Lady PRIDE
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
腰まで流れるふわふわと柔らかな自慢の髪を揺らしながら少女・シャーロットはハミングしながら先へ先へと歩いてゆく。
誰から見ても、その少女はまるでそのまま童話の中から抜け出てきたかのように愛らしい。長い廊下を歩いてたどり着いた扉の前でひざ丈ほどのスカートを翻しながら立ち止まる。そして恭しく三度扉をノックした。暫く待てば、ガチャリと音を立てて扉が開く。
「おやおや、いらっしゃいましたな?」
「ごきげんよう服部。そろそろお勉強も終わりでしょ? せっかくだから御国と遊んであげようと思って」
「ほっほっほ、そうですかそうですか」
出てきた初老の男は顔に刻まれ始めた皺を深めるように笑いながらシャーロットを部屋の中へと招き入れた。部屋へと入ればあっ、とシャーロットに気づいて嬉しそうな顔をするこの屋敷の長子、有栖院御国。ひらひらと手を振って見せた後、シャーロットは御国の前に、ノートや教本ではなく白黒のチェス盤が置かれている事に気付いた。
「なんだ。勉強してないんじゃない」
「坊ちゃんが暇そうにしてたので久々にひと勝負をと思いましてな」
「勉強はちゃんとしなきゃダメよ、御国」
「なんだよもう終わったからいいじゃん。それよりシャーリーもやろうよ」
「それより服部との勝負は――――あれ、いない?」
ふと目を向ければ、服部の姿は部屋から忽然と消え失せていた。いつの間に出て行ったのか。チェス盤を見る限り服部の劣勢だったようだが……。首を傾げるシャーロットの手を掴んだ御国がほらほら、とチェスに誘う。
動かされていた駒を初期配置に戻している所を見ると、御国としても服部との勝負の決着についてはさほど興味もないのか。そう考えて一先ず納得することにした。
「御国。私チェスはやらないわよ」
「なんで? 負けるのが怖いわけ?」
「ばか言わないで。御国が弱すぎるの。もう少し、そうね。御門に勝てるようになったら考えてあげなくもないわ」
「お父さんに? ええー……」
その様子だとまだ御国の父親――、御門には勝てていないのだろう。
普通の人間の何倍も長く生きている上シャーロットは長くを英国で過ごし、慣れ親しんだ経験のあるチェスゲームが下手な大人よりも強い。
不服そうな御国を流しつつ、シャーロットは御国の机に置かれた本へ手を伸ばした。表紙には“Diary”と書かれていて日記帳であることは明らかである。ちょっとした興味から手を伸ばし、ぱらぱらとめくってみるが何一つ言葉は綴られていない白紙の連続にすぐさまぱたりと本を閉じた。
「ああそれ、服部がさっき持って来たんだ。手書きでつけるといいってさ」
「そうなの。てっきり書くのをサボってるのかと思ったんだけど」
「ちょっとシャーロット。オレのこと字も書けないほど子供だと思ってんの?」
御国の言葉にシャーロットはくすくすと笑った。人間の成長は早いものだと思ったからだ。シャーロットは御国の父が生まれる少し前くらいから此処、有栖院にやって来たがやはり時の流れというのは早い。御国も何時か大人になって所帯を持って、なんてするんだろうか。そんな事を考えてしまうのは自分が存外長く生き過ぎている為か。
小さくて生意気な御曹司はシャーロットにとってちょっとしたおもちゃのようなものだった。話す事は心地良くて楽しくて、その反応を見ているのも面白い。だからいつもあえて言葉を選んでからかう事ばかり口にしてみる。
「でも御国、頭はいいのに字は汚いのよね。」
「!? ――このっ、そんなに汚くないだろ! 読めればいいんだよ!」
「そう。読めれば、ね」
身長はまだ少しシャーロットの方が上だが、いつか御国に抜かされる日も近いだろう。
掴みかかって来る御国の手をひょいひょいと避けて遊んでいれば、御国は疲れたように膝に手を付いて息を吐いた。じっとアンバーの瞳から真っすぐに視線が注がれる。それなら「シャーリーも日記書けよ」と言われ一巡して考えた後に「いいわよ」と答えた。
日記。日々の記録。日々なんて気に留める程ではないのかもしれないけれど……忘れない様に、また誰かへの記録として残してみるのも面白いかもしれない。そう思った。
「そういえば、此処に来るとき廊下で女の人とすれ違ったんだけど……」
「あ。その人たぶん、オレの新しい家庭教師の人だと思う」
「家庭教師? ということは、ふふ、服部は解雇?」
「やー、あいつはお祖父さまの友達で居候してるだけっていうし」
