ヒーローのヒーローになるお話
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「関和少女と緑谷少年を待ち構えて出迎える振りをして私が来たぁああ!」
昼休みに入り、琉璃は早々に緑谷を連れて教室を出た。
相澤に呼び出しされてから、爆豪と一言も喋らなかったため、彼に呼び止められると思ったからだ。
そして同じく呼び出しの件で話を聞きたがって声をかけてきた轟と八百万の2人に『怪我の多い緑谷が、他に怪我をしていないか回復のヒーローを目指すものとしてきちんと確認しておきたい』と最もらしい理由をつけて、琉璃は緑谷を連れ出した。
そして予めオールマイトに連絡を入れて置いてくれたという緑谷と一緒にオールマイトの使っている部屋に着いたのはいいが、ノックをしても出てくる気配はなく、恐る恐る中に入れば、割り込むようにして後ろからオールマイトが入ってきた。
「あの、オールマイトさん、勝手に入ってすみません」
「いやいや、大丈夫だ!それより2人ともよく来たね!」
ささどうぞ、とオールマイトに椅子に座るように促され、琉璃と緑谷は恐る恐る腰を下ろす。
「それより相澤くんから話を聞いたよ」
「そうだ!関和さん、今朝相澤先生がいってた体育館を無断使用して朝練をしてたって話、やっぱりかっちゃんに無理矢理誘われて……?」
オールマイトの言葉を遮り、心配するような表情の緑谷に琉璃は内心首を傾げた。
やはり朝言ってた『かっちゃん』というのは爆豪のことだったのだ。
「誘われたのは事実だけど…行ったのは私の意志だから」
「それでもかっちゃんは強引なところがあるから…… ごめんね。でもかっちゃんは誤解されやすいけど、悪い人じゃないんだ」
「ははは、確かに誤解されやすいかも。
でも先生には怒られちゃったけど、爆豪くんとの朝練は楽しかったからそんなに心配しないで?……それより緑谷くんと爆豪くんって仲良いの?」
自分は関係ないというのに申し訳なさそうに謝り、爆豪の事を庇うような緑谷に琉璃は疑問に思っていたことを尋ねる。
あまりに共通点がなさそうな2人で、教室でも全く話してなかった2人だが、あの爆豪を『かっちゃん』と親しげに呼ぶ緑谷と爆豪の間には何かがあるというのは一目瞭然だった。
「仲は……どうだろう。僕はかっちゃんに煙たがられてるから、良くは…ないかな。でも、かっちゃんはずっと昔から一緒の幼馴染なんだ」
ははは、と乾いた笑みを浮かべながらそう答える緑谷に琉璃は納得した。
意外な組み合わせで今は仲良く見えなくても2人が幼馴染なら緑谷の親しげな呼び方もおかしくない。
「ゴホン、緑谷少年。私も話していいかな?」
「すすすすみませんオールマイト!どうぞ!」
咳払いをし、自分の存在をアピールするオールマイトに緑谷は慌てたように平謝りをする。
そしてオールマイトは琉璃に向き合った。
「確かに体育館の無断使用は規則違反だ。雄英の生徒としてもヒーローを目指す者としても規則を破るのは良くない」
「すみません…」
オールマイトはいつもの笑顔から表情を変え、真剣な眼差しで琉璃を見据える。
「だが!爆豪少年や関和少女、それに緑谷少年の己を磨きあげようとせん日々の努力や気概はとても素晴らしく思う!……かと言ってオーバーワークはよくないけどね。ということで、雄英の教師としてのお説教は以上だ」
「オールマイトさん……」
真面目な表情から一転し、にかっ、と白い歯を見せて笑うオールマイトに緑谷と琉璃は胸を撫で下ろし、気をつけますと口を揃えた。
「相澤くんから聞いたけど、もうひとつの個性を使いこなさそうとしているんだってね、関和さん」
「はい。あくまで自衛目的ってことで少しは使えるようになろうと思います。もちろん私は回復のヒーローを志望しているので、そっちの個性を1番に磨くのが優先ですが…」
