灰色の空
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02.キミと
教団本部の廊下。
任務の通達を受け取った〇〇は、そこに記された名前に目を疑った。
『探索任務:
担当エクソシスト :アレン・ウォーカー
備考:同行ファインダー 〇〇を指名』
ファインダーは本来、教団が効率的に割り振る駒に過ぎない。特定のエクソシストが個人を指名するなど異例のことだった。
困惑したまま向かった事務室の前で、ちょうど部屋から出てきたアレンと鉢合わせた。
「あ、〇〇さん。書面は届きましたか?」
アレンは以前と変わらない、穏やかな微笑みを浮かべていた。けれど、その瞳の奥には、どこか獲物を追い詰めるような静かな光が宿っている。
「……ウォーカーさん。お聞きしたいのですが、なぜ私を…。他にも経験豊富なファインダーは大勢いますし、わざわざ指名するなんて」
〇〇はあえて突き放すように、冷ややかな声で問いかけた。
あの夜、月光の下で見せた涙も笑いも、すべては一時的な気の迷いだったのだと、自分に言い聞かせるように。
しかし、アレンは一歩、彼女との距離を詰めた。
教団の制服が触れ合うほど近く、彼は声を落として囁く。
「理由なら、室長に伝えた通りですよ。『〇〇さんの報告書は正確で、現場での連携もとりやすい。僕にとっては一番信頼できるから』だと」
アレンはそう言って微笑み「ね?」というように少しだけ首を傾けた。
廊下の窓から差し込む光が、彼の銀髪を柔らかく縁取っている。
「嫌でしたか?僕に指名されるのは」
不意に投げかけられた、無邪気で、けれど核心を突くような問い。
「……嫌…とか、そういうのは無いですけど……」
〇〇は言葉を濁した。
嫌なはずがない。
アレンの無駄のない動きや的確な指示出しをする姿は
彼女にとっても非常にやりやすく、
むしろ、できるならば任務を共にしたいと思えるエクソシストだった。
けれど、彼が自分のような「ただの裏方」に固執する理由が、どうしても見えなかった。真意を読み取ろうと彼の瞳を覗き込むが、そこにあるのは一点の曇りもない、穏やかな微笑みだけだ。
拒否権があるわけでもないと悟った〇〇は
これ以上反論することはなく任務当日を迎えた。
…
探索任務は、驚くほどスムーズに進んだ。
〇〇の用意した資料は完璧で、アレンが動くべき最短のルートを常に示していた。戦闘中も、彼女はアレンの死角を完璧にカバーし、彼が「破壊」に専念できるよう、影のように立ち回る。
(……すごいな。言葉を交わさなくても、僕が欲しい情報を、欲しい瞬間に差し出してくれる)
アレンは、改めて感心していた。エクソシストとして、これほど「やりやすい」と感じるパートナーは他にいない。
けれどそれ以上に、彼女が自分の背中を守ってくれているという事実に、言いようのない充足感を覚えていた。
…
「ふぅ……。やっと終わりましたね、〇〇さん。」
少し伸びをしながら語りかけるアレンに
〇〇は淡々と言葉を返した。
「お疲れ様です、ウォーカーさん」
「あぁ〜もう、僕、お腹がペコペコですよ!」
任務完了の報告を上げる直前、アレンは芝居がかった様子でお腹を押さえた。
「何か食べていきませんか?」
「えっ……でも、すぐに帰って室長に報告しないと……」
真面目な〇〇は戸惑うが、アレンはすでに彼女の背中に手を添え、街の方へと歩き出している。
「まぁまぁ、少しぐらい寄り道しても、バチは当たりませんよ。室長だって、僕たちが空腹で倒れるのを望まないはずです。行きましょう、この先にすごく美味しいレストランがあるって聞いたんです」
…
案内された店で、〇〇は言葉を失った。
目の前で、信じられないほどの量の料理がアレンの胃袋に吸い込まれていく。山積みの皿、飛び交う注文。
「……ウォーカーさん、本当にこれ、全部食べるんですね」
「はい! 〇〇さんも、冷めないうちに食べてください。ここのパスタ、絶品ですよ」
促されるまま、〇〇もゆっくりとフォークを動かす。
一口食べた瞬間、彼女の瞳がわずかに見開かれた。
