白馬と姫(1~50)

第4話『白馬の変化』

 何でこんなに簡単に?

 つるがなくなっちゃうと、森のトンネルの先が見えた。

 すぐににぎやかな音が聞こえてきたの。葉っぱや木でできた看板が下がったお店。煙の上がった屋台は食べ物が売っているのかもしれない。大通りを人々が歩いていく。森のなかに街があるんだ。

 白馬が引き返してきて、わたしの後ろに回る。まるで先に進めというように頭を下ろしてすぐに上げた。

「行っていいの?」

 行ってみたいっていう気持ちがみるみるわいてきて、わたしは1歩前に踏み出した。ちょうどネットがあった境を越える。

 そうしたら、「きゃっ」足元から勢いよく風が吹いてきた。スカートの裾がめくり上がるほどの強い風。手で押さえてみたけど、誰かに見られたら最悪。

 風がやむと、髪の毛とスカートが降りてきた。無事にこちら側に来れたみたい。白馬のほうを見てみたら、そちらも境を越えようとしていた。白うさぎももれなく着いてくる。

 そして、わたしは見てしまったんだ。白馬の体が時間をかけて徐々に変わっていくの。

 わたしの胸くらいしかなかった身長が、木に届いてしまうほどに伸びていく。前足が降りてきて筋肉質な腕になる。シャツを纏い、ベストが現れてその上にジャケットを羽織った。後ろ足もすらっと伸びて、現れたズボンが下半身を隠した。

 でも、一番びっくりしたのは、突き出た鼻先と口が奥に引っこんで人の顔になったこと。しかも、彫りが深くて黒い瞳なの。髪の毛は白馬の毛並みと同じように透き通っていた。きっと触ったら、さらさらで最高だと思う。

「綺麗」

 男の人に綺麗というのは変かもしれないけど、これだけ整った顔はもう芸術品でしょ。

「お褒めいただき、光栄です。異世界の御方」

 白馬だった男の人はわざわざ膝をついてわたしに頭を下げた。

 えっと、わたし相手にこんなことされても困る。それに何より「異世界の御方」って何だろ? あと、外人さんなのに日本語をしゃべれるんだと嬉しくなった。夢は何でもありなんだ。

「あの、えっと、何聞けばいいんだろ?」

「戸惑うのも無理はありません。あなたは突然、この世界にいらっしゃったのです。私はあなたの護衛を勤めさせていただくクラウス・ヴォルグフートです。お見知りおきを」

 本当に「お見知りおきを」って使うんだ。クラウスさんはどうやらわたしの護衛らしい。護衛ってことは、わたし危ないの?

「クラウスさん。ここってわたしの夢の中なのに、そんなに危ないの?」

「は?」

 クラウスさんは顎を落とした。え、何か、わたし間違った。それともウザイことした?

「バカじゃないの、あなた」

 今度は女の子の声が聞こえてきた。
4/50ページ
Clap