Lady PRIDE
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「……寒い……」
「雪国だもの。多少の寒さは仕方ないとは思ってたけど――」
時期的にも丁度一番冷え込む季節に運悪く来てしまったらしい。とシャーロットは窓の外へ視線を投げる。しんしんと白い雪が降り注ぎ、屋根にも鋭利でそれはもう立派なツララが出来上がっていた。運悪く、とは言ったが次は雪国に行こうと予定を立てて決行したのは御国である。
この凍えるような寒さも計算していたのかも、とシャーロットは小さくため息を吐く。元より口数の少ないジェジェだが、口を開けば寒い、寒いとばかり気の毒な程か細く辛そうな声で呟いて……。これは流石に困りものね、と毛布をジェジェに手渡した。毛布の表面さえ下がり切った室温に晒されていたせいで表面がひんやりとしている。
「ジェジェ、大丈夫?」
「寒い……。……眠い……。シャーロットは、寒くはない、のか……」
「これくらいへっちゃらよ」
ふふん、と胸を張る様に笑顔を浮かべれば、ジェジェはそうか、とだけ言って渡された毛布にくるまって身を縮こめた。彼が寒さに弱い理由はよく分かる。蛇なのだから、この気温では冬眠していてもおかしくない。誰にも言った事は無いけど、実はシャーロットにはジェジェと一緒に放浪していたその昔、余りの寒さに眠ってしまった嫉妬を抱えて冬の雪山を気合いで越えた経験もある。
「暖炉に火を焚いたから、近くに行きましょう。此処より断然あったかいわ」
そう言いながら握ったジェジェの手はとても冷たかった。
「! ――ひゃ、……っ」
低体温なのは知っているが、それを差し引いても思わず小さく悲鳴を上げるくらいには冷たかった。死人ですらもうちょっとあったかいんじゃないだろうか。しかしシャーロットとは逆に、手に触れた温かな感触にジェジェはしょぼくれるように細めていた目をカッと見開く。あまりの冷たさに反射的に遠ざかろうとしたシャーロットの手を追いかけて捕まえるように強く握り、引き込んだ。あっという間にシャーロットの視界は黒一色に塗りつぶされ、背中には逃がさないというように押し付けられるジェジェの腕の重圧。
「んん、冷たっ」
冷たい黒装束に包み込まれて、ひやりと体が冷えていく感覚にシャーロットは静かに身震いする。
「……」
一方でジェジェは水を得た魚の様に、何処か紙袋の内の表情を緩めながらじんわりと移って来る熱を捕まえ続ける。
最初に腕を引いて抱きしめたのは寒さのせいでぼやけた頭がとった無意識の行動だったが、現在はシャーロットを抱きしめている事を自覚しながらこれが子供体温か……、と客観的に判断する程度の思考は戻ってきていた。だがしかし放してやろうという気が毛頭ない。
好きな人に抱きしめられるのは嬉しい事だけど、これはちょっと苦しい、あと乱暴。と心の中でだけ呟きながら身じろいで息が出来る様に顔を上へと向ける。すると、シャーロットの唇が軽く服の布地とはまた違う、冷たい場所に触れた気がした。
「っ――!」
びくりと大きく体を強張らせたジェジェはほんの少しだけ腕に込めていた力を緩め、放す事はしないものの生まれた僅かな距離で腕の中のシャーロットを見下ろした。丁度視線が交わる。顎の直ぐ真下、首元近くの高さにある唇がすぐに目に入った。先ほど首元に触れた柔らかな感触が何であるかをジェジェは理解する。宝石の様な丸々とした赤い瞳が真っすぐに向けられていて、ジェジェはそっと目を逸らした。小柄な体躯に合わせ、整っているとはいえあどけなさの残る顔立ちに真摯に見つめられる度、緊張する。……何故こんな容姿をしているのか、と思った事が何度あることか。
長い時を生きている吸血鬼なりの大人びた言動に釣り合った、成長した見目であったならばきっと、こんなに考え悩む事も無かったろうに。ひしひしと感じる罪悪感と背徳感にジェジェは何も言わずシャーロットを抱きかかえたまま立ち上がった。腕一本でも抱える事の出来る軽い身体を大切な宝物の様に両腕で抱きかかえて、そのまま一緒に暖炉が焚かれた隣室へ。シャーロットが火を焚いたという暖炉の前へ座り込む。
「もう暖かくなった?」
「……ああ、……子供体温、か……」
「子供じゃないから!」
「……。…………そうなら、いいが……」
子供じゃないと振り返って抗議する姿は正に子ども扱いされて不機嫌になる子供そのものだ。ジェジェはため息を吐きたげに、腕の中に抱いたままのシャーロットの頭に自身の顎を置いた。まるで静かになるスイッチでも押された様に、シャーロットは抗議あげる声を止めてそのまま胸元に垂れてきていたジェジェの長い後ろ髪を弄り、手遊びを始める。
シャーロットはジェジェに放してと言う気はないし、思ってもいない。寧ろ普段では在り得ない程ジェジェと距離を近づけられるきっかけを作る間接的要因となった御国に珍しくありがとう、と満面の笑顔で感謝を伝えたいくらい。……今は出かけたみたいで、居ないけど。
ジェジェはシャーロットを膝の上に乗せて背後から抱きすくめるような体勢のまま、目前でめらめらと燃えている炎を遠く見つめる。ぱちっ、と暖炉の中で炎が小さな 音を立てて、はぜた。
今ばかりは、寒さで動きが鈍くなった自分を指さしてひとしきり馬鹿にした後で出かけた主人が帰って来なければいいのに、なんて心の奥で思うジェジェの細やかな願いに反して、がちゃりと大きな音を立て部屋の扉が開かれるのはそれからほんの数分後の話。
