白馬と姫(1~50)

第48話『再会』

 次の時を告げる鐘が鳴る。

 まだ、ほんの少しの時間しか経っていないのに、もう疲れてしまった。早く解放されたい。神殿の自分の部屋に戻ってエリエに愚痴を吐きたい。早々に帰りたくて何もわかっていないのに、「わかりました」と納得したふりをする。

 ジルベール様は挙式後の生活まで聞きたくはないのに教えてくれた。とりあえず、神子としての公務は継続するらしい。

 わたしは相づちを打ちながら、もうどうでもいいよと思っていた。わたしがどう考えようが、すべては決まっているのだ。国王様の思うままに進んでいくのだから、勝手にしてくれと思った。

 適当に「わかりました」なんて言っていると、ジルベール様は満足そうに微笑んで、やっと解放してくれた。

 国王様の部屋を後にして通路を歩く。護衛の兵士さんの案内についていく。

 陽当たりのいい通路は窓が大きくて等間隔に光が入ってくる。その光がヒールの高い靴に反射してぴかぴかに光った。わたしにはまったく似合わない靴だ。服も全部脱いで、着なれた神子服に落ち着きたい。

 そう思っていたら、前方から人の姿が見えて、足を止めた。

「サディアス」

「ひどい顔だな」

 また背が伸びたらしく、ずいぶん高い位置に赤毛があった。声も低くなったみたい。

 サディアスが不躾だったからか、護衛の人は身構えたけど、わたしは「こいつは大丈夫なんです」と告げた。わかってくれたみたいで護衛の人は肩の力を抜いた。

「でも、めずらしいね。サディアスが日の当たる場所にいるなんて、いつも真っ暗な部屋にいるのに」

「悪いか。ここに来たのは王に呼ばれただけだ」

「そう」

 もしかしたら、サディアスはすでに聞いているのかもしれない。わたしがジルベール様と結婚するってことだ。その関係でジルベール様から呼ばれたのかもしれない。

「わたし、ジルベール様と結婚するみたい」

「ああ、知っている」

「知ってるんだ。あのね、わたし……」

「もういいか? 忙しいんだ」

 サディアスにだって、うっとおしがられるのはつらい。だから、わたしは平気なふりを装って「じゃあ」と笑ってみせた。本当は全然平気じゃないのに。
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Clap