白馬と姫(1~50)

第38話『祝福の花びら』

 祝福の花を受けたわたしは、人の話を聞く部屋へと身を移していた。魔を避けるという銀の椅子に腰かけていると、ジルベール様とニーナさんがやってきてくれた。

 ジルベール様は赤マントを肩に羽織り、色とりどりの宝石がちりばめられた金の王冠や杖を身につけている。ニーナさんはサーモンピンク色のドレスを着ていた。今回はリボンやフリルの数が少なく、大人っぽい感じだった。

 ジルベール様はいつもより硬い顔をしていて国王様のかんろくを出している。ヴェールのなかは暑いんだけど、ますます暑く感じた。

「神子となったこと、我が国を代表して礼を申す」

「そ、そんな」

「そなたに祝福を」

 ジルベール様はひとにぎりの花びらをわたしの頭にかけた。

「……祝福を」

 ニーナさんもしぶしぶという感じで花びらをかけてきた。

「ありがとうございます」

 ジルベール様は最後ににこやかに笑ってくれた。ニーナさんはやっぱり顔をしかめていたけど、別に気にならない。まだ気にしている余裕がなかったんだ。後ろにはまだまだ列が続いていた。

 それから、ジルベール様とニーナさんがいなくなると、やってくる人たちの「おめでとうございます」に応えた。

 大体「ありがとう」と声をかけるだけで、すぐ次の人へと交代する。

 この人がどういった肩書きなのかとかは、隣にひかえた神官の人が耳打ちで教えてくれる。外務担当大臣だったり内務担当大臣だったり。たぶん、えらい人なのだと難しい肩書きを聞いただけで何となくわかる。

 また、次の人が現れた。

「こちらは特例補佐官のサディアス・クロス様です」

「は?」

 特例補佐官? ちなみにサディアス・クロスという名前の響きはあいつしか知らない。

「おめでとうございます」

「へ?」

 視線を上げてみると、赤い髪の毛を後ろに流したサディアスの顔が近くにあった。いつもは爆発している髪の毛が今日は落ち着いているだけで、マシに見える。

「ミヤコ様?」

 絶対に名前なんて呼ばないくせに、サディアスは動揺させようと意地悪をしてくれる。落ち着いて、落ち着いて……。

「ありがとう」

 ヴェールごしでほほえもうとがんばった。とりあえずは、任務完了でしょ。サディアスはどうにかいなくなってくれる。大臣とか補佐官とかのえらい人の後には、騎士団関係の人がやってきた。

 騎士団のなかでも熊みたいに大きい体をした人から祝福の言葉を受けた。もしかしたら、クラウスさんの上司だったりするのかも。そう思ったら、次は副団長のクラウスさんだった。

「ミヤコ様、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 あらたまった場所で祝福してもらうと少しくすぐったい。それもすぐに次の人が現れて終わった。夕闇が迫ってくるまで列は途切れなくて、終わったときにはヘトヘトだった。
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Clap