白馬と姫(101~end)

第114話『ジュリアとガストン』

 ふたりはにらみ合いを続ける。

「ガストン、なぜ、ここがわかったのかしら?」

「お前に話す義理はない」

「そう。大方、検討はついているけれど。それで、わたしの提案は呑んでいただけるのかしら?」

 本当にジュリアさんがしゃべっているのかと疑問に思うほど、言葉がくだけていた。ふたりの仲はよっぽど親しい間柄だったらしい。もしかしたら、昔、彼氏彼女の関係だったとか(サディアスが聞いたら色恋沙汰に持っていくなと叱られそう)。それくらい今の状況とかけ離れた会話だった。

 ガストンさんは太い眉がくっつくぐらい顔をしかめた。

「呑めるか」

「ならば、わたしはここから動かない。ジルベールにミヤコ様を渡すくらいだったら、夫のように人をかばって死ぬわ」

「ほう、お前の罪人の夫とは、ずいぶん昔の話だな。言っておくが、お前とそこにいるサディアス・クロスも罪人だ。わざわざ、俺の手で殺す価値もない。牢にぶちこむ。そして、ミヤコ様を保護する。結果、無事に結婚の儀が執り行われるわけだ」

 結婚するといっても、わたしとジルベール様は腹違いの兄妹だ。どう考えても無理だ。それだけは言える。だけど、ガストンさんの見た目(顔全体がヒゲだらけ)が恐すぎて、声を上げるのをためらった。

 そんなわたしの代わりにジュリアさんが立ち向かってくれる。

「ガストン。ミヤコ様はジルベラス様とレーコ様の御子なのよ」

 そう、それが言いたかったんだ。聞いてもなお、ガストンさんはまったく驚いた様子はない。

「その点については問題ない」

「どういうこと?」

「それもお前に教えてやる義理はない。なあ、ジュリア」

 まるで好きな人にささやくような低く甘い言葉に、ジュリアさんの肩が驚いたように跳ねた。

 そのすきとばかりに、ガストンさんは速かった。ジュリアさんの短剣を素早く落とすと、抵抗する彼女を掴み、手際よく縄でくくる。ガストンさんの合図で兵士たちが動き出した。サディアスも同じようにされた。

「ミヤコ様。共に来ていただきます」

 ガストンさんが足を折って腰を落とす。それは断るとかじゃない。もう決まっていること。

「お願い。ふたりに手荒な真似はしないで」

 そう告げるのが、わたしにできるせいいっぱいだった。
14/45ページ
Clap