教団の食堂も美味しいが、それとは違う、素材の甘みが染み渡るような深い味わい。気づけば、無心で食が進んでいた。
そして、デザート。
運ばれてきたのは、宝石のように色鮮やかなマカロンだった。
「わぁ……」
思わず、小さな声が漏れた。
淡いピンク、柔らかなグリーン。その可愛らしさと、口に入れた瞬間に広がる甘い香りに、〇〇の瞳がキラキラと輝きだす。
数分前までの無表情はどこへやら、彼女の表情は、美味しいものを前にした少女そのものに変わっていた。
「……ふふ、なんだかかわいいですね、〇〇さん」
「……っ!ゲホッ!」
アレンの茶化すような声に、〇〇はむせながら我に返った。
顔が一気に火照り、マカロンを口に押し込んで俯く。
「……あの、からかわないでください」
「からかっていませんよ。……ねえ、〇〇さん。今度の非番の日、もしタイミングが合えば……僕の知っている、もっと素敵なカフェに行きませんか?」
アレンは、頬杖をついて彼女を見つめた。
それは、任務の指名とは違う、純粋な「誘い」だった。
「…で、でも…」
「嫌ですか?」
余裕のある笑みを浮かべる。
「……まぁ、タイミングが合えば…いいですけど……。予定を確認しないと分かりません」
煮え切らない返事。けれど、その声には拒絶の響きはなかった。
むしろ、わずかに期待が混じっているのを、アレンは見逃さなかった。
「楽しみにしてますね! 予定、無理やり空けておきますから」
アレンの嬉しそうな笑顔に、〇〇はさらに俯くことしか出来なかった。
…
その日の夜。
自室に戻った〇〇は、ベッドに体育座りで今日の出来事を思い返していた。
(カフェ……。ウォーカーさんと、非番の日に……)
自分の膝を眺めながら、自分でも信じられないほどドキマギしていることに気づく。
いつもの団服では堅苦しいだろうか。かといって、あまり気合を入れすぎるのもおかしい。
(……何を着ていけばいいんだろう)
戦場の死体を見て眉一つ動かさなかったはずの彼女が、たった一度の「お出かけ」のために、深夜まで鏡の前で悩み続けていた。
アレン・ウォーカーというエクソシストが、彼女の冷え切った日常に、あまりにも鮮やかで甘い色を落とした。
教団本部の廊下。
任務の通達を受け取った〇〇は、そこに記された名前に目を疑った。
『探索任務:
担当エクソシスト :アレン・ウォーカー
備考:同行ファインダー 〇〇を指名』
ファインダーは本来、教団が効率的に割り振る駒に過ぎない。特定のエクソシストが個人を指名するなど異例のことだった。
困惑したまま向かった事務室の前で、ちょうど部屋から出てきたアレンと鉢合わせた。
「あ、〇〇さん。書面は届きましたか?」
アレンは以前と変わらない、穏やかな微笑みを浮かべていた。けれど、その瞳の奥には、どこか獲物を追い詰めるような静かな光が宿っている。
「……ウォーカーさん。お聞きしたいのですが、なぜ私を…。他にも経験豊富なファインダーは大勢いますし、わざわざ指名するなんて」
〇〇はあえて突き放すように、冷ややかな声で問いかけた。
あの夜、月光の下で見せた涙も笑いも、すべては一時的な気の迷いだったのだと、自分に言い聞かせるように。
しかし、アレンは一歩、彼女との距離を詰めた。
教団の制服が触れ合うほど近く、彼は声を落として囁く。
「理由なら、室長に伝えた通りですよ。『〇〇さんの報告書は正確で、現場での連携もとりやすい。僕にとっては一番信頼できるから』だと」
アレンはそう言って微笑み「ね?」というように少しだけ首を傾けた。
廊下の窓から差し込む光が、彼の銀髪を柔らかく縁取っている。
「嫌でしたか?僕に指名されるのは」
不意に投げかけられた、無邪気で、けれど核心を突くような問い。
「……嫌…とか、そういうのは無いですけど……」
〇〇は言葉を濁した。
嫌なはずがない。
アレンの無駄のない動きや的確な指示出しをする姿は
彼女にとっても非常にやりやすく、
むしろ、できるならば任務を共にしたいと思えるエクソシストだった。
けれど、彼が自分のような「ただの裏方」に固執する理由が、どうしても見えなかった。真意を読み取ろうと彼の瞳を覗き込むが、そこにあるのは一点の曇りもない、穏やかな微笑みだけだ。
