夢小説用の名前変換システム。本編が進むごとに増やす予定
№00:誰かのために
夢小説設定
名前変換
夢小説用の名前変換システム。本編が進むごとに増やす予定
夢小説用の名前変換システム。本編が進むごとに増やす予定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
託された想いは、齢四つの私には——酷く重かった。
№00:誰かのために
「どうしてパパ帰ってこないの?」
「……っ。パパはね、すごく、すごく遠い所にお仕事に行ったんだよ」
そう言っていた母は無理して微笑んでいた。子供の私でも分かるほど疲弊していた。目の下には色の濃い隈。珍しく一日一緒に居てくれた母は何処かうわの空で、遠くを見つめていた。大好きなピアノの音色も何処か切なくて胸がきゅっと締めつけられた感覚が十年経った今も忘れられない。
そして、朝起きると母は既にいなくて、よく私の面倒を見てくれた家政婦の話によるとロンドンへ戻っていたそうだ。それから母には会っていない。一度も——。
母はピアニストだ。世界でも五本指に入るほど有名な人。私がおなかに居る間もステージでピアノを演奏していた。父とは無名の頃に知りあったらしい。互いに一目ぼれだったそうだ。ちなみに、私は父の顔はおろか、どういう人だったかもわからない。
母がロンドンへ旅立った日、私には音の“個性”があると医者に言われた。赤子の頃から手を叩いただけで猫が眠ったり、歌を歌えばその歌詞の中で【花】という単語を発した瞬間、自分の周りに幻想の花が咲いたり等あったが、それが個性だとは自覚していなかった。
この個性は、母から受け継いだものらしい。兎に角、大好きな母と同じ事を知った私は、その日から習い事を増やして使える楽器や曲を増やす努力をした。
しかし、母と同じという事はもちろん周りからの期待や嫉妬が付き纏うという事だ。たった四つ、されど四つ。純粋だった私はひとつ歳を迎えるたびに、真っ白だった心はくすんで汚れていった。
五歳のピアノの発表会では、一方的にライバル視していた泡の姫と書いて泡姫(アリエル)ちゃんが楽譜を盗み、その日は散々だった。その日があったからこそ、楽譜を暗記する事を学んだ。
十歳の頃「お前の個性は役立たずだ」と呪いの手紙を上履きの代わりに置いてあった。それを先生に言ったら、奈々ちゃんって茶髪の子が「犯人をみた」と指を差した先に居たのは泡姫ちゃんだった。後に、奈々ちゃんとは親友になった。
彼女の個性は透視。実際はその場にいたわけではなく、偶々見えたということ。彼女ほどの個性ならば役に立つだろうなと思う。私の個性は当時、眠らせたり、リラックスさせるしか出来なかった。
しかし、この出会いが私の運命を大きく変える事になる。