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№01:あの頃とは違う自分
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見たことがあるだけで、触れたこともない不思議な形のオカリナ。知識としては、ソプラノ、アルト、バス。更にG、F、Cとたくさんの調子に分かれている。完全に玄人は複数管といって2オクターブ以上出すことの出来るオカリナもある。ちなみに木製だけではなくてプラスチックのものもある。そして、何と言ってもカラーバリエーションが素晴らしい。一色の物もあれば、薔薇の絵柄が描かれている物もある。
「オカリナか、使わなくなった物で良ければタダでやるよ」
「え、いいんですか?」
まさに一驚を喫する。暫く店主をじっと見つめて彼の次の言葉を待つ。店主は、瞳の奥を煌めかせながら深みのある声で言葉を紡ぐ。
「もちろん、条件がある。そのオカリナで一曲奏でて欲しい。期限なんてものはつけないからいつでも良いぞ」
「……それ、私が盗って逃げたら駄目じゃないですか」
「そんときはそんときだ。そもそも、嬢ちゃんを信じていなきゃタダでやるなんて言わない」
腕を組んで壁に背をつけて私を見ながら店主は「で、どうする?」と答えを急かす。此処まで来てしまったなら今更NOとは言えず……。
「その条件呑みます……」
店主は本当にうれしそうな顔で「そうこなくっちゃ」と言った。
「重い……」
オカリナ用の楽譜やら、前から欲しかったチューナーの入った某デパートの紙袋を両手で持って帰宅。既に夜の七時を回っていた。先に食べ物を胃に入れておかなければきっと、熱中し過ぎていつかみたいに倒れてしまう。
「いただきます」
冷蔵庫の中にあった野菜を使って肉野菜炒めを作り黙々と、小さなテーブルで一人ただ倒れないために変わらない味付けの肉野菜炒めを食べる。私にとって食べ物を食べるというのはそれほど重要視されてはいない。第一に楽器に触れる。次に音を創り出し自分だけの世界に浸る。そこに人間の三大欲求は皆無。
そんな人間なのかも私は頂いたアゲハ蝶の描かれた白いオカリナに触れる。これは藤井さん——店主——が昔とあるヒーローから譲り受けた物らしい。そんな大事な物を何故私にくれたのかと訊いたら、
「何となくそのヒーローに嬢ちゃんが似てんだよ」
と言われた。そのヒーローの名前を訊く前に別のお客さんのところへ行ってしまったので分からずじまい。
その事がもやもやと心に残っていたせいで、その日は調子が出なかった。