白馬と姫(1~50)
第42話『誕生祭』
神子としての日々を過ごしていれば、誕生祭はあっという間だった。開き直ったなんて言ったって、自分の誕生祭だ。嬉しいよりも恥ずかしいほうが勝ってしまう。
きっと、生まれてからの長い間、祝われる立場の人なら当たり前なんだろう。秋のジルベール様の誕生祭も冬のニーナさんの誕生祭も見てきたけど、ふたりは堂々としていた。やっぱり慣れている気がした。
わたしにそういった振る舞いができるかどうか不安だけど、ぐだぐだ悩んでいる間にも誕生祭は来てしまった。
エリエとふたりの神官に手伝ってもらって、神子服とヴェール姿に身を包む。クラウスさんが来る前に、ヴェールの下で演説の内容をおさらいする。
演説の内容は過去の誕生祭を参考にして、エリエと一緒に考えた。大方はエリエの意見だけどね。
原稿の文字は、わたしが読めるように日本語に書き起こしてある。でも、原稿を読みながら演説をするわけにはいかないから、暗記しなくちゃならない。そこがまた緊張の原因だったりする。
もう少し練習しておきたかったけど、正装に身を包んだクラウスさんに気をとられてしまった。クラウスさんの登場で他の神官もそわそわしている。色気にやられたんだろうなと思う。さすがにエリエは顔色を変えたりしなかった。
クラウスさんはそんな神官たちの態度に気づいているのかいないのか、いつものようにほほえんだ。
「ミヤコ様、ご機嫌いかがですか?」
「まあまあです。クラウスさんは怪我もなく元気そうですね」
「ええ、いつも通りです」
お祈りをしたんだから怪我をしないのも当たり前か。わたしのお祈りが役に立ったのかなと冗談で思っただけでも、くすぐったく感じる。クラウスさんの影が近づいてきたせいで、ヴェールがわずかに揺れた。
「おっ、これは、ニホン語ですね」
クラウスさんはニホン語に強い興味を持っている。そう、原稿にあるニホン語だけに興味があって、ヴェールごしだとしても顔が近いことには何の意味もない。クラウスさんにとって、小さなできごとなんだ。
たとえそうだとしても、わたしにしてみれば動揺してしまう。男の人と顔を近づけるなんて経験はまったく無いから。神殿のなかでは本当に女の人ばかりなんだ。
「あ、あの、クラウスさん!」
うわずった声を上げると、クラウスさんは気づいたようで、体を遠ざけた。ようやく呼吸がまともにできるようになって、わたしはその場から立ち上がった。
「あ、申し訳ありません」
「い、いえっ」
妙な雰囲気のなか、「神子様」と綺麗な声が助け船を出してくれた。
「そろそろ次の時を告げる鐘が鳴りましょう」
エリエは無機質な声で教えてくれる。確かに、鐘が鳴る頃にはお城を出発する予定になっていた。クラウスさんは気を取り戻したのか、「さあ、行きましょう」といつものように言ってくれた。
神子としての日々を過ごしていれば、誕生祭はあっという間だった。開き直ったなんて言ったって、自分の誕生祭だ。嬉しいよりも恥ずかしいほうが勝ってしまう。
きっと、生まれてからの長い間、祝われる立場の人なら当たり前なんだろう。秋のジルベール様の誕生祭も冬のニーナさんの誕生祭も見てきたけど、ふたりは堂々としていた。やっぱり慣れている気がした。
わたしにそういった振る舞いができるかどうか不安だけど、ぐだぐだ悩んでいる間にも誕生祭は来てしまった。
エリエとふたりの神官に手伝ってもらって、神子服とヴェール姿に身を包む。クラウスさんが来る前に、ヴェールの下で演説の内容をおさらいする。
演説の内容は過去の誕生祭を参考にして、エリエと一緒に考えた。大方はエリエの意見だけどね。
原稿の文字は、わたしが読めるように日本語に書き起こしてある。でも、原稿を読みながら演説をするわけにはいかないから、暗記しなくちゃならない。そこがまた緊張の原因だったりする。
もう少し練習しておきたかったけど、正装に身を包んだクラウスさんに気をとられてしまった。クラウスさんの登場で他の神官もそわそわしている。色気にやられたんだろうなと思う。さすがにエリエは顔色を変えたりしなかった。
クラウスさんはそんな神官たちの態度に気づいているのかいないのか、いつものようにほほえんだ。
「ミヤコ様、ご機嫌いかがですか?」
「まあまあです。クラウスさんは怪我もなく元気そうですね」
「ええ、いつも通りです」
お祈りをしたんだから怪我をしないのも当たり前か。わたしのお祈りが役に立ったのかなと冗談で思っただけでも、くすぐったく感じる。クラウスさんの影が近づいてきたせいで、ヴェールがわずかに揺れた。
「おっ、これは、ニホン語ですね」
クラウスさんはニホン語に強い興味を持っている。そう、原稿にあるニホン語だけに興味があって、ヴェールごしだとしても顔が近いことには何の意味もない。クラウスさんにとって、小さなできごとなんだ。
たとえそうだとしても、わたしにしてみれば動揺してしまう。男の人と顔を近づけるなんて経験はまったく無いから。神殿のなかでは本当に女の人ばかりなんだ。
「あ、あの、クラウスさん!」
うわずった声を上げると、クラウスさんは気づいたようで、体を遠ざけた。ようやく呼吸がまともにできるようになって、わたしはその場から立ち上がった。
「あ、申し訳ありません」
「い、いえっ」
妙な雰囲気のなか、「神子様」と綺麗な声が助け船を出してくれた。
「そろそろ次の時を告げる鐘が鳴りましょう」
エリエは無機質な声で教えてくれる。確かに、鐘が鳴る頃にはお城を出発する予定になっていた。クラウスさんは気を取り戻したのか、「さあ、行きましょう」といつものように言ってくれた。