「いいんじゃないかな。私も賛成だ」
「オールマイトさん、ありがとうございます!頑張ります」
どこまでも優しくて肯定的なオールマイトに琉璃は笑顔を浮かべた。
一方、2人のやりとりを大人しく眺めていた緑谷がおずおずと口を開く。
「あの…関和さんはリカバリーガールのようなヒーローになりたいって事だけど、どうしてヒーロー科に入ったの?」
「え?」
「ほら。ヒーロー科は人命救助だけじゃなくて、基本対ヴィラン戦も想定した前線のヒーローになるための学科だから…関和さんの個性や志望動機ならどっちかっていったらサポート科の方じゃないかなって……あ!関和さんがヒーロー科にいることが不満とかそういうのじゃないから!誤解しないで!ただそっちの方が活かせるんじゃないかなって」
琉璃は目を丸くした。
自分がヒーローになることを一切考えていなかった琉璃は、雄英はもちろん、ヒーロー高校の仕組みも知らなかった。
ただ単純にヒーロー高校に入って卒業をし、試験を受けて合格さえすればヒーローになれると思っていた。
だから緑谷のいうように『サポート科』という学科が雄英にあったのも知らなかった。
確かに琉璃のなりたい回復のヒーローになるなら、ヒーロー科よりもサポート科かもしれない。
琉璃がオールマイトに視線を送れば、しまったとオールマイトは狼狽する。
「それはだね、緑谷少年。実はたくさんの理由があるんだが……」
「あの……理由ってなんですか?」
緑谷の代わりに琉璃は不安になりながらオールマイトに尋ねる。
「まず始めに君がヴィランに狙われた時に対処しやすくする必要があった。つまり私や相澤くん……イレイザーヘッドのような前線でも多くの活躍していたヒーローの庇護下に君を置く必要があった」
「私へのオファーも私の身の安全のためって言ってましたもんね」
オールマイト達が始めて家に訪れたことを琉璃は思い出す。
そしてオールマイトは琉璃の言葉に頷いた。
「次に緑谷少年達とは種類は違うが、ヒーローになりたいと言ってくれた君の事を考えた時だ。
確かにサポート科からヒーローの資格を…も不可能じゃないが、あちらはどちらかと言えば技術者の養成に力を入れているからね」
「それは……確かに」
ヒーロー高校について詳しいらしい緑谷は大きく頷いた。
「そして関和少女の個性は一つだけじゃない。その個性を持ってるとやはりサポート科では浮いてしまうのではと考えてね。あとは……リカバリーガールのお孫さんである関和少女はサポート科では変に期待されて居心地も悪くなることを危惧したんだ。ある意味リカバリーガールはサポート科では私のような存在だからね」
「おばあちゃんが……」
「超個人的な理由も白状してしまえば、私が緑谷少年と関和少女を同じクラスにしたかったというのもある!」
「え、えぇ!?」
本当に超個人的な理由に緑谷は顔を赤くし、慌てたように声を上げた。
「ほら、君。よく怪我をするだろう。そこで君の近くに関和さんがいてくれれば安心だし、困った人をほっとけない緑谷くんなら、関和さんが困った時は私の代わりに何がなんでも助けてくれるんじゃないかなって」
「オールマイト……」
どこまでも他人思いのオールマイトに緑谷は感激したようにオールマイトの名前を呟いた。
そしてオールマイトはそんな緑谷の肩を抱いてははは、と笑う。
そんな2人の間に仲のいい師弟や親子のような深い絆が垣間見れて、琉璃は微笑んだ。
「話はこれくらいにして、早速みんなで昼食にしよう!」
「は、はい!」
どかりとオールマイトが腰を下ろし、緑谷と琉璃と後に続くように自前の昼食をテーブルの上に並べた。
「あれオールマイト、食事をするのにトゥルーフォームに戻らなくていいんですか?」
「トゥルーフォーム?」
