まさか、団長がここまでだったとは……」

「団長さんは今何やってるの?」

「あのお方なら団長室で事務仕事をされていると思いますが……もしかして、お会いに?」

「こんなのをもらって黙っていられるわけないでしょ」

 あのピンク色の箱のなかには金色の指輪が入っていたのだから。しかも、お高そうなやつだ。
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Clap