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3.平行線をたどる日々
your neme
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あれから2日、街での何でも屋依頼やそれぞれの旅の支度が終わった頃、日が天高く登り始めていた。
今日も日差しが暑い。
頭を撫でられた日から、無意識に彼を目で追ってしまう事が増えてしまっている。…気がする。あれから特に何があるわけではなく、街では食料の調達や物資の補給を一緒に行ったくらいだ。
今日の隊列はクラウド、エアリス、バレット
後ろにナナキ、と上に乗ってるケットシー、ユフィ、シドと続く。
殿は今日は珍しくティファ、私、ヴィンセントだ。
何だか意識してしまうと、余計話しずらいなと思っていたのでティファが来てくれてホントに気持ち的に楽だ。
「カノン、怪我の具合はどう?」
ティファが自分の左肩を指しながら言う。
「もう全然。痛みはないしうっすらしてきたよ。」
この通り、と左腕をぐっと突き出してみる。二の腕にうっすら、切創があった場所には薄茶色い筋状の跡ができていた。
「だいぶ良いみたいだね、良かった。」
ティファはホッとしている。
ヴィンセントもカノンをちらりと見たがまた前を向く。
「ティファ、今日は珍しく後ろなんだね。クラウドと何かあった?」
「ううん、カノンこの間怪我したでしょ?それでね、エアリスが心配してて。後ろについてあげてって。」
なるほど、近接戦闘員が増えればこの間のような事も減る。みんな、考えてくれてるんだ。仲間っていいな。
「クラウドも言わないけど、心配してたよ?」
もっと言葉に出せばいいのにねって、ティファはうーんと少し困った顔をしている。
「ナナキとエアリスががかなり心配性なだけだよ。かすり傷だもん、すぐ治っちゃうし。」
魔力が強い分治りが早いのか、実験とやらで手に入ってしまった後天的なものかわからないが、この体質は“普通”ではないのは確かだった。
どちらかというとヴィンセントとかなり近い、気がする。
バギーもチョコボも通れないかなり細い道を足元に気をつけながら歩く。
ティファ、私、ヴィンセントで縦に並びすこし行くと崖の前についた。
垂直に切り立った崖に所々掴めそうなところがある。わぁ、かなり高い…私これ苦手なんだよね。
ふと上を見るとシドが登り切った所だった。クラウドとエアリスが崖上からこっちを見ている。
「上で休憩してるねー!カノン、頑張ってねー!」
エアリスがケットシーのメガホンを借りて喋っている。そうやって使うのもありだな、と感心していると
「少し崩れてるところもあった、気をつけて登ってくれ。」
とクラウドも付け加えた。
益々登りたくない…。
ふとティファを見ると、少し伸びをして準備運動をしていた。
「先行くね。カノンはゆっくり来て。慌てちゃダメだよ。」
ティファがヴィンセントの方を見る。
「ヴィンセントがいるから大丈夫だと思うけどね。」
クスッと笑いそのまま崖に手をかけてスイスイと登り始めて行った。流石ティファ、体の使い方が上手い。
ヴィンセントをチラリとみる。
銃が落ちないようにホルスターを確認している。目が合う。
「…先に登れ、ゆっくりでいい。」
うん、と頷いてふぅ、と息を整える。
私は目線より少し上の掴めそうな所を握った。
あと、少し…
最後の崖を掴み体を上にぐいっとあげる。
右足を離す。次の段差に足をかける。
もうすぐで、着くはず。
仲間がワイワイと談笑している声が聞こえてきた。
崖上の地面に手をかけ、肘を引っ掛ける。
やっと着いた〜
チラリと下を向くとヴィンセントが待機している。ほんと登るのが遅くて申し訳ない。彼ならヒョイと登ってしまう距離だろうに。
段差に足をかけ体を上に持ち上げていると、ふと足元の感触がなくなった。と同時にストンと下に落ちる感覚。
え。
そのまま、肘から上だけ地面に着いたま両足が宙ぶらりんになってしまった。
しまった、忠告も受けていたのに。ごめんクラウド。
「…あっ」
ザリっと腕と地面が擦れる。体が重力で引っ張られどんどん下に落ちていく感覚。
崖上で待機していたティファも焦りの表情でこちらに手を伸ばすけど、間に合いそうにない。
まずい。落ちる。
その時体がふわっと浮いて上にのぼっている感覚、下を見ると仲間が上を見上げている。
目の前にはヴィンセントの横顔。
ち、近い。
これは、俗に言うお姫様抱っこでは…
掴みどころが無くて咄嗟にヴィンセントの首に腕を回す。慣れない浮遊感に回した腕にギュッと力が入った。
彼と目が合う。
「…間に合ったな。」
フッと笑う。また見える口元。
ドキドキしている。まただ。
二人分の体重があるはずなのに、重さを感じさせる事なく崖上の地面にふわっと着地するヴィンセント。
「…怪我はないか?」
私の顔にかかっている髪をさらりと払って耳にかけてくれた。
「う、うん。ヴィンセント、ありがとう。」
そんなやりとりをお姫様抱っこをしたまま。
はっ、と周りを見渡すと皆んなが注目していた。
シドはニヤニヤしているし、エアリスはニコニコしてこちらを見ている。
クラウドはあー…と言って首に手を当てて目を逸らしている。
わ、これは恥ずかしい。かなり。
顔に熱が集まる感覚。
「…降りても大丈夫?」
ああ、とヴィンセントは体勢を低くして足を地面につけてくれた。
ティファがこっちに歩いてきた。
「カノン、大丈夫?」
ギュッと手を握られる。
「うん、大丈夫。色々、びっくりしてる。」
言葉が拙い。まだドキドキしてる。
「一瞬私も焦っちゃった。ヴィンセント様様だね。」
ふふっと言ってティファは後ろに立っているヴィンセントを見る。
ヴィンセントは腕を組んでふいっと横を向いている。
「ありがとう、ヴィンセント。」
緊張が解けてきたのか、フニャッとしたいつもの笑い方で改めてお礼を言った。
「礼には及ばない。」
崖の方を見てボソッと呟いたヴィンセント。
私は色々思い出してきて、なんだか恥ずかしくなってしまい、みんなが集まる方にティファと向かった。