「雪国だもの。多少の寒さは仕方ないとは思ってたけど――」
時期的にも丁度一番冷え込む季節に運悪く来てしまったらしい。とシャーロットは窓の外へ視線を投げる。しんしんと白い雪が降り注ぎ、屋根にも鋭利でそれはもう立派なツララが出来上がっていた。運悪く、とは言ったが次は雪国に行こうと予定を立てて決行したのは御国である。
この凍えるような寒さも計算していたのかも、とシャーロットは小さくため息を吐く。元より口数の少ないジェジェだが、口を開けば寒い、寒いとばかり気の毒な程か細く辛そうな声で呟いて……。これは流石に困りものね、と毛布をジェジェに手渡した。毛布の表面さえ下がり切った室温に晒されていたせいで表面がひんやりとしている。
「ジェジェ、大丈夫?」
「寒い……。……眠い……。シャーロットは、寒くはない、のか……」
「これくらいへっちゃらよ」
ふふん、と胸を張る様に笑顔を浮かべれば、ジェジェはそうか、とだけ言って渡された毛布にくるまって身を縮こめた。彼が寒さに弱い理由はよく分かる。蛇なのだから、この気温では冬眠していてもおかしくない。誰にも言った事は無いけど、実はシャーロットにはジェジェと一緒に放浪していたその昔、余りの寒さに眠ってしまった嫉妬を抱えて冬の雪山を気合いで越えた経験もある。
「暖炉に火を焚いたから、近くに行きましょう。此処より断然あったかいわ」
そう言いながら握ったジェジェの手はとても冷たかった。
「! ――ひゃ、……っ」
低体温なのは知っているが、それを差し引いても思わず小さく悲鳴を上げるくらいには冷たかった。死人ですらもうちょっとあったかいんじゃないだろうか。しかしシャーロットとは逆に、手に触れた温かな感触にジェジェはしょぼくれるように細めていた目をカッと見開く。あまりの冷たさに反射的に遠ざかろうとしたシャーロットの手を追いかけて捕まえるように強く握り、引き込んだ。あっという間にシャーロットの視界は黒一色に塗りつぶされ、背中には逃がさないというように押し付けられるジェジェの腕の重圧。
「んん、冷たっ」
冷たい黒装束に包み込まれて、ひやりと体が冷えていく感覚にシャーロットは静かに身震いする。
「……」
一方でジェジェは水を得た魚の様に、何処か紙袋の内の表情を緩めながらじんわりと移って来る熱を捕まえ続ける。
最初に腕を引いて抱きしめたのは寒さのせいでぼやけた頭がとった無意識の行動だったが、現在はシャーロットを抱きしめている事を自覚しながらこれが子供体温か……、と客観的に判断する程度の思考は戻ってきていた。だがしかし放してやろうという気が毛頭ない。
好きな人に抱きしめられるのは嬉しい事だけど、これはちょっと苦しい、あと乱暴。と心の中でだけ呟きながら身じろいで息が出来る様に顔を上へと向ける。すると、シャーロットの唇が軽く服の布地とはまた違う、冷たい場所に触れた気がした。
「っ――!」
びくりと大きく体を強張らせたジェジェはほんの少しだけ腕に込めていた力を緩め、放す事はしないものの生まれた僅かな距離で腕の中のシャーロットを見下ろした。丁度視線が交わる。顎の直ぐ真下、首元近くの高さにある唇がすぐに目に入った。先ほど首元に触れた柔らかな感触が何であるかをジェジェは理解する。宝石の様な丸々とした赤い瞳が真っすぐに向けられていて、ジェジェはそっと目を逸らした。小柄な体躯に合わせ、整っているとはいえあどけなさの残る顔立ちに真摯に見つめられる度、緊張する。……何故こんな容姿をしているのか、と思った事が何度あることか。
長い時を生きている吸血鬼なりの大人びた言動に釣り合った、成長した見目であったならばきっと、こんなに考え悩む事も無かったろうに。ひしひしと感じる罪悪感と背徳感にジェジェは何も言わずシャーロットを抱きかかえたまま立ち上がった。腕一本でも抱える事の出来る軽い身体を大切な宝物の様に両腕で抱きかかえて、そのまま一緒に暖炉が焚かれた隣室へ。シャーロットが火を焚いたという暖炉の前へ座り込む。
「もう暖かくなった?」
「……ああ、……子供体温、か……」
「子供じゃないから!」
「……。…………そうなら、いいが……」
子供じゃないと振り返って抗議する姿は正に子ども扱いされて不機嫌になる子供そのものだ。ジェジェはため息を吐きたげに、腕の中に抱いたままのシャーロットの頭に自身の顎を置いた。まるで静かになるスイッチでも押された様に、シャーロットは抗議あげる声を止めてそのまま胸元に垂れてきていたジェジェの長い後ろ髪を弄り、手遊びを始める。
シャーロットはジェジェに放してと言う気はないし、思ってもいない。寧ろ普段では在り得ない程ジェジェと距離を近づけられるきっかけを作る間接的要因となった御国に珍しくありがとう、と満面の笑顔で感謝を伝えたいくらい。……今は出かけたみたいで、居ないけど。
ジェジェはシャーロットを膝の上に乗せて背後から抱きすくめるような体勢のまま、目前でめらめらと燃えている炎を遠く見つめる。ぱちっ、と暖炉の中で炎が小さな 音を立てて、はぜた。
今ばかりは、寒さで動きが鈍くなった自分を指さしてひとしきり馬鹿にした後で出かけた主人が帰って来なければいいのに、なんて心の奥で思うジェジェの細やかな願いに反して、がちゃりと大きな音を立て部屋の扉が開かれるのはそれからほんの数分後の話。
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