白馬と姫(101~end)
第125話『薄情な娘』
ジルベール様はぽつぽつと話していく。ルルさんに出会ったときの話とか、どうして好きになったのかとか。話していくうちに、ジルベール様の声は熱を帯びてくる。
熱を感じれば感じるほど、聞いているほうの心は冷たくなっていくのに彼は気づかない。それでも今、ジルベール様の視界にはルルさん以外、誰の存在も見えていないんだろう。
「あなたは父上とよく口論になっていた。でも、わたしと話すあなたは、とても穏やかで可愛らしかった。あなたもわたしを好いてくれているのだろうと思っていた。それなのにあなたは父上の妻になった。なぜだ!」
「なぜも何も。わたし、向こうの世界にいるときから男にこびるような女だった。素が出せなくて、男の理想になろうとしてた。自分のなかのルールも簡単に曲げちゃうくらいにね。
でも、ジルベラスは違う。ジルベラスとはどんだけ素で話しても大丈夫だった。むしろ、さらけだせた。だから、結婚したの。娘も生まれて、すっごく幸せだった」
それなのに、わたしのせいでお父さんは死んでしまった。わたしをかばったから命を落とした。その事実を考えてしまうと、鼻の奥がつんと痛む。泣きそうな自分が嫌だ。
うつむいていたせいで、ルルさんがわたしを見ていたことに気づくのが少し遅れた。ルルさんはやっぱり黒いヴェールで顔を隠しているけど、きっと、包みこむような暖かい眼差しをしていると感じた。それはわたしを呼ぶ声でも明らかだ。
「ミャーコ。ジルベラスはあなたをものすごい溺愛していたのよ。わがままに育つくらいね。そのせいでマリアも苦労したみたいだけどね」
マリアさんに視線を送ると、苦笑を浮かべられてしまう。幼いわたしはかなり手がかかったみたいで、迷惑をかけてしまったと思う。
「ジルベラスはあなたを守れて後悔してないよ、きっと」
そうなんだろうか。わたしはお父さんのことを1つも思い出さなかった。お父さんに救ってもらったくせに、向こうの世界に飛んだらすべてを忘れてしまっていたんだ。
――こんな薄情な娘でも許してくれる、お父さん?
呼びかけてみてもお父さんの顔は浮かんでこないし、声も聞こえてこない。
ルルさんが言うようにわたしのお父さんなら許してくれるのかもしれない。でも、わたし自身が許せるかというと、それは簡単じゃなかった。もしかしたら、この先ずっと、自分を許せないかもしれない。
ジルベール様はぽつぽつと話していく。ルルさんに出会ったときの話とか、どうして好きになったのかとか。話していくうちに、ジルベール様の声は熱を帯びてくる。
熱を感じれば感じるほど、聞いているほうの心は冷たくなっていくのに彼は気づかない。それでも今、ジルベール様の視界にはルルさん以外、誰の存在も見えていないんだろう。
「あなたは父上とよく口論になっていた。でも、わたしと話すあなたは、とても穏やかで可愛らしかった。あなたもわたしを好いてくれているのだろうと思っていた。それなのにあなたは父上の妻になった。なぜだ!」
「なぜも何も。わたし、向こうの世界にいるときから男にこびるような女だった。素が出せなくて、男の理想になろうとしてた。自分のなかのルールも簡単に曲げちゃうくらいにね。
でも、ジルベラスは違う。ジルベラスとはどんだけ素で話しても大丈夫だった。むしろ、さらけだせた。だから、結婚したの。娘も生まれて、すっごく幸せだった」
それなのに、わたしのせいでお父さんは死んでしまった。わたしをかばったから命を落とした。その事実を考えてしまうと、鼻の奥がつんと痛む。泣きそうな自分が嫌だ。
うつむいていたせいで、ルルさんがわたしを見ていたことに気づくのが少し遅れた。ルルさんはやっぱり黒いヴェールで顔を隠しているけど、きっと、包みこむような暖かい眼差しをしていると感じた。それはわたしを呼ぶ声でも明らかだ。
「ミャーコ。ジルベラスはあなたをものすごい溺愛していたのよ。わがままに育つくらいね。そのせいでマリアも苦労したみたいだけどね」
マリアさんに視線を送ると、苦笑を浮かべられてしまう。幼いわたしはかなり手がかかったみたいで、迷惑をかけてしまったと思う。
「ジルベラスはあなたを守れて後悔してないよ、きっと」
そうなんだろうか。わたしはお父さんのことを1つも思い出さなかった。お父さんに救ってもらったくせに、向こうの世界に飛んだらすべてを忘れてしまっていたんだ。
――こんな薄情な娘でも許してくれる、お父さん?
呼びかけてみてもお父さんの顔は浮かんでこないし、声も聞こえてこない。
ルルさんが言うようにわたしのお父さんなら許してくれるのかもしれない。でも、わたし自身が許せるかというと、それは簡単じゃなかった。もしかしたら、この先ずっと、自分を許せないかもしれない。