「ぶ!!」
緑谷の聞きなれない単語に琉璃が首を傾げれば、オールマイトは物凄い速さで緑谷の隣に移動し、緑谷の肩を抱いて引き寄せた。
「なに!?緑谷少年喉が渇いた!?しまったァ!私としたことが飲み物を用意し忘れていたぁ!」
「あの……飲み物なら予備持ってますよ。常温だけど。緑谷くん、よかったらどうぞ」
琉璃は鞄の中から蓋の空いてない水のペットボトルを一般取り出してテーブルの上に置いてみせる。
「なにぃ!?今は購買横の自販機で売ってる雄英限定のお茶が飲みたい!?緑谷少年!君もわがままだな!まあちょうど私もあのお茶が飲みたいと思っていた!」
緑谷の一切喋る暇を与えないように捲し立てるオールマイトに琉璃は目を丸くする。
なんとなく不自然さを感じながらも琉璃は席を立った。
「緑谷くんもオールマイトさんもお茶が飲みたいなら私買ってきますね」
「あぁ…ありがとう!とても助かるよ!それとお金はこれで。残りは君も好きなものを買ってきていいからね」
「……ありがとうございます。じゃあ買ってくるので待っててください!」
財布を取り出して、部屋を出ていこうとする琉璃にオールマイトは素早く小銭を取り出し、無理矢理手の中に握らせる。
琉璃はそれを受け取り、ぺこりとお辞儀するとパタパタと駆けていくようにして教室を飛び出した。
「お、オールマイト……く、くるし……」
「す、すまない緑谷くん……!」
ほぼ抱擁のような形で引き寄せられ、筋肉に埋もれていた緑谷は苦しげに声をあげれば、オールマイトは慌てて緑谷を解放した。
「オールマイト……もしかして……関和さんにはトゥルーフォームのことは」
「あぁ、言ってないよ。私のことはほとんど話したけれど、唯一これのことはいってない」
ふぅ、と息を吐くオールマイトに緑谷は拳を握りしめた。
オールマイトがトゥルーフォームを一部の人にしか見せたくないという気持ちはわかる。
緑谷からみても琉璃はオールマイトを信頼している様子でとても懐いてるように見えた。
オールマイトの前で目を輝かせていた琉璃をみて、彼女もまた自分のようにオールマイトのファンで、大好きなのだというのが伝わってきた。
「関和さんなら話しても何も変わらないと思います。僕と同じで、どんな姿でもオールマイトはオールマイトだって思うし、憧れも変わらないと思います!」
「……あぁ、きっとそうだろうね」
自分への憧れや好意を全力で示してくれる緑谷にオールマイトは幸せな気持ちになりながらもあまりの熱心さに苦笑する。
「私自身、自分でも理由は分からないが……それでも彼女に話すのは気が引けているんだ」
「そうなんですか…」
「緑谷くんにはすまないが、よかったら伏せておいてくれると有難い」
「もちろん!僕からは誰にも言いません…ただマッスルフォームはその……時間制限が」
言いづらそうに言葉を絞り出す緑谷にオールマイトは意図を察する。
「私の授業はもうないからね。君たちの授業が始まるまでは保てそうだ」
「そうですか…」
緑谷はオールマイトの意図が理解出来ずにいた。
もし自分が琉璃の立場だったら。
他の者よりも接点のある自分には打ち明けて欲しい。きっとそう思う筈だ。そして1番の秘密であるワンフォーオールのことまで打ち明けたのにどうしてオールマイトが琉璃にだけトゥルーフォームを見せたがらないのか、理解出来なかった。
「おい、関和」
オールマイトから渡された小銭で自販機のお茶を買っていれば、ドスの効いたような声が琉璃の名前を呼んだ。
突然名前を呼ばれて、ビクリと肩を震わせながら琉璃が振り返れば、不機嫌そうな仏頂面を浮かべた爆豪が立っていた。
見れば手には購買で買ってきただろうビニール袋を下げていて、これから彼も昼食をとるのだろうと琉璃は察した。
「爆豪くん」
