白馬と姫(1~50)

第41話『1年』

 1年がめぐって、ベルホルンに新しい春がやってきた。

 小さなみつばちが花と花の間を行きかって、受粉を助けていく。近いうちに神殿の周りは花でいっぱいになるかもしれない。

 こうやって窓から眺めていると、中学生3年の春を思い出す。

 進級してクラスが変わっても友達なんていなかったわたし。15歳の誕生日には、親からお金をもらってプレゼントを自分で買っていたわたし。

 すべてのわたしを捨てて異世界へとやってくることになった。その後、ベルホルンの神子という位置に落ち着いた。

 そんなわたしにも16歳の誕生日が迫ってきている。クラウスさんに日にちをたずねられたので答えたけど、まさかこんな大事になるとは思わなかった。神子の誕生日は、国をあげて盛大に祝うらしい。

 気になったので、わたしの身の回りの世話をしてくれるエリエに聞いてみた。

 エリエはわたしよりも1個下なんだけど、すっごくしっかりしている。若くして親元から離れて神官になったからだと思う。

 しっかりもののエリエの話によると、神子を馬車に乗せて街中を駆けるとか。街の中心まで行ったら馬車から降りて、国民に向けて演説をするとか。

 エリエからそんな流れを聞かされて、誕生日なんて来なきゃいいのにとさえ思ってしまった。クラウスさんに素直に教えなきゃよかった。

 だって、国民に祝われる誕生日なんてわたしにはもったいない。柄じゃないのもわかっているし。

 だけど、神子となったからにはちゃんと演じようと思っている。サディアスに教えてもらった通り、神子はわたしにしかできないみたいだし、やれるところまでやってみるかと開き直った。

「神子様、参りましょう」

 きびきびとしたエリエの呼びかけで窓から目線を移す。今日はお祈りの日だ。ずっと同じことをする過酷な日なんだけど、誰か大事なひとりのためになら祈ることができる。

 前はサディアスの小さなしあわせを呪ったから、今日はクラウスさんの無事を祈ろうと思った。

 確か、クラウスさん、軍事訓練をするって言っていたし。彼が怪我をしないように祈ろう。そう考えながら、案内してくれるエリエの後についた。
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