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1〈イレギュラーな私〉
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どれほど時間が経っただろうか、少なくとも惣治郎さんが帰ってから一時間経っていただろう。上から来栖くんが水を飲みに来た。
「おお、青年。これから一年、改めてよろしくね」
「嗚呼……」
素気ない、というよりも遠慮しているかのようによそよそしい。しきりに眼鏡のブリッジを上げて掛け直している。まあ、あまり女子と触れ合える機会など、健全な男子高校生ならば無いだろう。何か持っていただろうかと、エプロンのポケットを片手で探ると少し硬めの、肉ガムを発見した。
「お近づきのしるしに。これ結構おいしいのよ。なんも食べてないでしょ。惣治郎さんには内緒だよ」
そう告げたのちに彼に手渡すガム二個。掬うように手を出してきたので、そのまま握手する。
「へへへ、これが若い男子の手の柔らかさなのね」
おじさん臭い科白を呟いてぶんぶんと大きく振ってから離す。すこしだけ彼は頬を赤らめていた。なんだか、愛らしくて次回作のヒロインにしてしまおうかと勝手に思案し、そのまま手のしわを指先でなぞり遊んでいると、端末が鳴る。きっといつもより遅い私を心配した惣治郎さんが掛けて来ているのだろう。ぱっと手を離して「おやすみ」と笑みを作りエプロンをエコバッグの中に畳んで入れて、呆然と突っ立っている彼に手を振って戸締りをしてから外へ。
案の定、惣治郎さんは来栖くんに何かされたかと思っていたらしく、少々、声色を荒げていたが、何かをしたのは寧ろ私なので適当に誤魔化してから家路へ。
「本当に大丈夫だったのか?」
「ええ、大丈夫でした。心配性だなぁ」
やはり玄関先で惣治郎さんは待ち構えていた。風呂上りだからか髪型は崩しておりタオルで水滴を取っている。これ以上言及されると風呂入る時間なくなりそうなため、靴脱いで上がってから、
「おまっ!」
「惣治郎さん……」
めいいっぱい惣治郎さんを抱きしめる。広い肩口に顔を埋めて、意外と筋肉質な腰に腕をまわしてぎゅうぎゅうと。「私の匂いしかしないでしょ」と訊けば「嗚呼……、そうだな」と安堵のため息一つ耳元に掛かる。頬を擦り合わせて甘えてからそっと離れる。「風呂行ってくる」と、名残惜しそうに伸びてきた惣治郎さんの手をやんわりと拒んで、脱衣所へと行く。
別にそういう関係などではない。
ただ、癖のようなものだ。寂しくて苦しくて、手を伸ばした先にいたのが惣治郎さんで、あの人は私の安定剤みたいなもの。私がいるせいで女遊びが一切できないのも知っていた。ルブランの常連客で若い女の人はみんな惣治郎さん目当て。何回かトラブルを起こして出禁になった人もいる。何かしらで傷ついた私を抱きしめて癒してくれたのはあの人だけ。
依存だと……。いつか醒める夢だとしても縫いついていたい。いつしか巣食うようになっていたその感情をシャワーと共に流してしまう。今の私には必要ないものだから。