「そうよね。私もあの人、昔っから知ってるもの。服部は紅茶を淹れるのが上手だから好きよ」
「やまねは?」
「やまねさんは一番!」
誰から見ても、その少女はまるでそのまま童話の中から抜け出てきたかのように愛らしい。長い廊下を歩いてたどり着いた扉の前でひざ丈ほどのスカートを翻しながら立ち止まる。そして恭しく三度扉をノックした。暫く待てば、ガチャリと音を立てて扉が開く。
「おやおや、いらっしゃいましたな?」
「ごきげんよう服部。そろそろお勉強も終わりでしょ? せっかくだから御国と遊んであげようと思って」
「ほっほっほ、そうですかそうですか」
出てきた初老の男は顔に刻まれ始めた皺を深めるように笑いながらシャーロットを部屋の中へと招き入れた。部屋へと入ればあっ、とシャーロットに気づいて嬉しそうな顔をするこの屋敷の長子、有栖院御国。ひらひらと手を振って見せた後、シャーロットは御国の前に、ノートや教本ではなく白黒のチェス盤が置かれている事に気付いた。
「なんだ。勉強してないんじゃない」
「坊ちゃんが暇そうにしてたので久々にひと勝負をと思いましてな」
「勉強はちゃんとしなきゃダメよ、御国」
「なんだよもう終わったからいいじゃん。それよりシャーリーもやろうよ」
「それより服部との勝負は――――あれ、いない?」
ふと目を向ければ、服部の姿は部屋から忽然と消え失せていた。いつの間に出て行ったのか。チェス盤を見る限り服部の劣勢だったようだが……。首を傾げるシャーロットの手を掴んだ御国がほらほら、とチェスに誘う。
動かされていた駒を初期配置に戻している所を見ると、御国としても服部との勝負の決着についてはさほど興味もないのか。そう考えて一先ず納得することにした。
「御国。私チェスはやらないわよ」
「なんで? 負けるのが怖いわけ?」
「ばか言わないで。御国が弱すぎるの。もう少し、そうね。御門に勝てるようになったら考えてあげなくもないわ」
「お父さんに? ええー……」
その様子だとまだ御国の父親――、御門には勝てていないのだろう。
普通の人間の何倍も長く生きている上シャーロットは長くを英国で過ごし、慣れ親しんだ経験のあるチェスゲームが下手な大人よりも強い。
不服そうな御国を流しつつ、シャーロットは御国の机に置かれた本へ手を伸ばした。表紙には“Diary”と書かれていて日記帳であることは明らかである。ちょっとした興味から手を伸ばし、ぱらぱらとめくってみるが何一つ言葉は綴られていない白紙の連続にすぐさまぱたりと本を閉じた。
「ああそれ、服部がさっき持って来たんだ。手書きでつけるといいってさ」
「そうなの。てっきり書くのをサボってるのかと思ったんだけど」
「ちょっとシャーロット。オレのこと字も書けないほど子供だと思ってんの?」
御国の言葉にシャーロットはくすくすと笑った。人間の成長は早いものだと思ったからだ。シャーロットは御国の父が生まれる少し前くらいから此処、有栖院にやって来たがやはり時の流れというのは早い。御国も何時か大人になって所帯を持って、なんてするんだろうか。そんな事を考えてしまうのは自分が存外長く生き過ぎている為か。
小さくて生意気な御曹司はシャーロットにとってちょっとしたおもちゃのようなものだった。話す事は心地良くて楽しくて、その反応を見ているのも面白い。だからいつもあえて言葉を選んでからかう事ばかり口にしてみる。
「でも御国、頭はいいのに字は汚いのよね。」
「!? ――このっ、そんなに汚くないだろ! 読めればいいんだよ!」
「そう。読めれば、ね」
身長はまだ少しシャーロットの方が上だが、いつか御国に抜かされる日も近いだろう。
掴みかかって来る御国の手をひょいひょいと避けて遊んでいれば、御国は疲れたように膝に手を付いて息を吐いた。じっとアンバーの瞳から真っすぐに視線が注がれる。それなら「シャーリーも日記書けよ」と言われ一巡して考えた後に「いいわよ」と答えた。
日記。日々の記録。日々なんて気に留める程ではないのかもしれないけれど……忘れない様に、また誰かへの記録として残してみるのも面白いかもしれない。そう思った。
「そういえば、此処に来るとき廊下で女の人とすれ違ったんだけど……」
「あ。その人たぶん、オレの新しい家庭教師の人だと思う」
「家庭教師? ということは、ふふ、服部は解雇?」
「やー、あいつはお祖父さまの友達で居候してるだけっていうし」
「そうよね。私もあの人、昔っから知ってるもの。服部は紅茶を淹れるのが上手だから好きよ」
「やまねは?」
「やまねさんは一番!」