拒否権があるわけでもないと悟った〇〇は
これ以上反論することはなく任務当日を迎えた。
…
探索任務は、驚くほどスムーズに進んだ。
〇〇の用意した資料は完璧で、アレンが動くべき最短のルートを常に示していた。戦闘中も、彼女はアレンの死角を完璧にカバーし、彼が「破壊」に専念できるよう、影のように立ち回る。
(……すごいな。言葉を交わさなくても、僕が欲しい情報を、欲しい瞬間に差し出してくれる)
アレンは、改めて感心していた。エクソシストとして、これほど「やりやすい」と感じるパートナーは他にいない。
けれどそれ以上に、彼女が自分の背中を守ってくれているという事実に、言いようのない充足感を覚えていた。
…
「ふぅ……。やっと終わりましたね、〇〇さん。」
少し伸びをしながら語りかけるアレンに
〇〇は淡々と言葉を返した。
「お疲れ様です、ウォーカーさん」
「あぁ〜もう、僕、お腹がペコペコですよ!」
任務完了の報告を上げる直前、アレンは芝居がかった様子でお腹を押さえた。
「何か食べていきませんか?」
「えっ……でも、すぐに帰って室長に報告しないと……」
真面目な〇〇は戸惑うが、アレンはすでに彼女の背中に手を添え、街の方へと歩き出している。
「まぁまぁ、少しぐらい寄り道しても、バチは当たりませんよ。室長だって、僕たちが空腹で倒れるのを望まないはずです。行きましょう、この先にすごく美味しいレストランがあるって聞いたんです」
…
案内された店で、〇〇は言葉を失った。
目の前で、信じられないほどの量の料理がアレンの胃袋に吸い込まれていく。山積みの皿、飛び交う注文。
「……ウォーカーさん、本当にこれ、全部食べるんですね」
「はい! 〇〇さんも、冷めないうちに食べてください。ここのパスタ、絶品ですよ」
促されるまま、〇〇もゆっくりとフォークを動かす。
一口食べた瞬間、彼女の瞳がわずかに見開かれた。
教団の食堂も美味しいが、それとは違う、素材の甘みが染み渡るような深い味わい。気づけば、無心で食が進んでいた。
そして、デザート。
運ばれてきたのは、宝石のように色鮮やかなマカロンだった。
「わぁ……」
思わず、小さな声が漏れた。
淡いピンク、柔らかなグリーン。その可愛らしさと、口に入れた瞬間に広がる甘い香りに、〇〇の瞳がキラキラと輝きだす。
数分前までの無表情はどこへやら、彼女の表情は、美味しいものを前にした少女そのものに変わっていた。
「……ふふ、なんだかかわいいですね、〇〇さん」
「……っ!ゲホッ!」
アレンの茶化すような声に、〇〇はむせながら我に返った。
顔が一気に火照り、マカロンを口に押し込んで俯く。
「……あの、からかわないでください」
「からかっていませんよ。……ねえ、〇〇さん。今度の非番の日、もしタイミングが合えば……僕の知っている、もっと素敵なカフェに行きませんか?」
アレンは、頬杖をついて彼女を見つめた。
それは、任務の指名とは違う、純粋な「誘い」だった。
「…で、でも…」
「嫌ですか?」
余裕のある笑みを浮かべる。
「……まぁ、タイミングが合えば…いいですけど……。予定を確認しないと分かりません」
煮え切らない返事。けれど、その声には拒絶の響きはなかった。
むしろ、わずかに期待が混じっているのを、アレンは見逃さなかった。
「楽しみにしてますね! 予定、無理やり空けておきますから」
アレンの嬉しそうな笑顔に、〇〇はさらに俯くことしか出来なかった。
…
その日の夜。
自室に戻った〇〇は、ベッドに体育座りで今日の出来事を思い返していた。
(カフェ……。ウォーカーさんと、非番の日に……)
自分の膝を眺めながら、自分でも信じられないほどドキマギしていることに気づく。
いつもの団服では堅苦しいだろうか。かといって、あまり気合を入れすぎるのもおかしい。
(……何を着ていけばいいんだろう)
戦場の死体を見て眉一つ動かさなかったはずの彼女が、たった一度の「お出かけ」のために、深夜まで鏡の前で悩み続けていた。
アレン・ウォーカーというエクソシストが、彼女の冷え切った日常に、あまりにも鮮やかで甘い色を落とした。