「てめぇ昼食は食ったのかよ?食ってねぇな?」
「え?」
「食ってねぇよな?」
「……た、食べてないです」
有無を言わせない圧力と誘導するような口ぶりに琉璃は押されて、素直に答える。
「……そうかよ。じゃあてめぇにやる」
「え?」
「俺がやるっていって言ってンだから、さっさと受け取れや」
「あ、ありがとう……」
顔を背け、手に持っていたビニール袋を押し付けるようにして突きつけられ、更に凄みをきかせられて琉璃は渋々と受けった。
そして恐る恐る中を覗けば、大量のパンが入っている。
「こんなに……爆豪くんの分は?」
「俺はもう食った。いらねぇから関和が食え」
「でもこんなに沢山……」
「ごちゃごちゃ言ってねぇで素直に受け取りやがれ!買いすぎたんだよ!」
「わ、わかった……」
怒り散らかす爆豪に琉璃は大人しく頷けば、ケッと悪態をついてそれだけだ、と爆豪は踵を返そうとする。
「爆豪くん!待って!」
いくら買いすぎたとはいえ、大量のパンをただ貰っておくのも忍びない。
なにかお礼をしようと琉璃は慌てて財布を取り出して、目の前にある自販機に自分の小銭をいれた。
「爆豪くん、何が飲みたい?奢るから言って」
「あ?なんでもいい」
(なんでもいいって1番困るんだけどな……)
悩んだ末、オールマイトと緑谷が飲みたがってた同じお茶のボタンを押す。
そして出てきたばかりのお茶を爆豪に差し出した。
「茶かよ」
「違うのがいいなら他のにする?」
「いやいい……サンキュ」
「え?なに?聞こえなかった」
顔を背け、消え去るような小声で何かを呟いた爆豪に聞き返せば、音が鳴るような勢いで睨みつけられた。
「これでいいって言ってんだよ!仕方ねぇから貰っといてやる」
そのまま引き止める間もなく、爆豪は踵をすと振り返ることなく渡したお茶をヒラヒラと振った。
琉璃は黙って賑わった先に消えていく爆豪の背を呆然と眺めた。
(なんだったんだろう……それにしても買いすぎたって言ってもこの量…いくらなんでも1人分じゃないし、多すぎなんじゃ……)
爆豪がいなくなり、渡されたばかりのビニール袋の中身を再度確認するように覗き込む。
チョココロネ、メロンパン、クリームパン、あんぱんの甘い菓子パンが詰め込まれている。
(やっぱりあれだけ個性使うとお腹すいて甘いものが欲しくなるのかな……それとも単に爆豪くんが甘い物好きとかだったりして)
想像してみるが、やはり爆豪のあのイメージ的に甘い物が連想できない。だが見た目で人を判断してもよくないと思い直して、今度お菓子でもあげようと琉璃は考えていた。
「オールマイトさん、緑谷くん。遅れてごめんね。これ、買ってきました」
言われた通りのお茶とお釣りを手渡して、琉璃は早々に椅子に座る。
そして爆豪に貰ったパンを袋の中から取り出して、テーブルの上に並べた。
「関和さんは弁当にパンか。うんうん。君たちは育ち盛りだ!よく食べる事はいい事だ!……だが、私が渡した小銭でそれを買ったのかい?」
手の中にあるお釣りを確認して、オールマイトは首を傾げれば、琉璃は慌てたように口を開いた。
「あ、いや…実はお茶を買ってる時に爆豪くんに会ったんですが、買いすぎたからって貰って…さすがに私だけじゃ食べきれないし、よかったら2人もどうぞ」
「え!?かっちゃんが?」
テーブルの上に並んであるパンをみて、緑谷は信じられないと声を漏らした。
「しかも菓子パン……かっちゃんって昔は甘い物そんなに好きじゃなかった気が……」
「え?そうなの?」
驚きながら告白する緑谷の告白にもらった琉璃当人も驚かされる。
苦手ならばわざわざ甘いものをこんなに買う必要はない。
(爆豪くんのことだから買いすぎたなんて言って、本当は私に最初から渡すつもりだったとか?いやいやいや…爆豪くんが聞いたら怒りそうだな……それにそんなことされる理由もないし)
