白馬と姫(101~end)
第112話『嫌な予感』
腕に重みを感じて、わたしは目を覚ました。横を向いた体勢で寝ていたらしく、瞼を上げると腕に乗っかっている人物がすぐにわかる。
「サディ……アス?」
抱き締めていたはずの赤茶色の犬はどこにもいない。きっと、馬車が森を越えてベルホルンに到着したのかもしれない。サディアスの体がもとの姿に戻ったのもそのせいだ。
「って、えっ?」
そこまで冷静に考えられたけど、ぼんやりとした視界がはっきりしてきたら驚くしかなかった。
だって、わんこならまだしも、あのサディアスと向かい合って眠っていたなんて! ありえない。しかもこの距離だと、まつ毛の長さまでよくわかる。
安らかな眠りに入っているサディアスはとても無防備で、いつもの邪気がない。子供っぽいんだ。何だかずっと眺めているのは危険な気がする。離れなくちゃ。慌てて距離を取ろうと思っても、腕に乗った頭は岩のように重い。
「サディアス!」
これしか方法が見つからなくて声を上げると、閉ざされていた瞼がぴくっと動いた。静かに開かれた瞳はわたしを見てくる。
「サディアス? 起きたの?」
聞いてみても答えは返ってこない。寝ぼけているのか、まったく視線や表情が変化しなくて、こちらが困ってしまう。こんなサディアスを見たのははじめてだし。
しかし、サディアスはいきなり目を見開いて、何かに気づいたように腕から離れた。辺りを見渡したあと、こちらに真剣な目を向ける。不覚にも胸の奥が高鳴った。
「おい、ジュリアはどこへ行った?」
「えっ?」
ジュリアさんならその辺りにいるでしょ。そう思って周りを見渡してみれば、どこにもいない。ジュリアさんはどこへ行ってしまったの?
「嫌な予感しかしない」
不吉なことを言い残して、サディアスは馬車を降りた。わたしもそれに習って降りてみたら、馬車はすっかり兵士たちに囲まれていた。中でも一際大きい体を持つ熊のような男と、ジュリアさんはひとり立ち向かっていた。
腕に重みを感じて、わたしは目を覚ました。横を向いた体勢で寝ていたらしく、瞼を上げると腕に乗っかっている人物がすぐにわかる。
「サディ……アス?」
抱き締めていたはずの赤茶色の犬はどこにもいない。きっと、馬車が森を越えてベルホルンに到着したのかもしれない。サディアスの体がもとの姿に戻ったのもそのせいだ。
「って、えっ?」
そこまで冷静に考えられたけど、ぼんやりとした視界がはっきりしてきたら驚くしかなかった。
だって、わんこならまだしも、あのサディアスと向かい合って眠っていたなんて! ありえない。しかもこの距離だと、まつ毛の長さまでよくわかる。
安らかな眠りに入っているサディアスはとても無防備で、いつもの邪気がない。子供っぽいんだ。何だかずっと眺めているのは危険な気がする。離れなくちゃ。慌てて距離を取ろうと思っても、腕に乗った頭は岩のように重い。
「サディアス!」
これしか方法が見つからなくて声を上げると、閉ざされていた瞼がぴくっと動いた。静かに開かれた瞳はわたしを見てくる。
「サディアス? 起きたの?」
聞いてみても答えは返ってこない。寝ぼけているのか、まったく視線や表情が変化しなくて、こちらが困ってしまう。こんなサディアスを見たのははじめてだし。
しかし、サディアスはいきなり目を見開いて、何かに気づいたように腕から離れた。辺りを見渡したあと、こちらに真剣な目を向ける。不覚にも胸の奥が高鳴った。
「おい、ジュリアはどこへ行った?」
「えっ?」
ジュリアさんならその辺りにいるでしょ。そう思って周りを見渡してみれば、どこにもいない。ジュリアさんはどこへ行ってしまったの?
「嫌な予感しかしない」
不吉なことを言い残して、サディアスは馬車を降りた。わたしもそれに習って降りてみたら、馬車はすっかり兵士たちに囲まれていた。中でも一際大きい体を持つ熊のような男と、ジュリアさんはひとり立ち向かっていた。