カタカナ推奨
2.好きかも、しれない
your neme
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「カノン大丈夫??けがは??」
宿屋の一室。
ベットに腰掛けた私にエアリスがケアルをかけてから包帯を巻いていると、扉が勢いよく開き、ナナキが心配そうな表情で部屋に入ってきた。くーん、という音が似合いそうな表情で顎を私の膝に載せる。耳が垂れていてかわいい。
私はモンスターの攻撃を上手くよけれずに、左肩下にすこしの切創ができてしまった。ちょっと深い。
道中モンスターが多くクラウド達のパーティとは別に、ヴィンセントと背中合わせに戦っていた。
一瞬離れた隙に飛行型のモンスターが距離をとったのに気を取られてしまい、地上にいた他の個体がこちらに向かって爪を立てていることを気づくのが遅れた。
ザリッとした感触後ピリピリとした痛み。ちょうど二の腕らへんだろうか。すぐにファイアで対抗し、ヴィンセントも加勢して事なきを得たが、久しぶりに怪我をしてしまった。
街について速攻宿屋を探し、チェックインをしているクラウド達を横目に、エアリスに風のような速さで部屋に連れてこられて手当てをされている、と言う訳だ。
すこしピリピリするけど、体質もあって体の回復力は高い。きっと数日もしないうちに跡形も無く治るだろう。
「ナナキ大丈夫、油断してかすっただけだから。心配ありがとう。」
「オイラ、クラウド達と戦ってたからそっちに行くのが遅れたんだ。カノンを守れないなんて、戦士として失格だよ…」
しょんぼりする赤い獣。
しょうがない、これは私の油断からきたのであってナナキに非はない。確かに戦闘終了間際、向こうの戦闘が片付いたのかこっちにすごい勢いで走ってくる獣が見えた。
あの忌々しい研究室で実験と称して何回か顔を合わせたこの獣は、脱出後も私のことをとても気遣ってくれている。
大丈夫だよ、ナナキのせいじゃないから、と空いてる方の右手で膝上にある毛並みの良い頭を撫でていると、エアリスが包帯を巻き終わった所だった。
「カノンも無理しちゃだめ。」
キュッと包帯の終わりを結び、エアリスが言う。ちょっと表情はいつもより暗い。心配してくれてるのかな。
「手当てありがとう、エアリス。次は気をつけるね。ヴィンセントにもあとでお礼言わなきゃ。」
立ってぐるぐると肩を回す。うん、可動域は大丈夫そう。ナナキも尻尾をパタパタさせている。
「ヴィンセント、カノンの手当て、終わったよ。」
エアリスが包帯の片付けをしながら声をかけると、キィと部屋の扉が開く。
扉を少し潜るようにして彼が部屋に入ってきた。そっと閉じた扉の横の壁ににもたれ掛かる。
「…気づいていたのか。」
うん、と頷くエアリス。
「ヴィンセントも心配だったんでしょ、カノンのこと。」
心配、してくれたんだ。少しドキリとする。たしかに同じパーティだし、怪我されたら気になるよね。
「カノン、怪我の具合は…大丈夫なのか。」
「うん、エアリスの処置が良かったからね。深いけど、数日で目立たなくなると思う。」
そうか、とぽつりと呟き瞳を閉じる。
そして壁にもたれたまま動かない。
「オイラ、クラウド達にも知らせてくるね!」
元気になったナナキはそのまま扉を開けて、飛び出して行った。
「私もいくね。」
エアリスも片付けが終わったのか、扉の方へ歩いていく。
「エアリス、本当にありがとう!」
また夕食の時に!と言うとにっこり微笑み返してくれた。
エアリスは扉を開け、部屋を出る間際、
「カノンのこと、よろしくね。」
と言い残して扉を閉めた。
よろしく?
彼の方ををみると、目が合った。
しばしの沈黙。
外でコツコツと階段を降りてる音が聞こえる。
私ははっとして、ヴィンセントにちゃんとお礼を言ってなかったのを思い出した。
「ヴィンセント、怪我しちゃってごめん。トドメを指してくれてありがとう。」
お辞儀をし、お礼を言う。
カシャ カシャ
彼がまっすぐこっちに向かって歩いてきた。あと1歩でくっついてしまう距離。
改めて近くでみると彼は背が高い。見上げてしまう。
ぽん。
頭に重みが加わる。
撫でられている、と認識するのに数秒。
ガントレットではない、右手で優しく撫でてくれている。ちょっと恥ずかしい。
ポツリと
「私も、加勢が遅れてすまなかった。痛い思いをさせてしまったな…」
見上げると、赤い暗い瞳。
いつもより、優しいふんわりした眼差し。
左目だけオレンジの虹彩がキラキラしていてとても綺麗だ。
少し眉尻も下がっている。
吸い込まれるような。赤い瞳。
ドクドク 血の巡りが早い。
あれ、なんか心地いいけど。
ドキドキする。心臓がうるさい。
もっとそばにいたい、なんて柄にも無く思ってしまった。
これは…
好きかも、しれない END