「う、うん。それに女子に色々貰ってたりはしてたみたいだけど、かっちゃんが自分からなにかをあげるって無かったような気がする……それも菓子パン……」
本当に珍しいものをみるように菓子パンを見つめる緑谷に琉璃は頭の中で全てに合点がいった。
「じゃあこれもきっと爆豪くんが女子から貰ったものを私にくれたんだね。爆豪くんに渡した女の子には悪いけど…ちょっとラッキーだね」
「え…そうなのかな」
(いやいやいや、それは違うと思うぞ……爆豪少年、何もフォローしてやれずに申し訳ない……)
納得する緑谷と琉璃の会話を聞きながら、オールマイトは内心複雑な思いを抱く。
彼女が転入して早速異性の…しかもあの他人に心を開きずらそうな爆豪に気にかけてもらえているのは嬉しい。
嬉しいが友人以上の特別な関係にはなって欲しくない、と思ってしまう。
いずれ彼女にもそういう相手が出来るのだろうが、今はこうやってただ笑っていて欲しかった。
「という訳で、緑谷くんにもあげるね。メロンパンとクリームパン!」
「ありがとう、関和さん」
「オールマイトさんは……甘いもの食べれますか?」
昨日の一件からか。プリンを全部くれたオールマイトに対して、ああは言ったが実は甘いものが苦手なのではないかと琉璃は思っていた。
顔色を伺うように尋ねて来た琉璃に申し訳なくて、オールマイトは目の前にあったあんぱんに手を伸ばす。
「もちろん!甘いものは好きだよ。では私はこのあんぱんを頂こう。いいかな?」
「もちろんです!よかった。オールマイトさんが喜んでくれて」
明らかに緑谷の時とは若干態度が異なり、受け取ってくれたオールマイトに嬉しそうに手を合わせる。
そして3人で仲良く昼食を取り始めた。
「そういえば今日ずっと相澤先生に言われて気になってたことがあるんですが……」
「相澤くん?」
たわいも無い談笑中、ふと琉璃は思い浮かんだ事を2人に話してみようと思った。
1番先に食いついたのは相澤と同僚でもないオールマイトで、そのまま続きを促すように首を傾げた。
「関和はいい女になるって言ってもらったんですけど、あれってどういう意味なんですかね?」
「え!???」
「ぶ!!」
素っ頓狂な声を上げて驚く緑谷とお茶を吹き出すオールマイトに琉璃1人は訳が分からず唖然とする。そしてガタガタと顔を青くする緑谷。
「ももももしかして……相澤先生って関和さんのこと」
「ないないない!!絶対!に!ない!!」
「でででも!!相澤先生ってそういうことを言いそうにないし、もしかしたらそういう趣味が」
「緑谷くん!相澤くんの同僚として言うが、それはない!彼はその……え~っと……そう!!関和さんは優しくいい子だ。だけどその個性について自信がないから、君はリカバリーガールのように素晴らしい女性だ、きっと関和さんもそういう立派な回復のヒーローになれる!そう言いたかったに違いないよ、うん」
随分と苦しい言い訳をさも正論のように捲し立てるオールマイトに緑谷はそ、そうですよねと納得する。
「おばあちゃんのようにかぁ……」
「そう!彼は口下手だからね!誤解されやすいんだ!」
「相澤先生の期待にも応えられるように頑張らないと」
彼がどう言った意味で言ったか真実はオールマイトにはわからない。
ただオールマイトは自分にもきっとそうに違いないと言い聞かせていた。
そして自分の言葉をそのまま信じて嬉しそうにする琉璃の横顔を眺めた。
爆豪だけではなく、まさかあの相澤にまでそんな事を言わせるなんて……
無邪気に弁当を頬張る琉璃をオールマイトはもしかしたら第3の個性でも持っているのでは、とそれから暫く疑う羽目になった。
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