白馬と姫(1~50)

第49話『エリエの結婚感』

 神殿に戻ると、エリエがお茶を入れてくれた。甘い香りを吸いこみながら瞼を閉ざすと、座ったまま眠ってしまいたい気分に襲われる。

 でも、午後からはお祈りの時間だから、エリエは寝かせてくれないだろう。彼女はそういう融通をきかせてくれない。仕事だし仕方ないと思うけど、今日くらいはなあと甘いことを考える。

 だけど、無理だ。長いため息を吐いた。しあわせだけでなく、疲労も逃げていってほしい。

「どうされました?」

 エリエにもひどい顔に映ったのかもしれない。わたしはティーカップをソーサーの上に戻して、エリエに視線を向けた。

「エリエは結婚とかどう思う?」

 プライベートな話だし、あんまり詮索してウザイと思われたら嫌だから、一呼吸を置いた。

「そうですね。わたしも16歳になりますし、そのときは誰かと結婚すると思います」

 エリエも結婚しちゃうんだ。この国の16歳ってもっと楽しいものだと想像していた。まさか、こんなに早く結婚しなくちゃならないなんて夢にも思わなかった。しかも、相手が国王様なんて考えられない。

「わたしが結婚したくないって言ったら、エリエはどう思う?」

「国に仕えるものとしての意見は、神子様であるという立場上、国益を優先するべきだと考えます。ですから、したくないとおっしゃるのはあまりにも無責任だと」

「……そっか」

 わたしは神子で相手は国王様。国益に関わるかはわからないけど、わがままは言えないのだ。だからやっぱり、結婚するしかないのだろう。

「ですが……個人的な意見では、神子様のお命を大切にしていただきたいと思うのです」

 エリエも知っていた。わたしが断れば、罪人にされてしまうかもしれない。「そうだね」と答えておいたけど、声は震えてしまったかもしれない。
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