白馬と姫(1~50)
第47話『プロポーズ』
謁見の間で話すと思っていたから、国王様の部屋に通されたときにはびっくりした。「遠慮することはない」とジルベール様は言ってくれたけど、ふかふかの腰かけに座るまでにかなり考えてしまった。
人払いもして、扉も閉められてしまって、ふたりきりという状況にも恐縮した。
じろじろ見るのは失礼に当たる気がして、ざっと周囲を確かめる。思っていたような金ぴかな装飾品はない。どれもアンティークで落ち着いた木目調の棚やテーブルだった。本棚が部屋の壁沿いに並んでいる。
ジルベール様の頭のなかにはこれだけの量の知識が入っているのだろうか。考えながらぼーっとジルベール様の額を見ていたら、くすっと笑われてしまった。
「あの」なぜ、笑っているのか、わからなくて調子が狂う。
「いや、可愛いなと思ってね」
「は、はあ」
あまりにもおだてられている気がして、苦笑しか出ない。「可愛い」とか言われ慣れていないし、反応に困るからやめてほしい。サディアスみたいに神経を逆撫でするなら、怒れば済むのに。
ジルベール様はわざとらしくため息を吐いた。
「やはり、手紙では伝わらなかったようだね。まったく恋愛ごとに関してだけはうまくいかない」
「へっ?」恋愛ごと?
「手紙で伝わらないなら、直接言おう」
ジルベール様はわたしの向かい合わせになるように座り、前のめりに構えた。長い足の間で組んだ両手を落ち着きなく握り返したりしている。
何だろう、この嫌な予感。ジルベール様の口が永久に開かないで欲しいと思ってしまう。だけど、開いた。
「僕と永遠をともにしてほしい」
「永遠?」
「ああ」
「ともに?」
「ああ、ずっと一緒にいてほしい。さすがにこの意味はわかるね? あなたは僕の妻になる。そういうことだよ」
わからないと知らないふりができたらどんなにいいか。でも、意味はわかってしまった。ジルベール様はわたしと結婚すると言っているのだ。
「どうして?」
「理由なんてないよ。神子は国王と結婚する。そういう決まりなんだ」
「決まりだから、わたしと結婚するというんですか?」
「ああ、そうだよ」
ジルベール様は疑問を感じないのだろうか。好きでもないのに結婚をするの? わたしは疑問しか感じないのに。
「あなたが16歳になるまで待っていたんだ」
何でこんなにもにこやかに笑っていられるのだろう。わたしには今の状況が信じられない。「もしも、断ったら?」とたずねる前にジルベール様が割りこんできた。
「ミャーコ」
「はい」
「……王の命に従わぬ者は国に背くことと同じ。国に背いた者は罰せられる。あなたにもわかるね?」
このとき、クラウスさんの言葉が頭によぎった。
――国に背いた罪人は死あるのみ。つまり、はじめからわたしに選択肢などなかった。ジルベール様の命に従うしか、他になかったのだ。
謁見の間で話すと思っていたから、国王様の部屋に通されたときにはびっくりした。「遠慮することはない」とジルベール様は言ってくれたけど、ふかふかの腰かけに座るまでにかなり考えてしまった。
人払いもして、扉も閉められてしまって、ふたりきりという状況にも恐縮した。
じろじろ見るのは失礼に当たる気がして、ざっと周囲を確かめる。思っていたような金ぴかな装飾品はない。どれもアンティークで落ち着いた木目調の棚やテーブルだった。本棚が部屋の壁沿いに並んでいる。
ジルベール様の頭のなかにはこれだけの量の知識が入っているのだろうか。考えながらぼーっとジルベール様の額を見ていたら、くすっと笑われてしまった。
「あの」なぜ、笑っているのか、わからなくて調子が狂う。
「いや、可愛いなと思ってね」
「は、はあ」
あまりにもおだてられている気がして、苦笑しか出ない。「可愛い」とか言われ慣れていないし、反応に困るからやめてほしい。サディアスみたいに神経を逆撫でするなら、怒れば済むのに。
ジルベール様はわざとらしくため息を吐いた。
「やはり、手紙では伝わらなかったようだね。まったく恋愛ごとに関してだけはうまくいかない」
「へっ?」恋愛ごと?
「手紙で伝わらないなら、直接言おう」
ジルベール様はわたしの向かい合わせになるように座り、前のめりに構えた。長い足の間で組んだ両手を落ち着きなく握り返したりしている。
何だろう、この嫌な予感。ジルベール様の口が永久に開かないで欲しいと思ってしまう。だけど、開いた。
「僕と永遠をともにしてほしい」
「永遠?」
「ああ」
「ともに?」
「ああ、ずっと一緒にいてほしい。さすがにこの意味はわかるね? あなたは僕の妻になる。そういうことだよ」
わからないと知らないふりができたらどんなにいいか。でも、意味はわかってしまった。ジルベール様はわたしと結婚すると言っているのだ。
「どうして?」
「理由なんてないよ。神子は国王と結婚する。そういう決まりなんだ」
「決まりだから、わたしと結婚するというんですか?」
「ああ、そうだよ」
ジルベール様は疑問を感じないのだろうか。好きでもないのに結婚をするの? わたしは疑問しか感じないのに。
「あなたが16歳になるまで待っていたんだ」
何でこんなにもにこやかに笑っていられるのだろう。わたしには今の状況が信じられない。「もしも、断ったら?」とたずねる前にジルベール様が割りこんできた。
「ミャーコ」
「はい」
「……王の命に従わぬ者は国に背くことと同じ。国に背いた者は罰せられる。あなたにもわかるね?」
このとき、クラウスさんの言葉が頭によぎった。
――国に背いた罪人は死あるのみ。つまり、はじめからわたしに選択肢などなかった。ジルベール様の命に従うしか、他になかったのだ。