1章 人間界の片隅で
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イリコは急に沈んだ表情を見せる。
「それが……わからないの……小さい頃からずっと『兄様』って呼んでたから」
飛影は溜息をついた。
「……話にならんな。銀髪の妖狐が魔界にどれだけいると思っている」
「う……」
じわりと溢れかけた涙を堪え、イリコは飛影に食ってかかる。
「でも今はこっちに いるんだもん!絶対見つかるんだから!」
「フン。名前も教えんとは、随分と用心深い『兄』だな」
その言葉を聞いた瞬間、イリコの脳裏にふっと男の声が響く。
──名前を教えていないとは……あいつも随分用心深いな──
(えっ……?)
覚えのない声。記憶にない会話。
(今のは……)
「……おい……」
(誰……!?)
「……おい!チッ……イリコッ!!」
「ハイッ!!」
飛影の怒鳴り声にイリコは反射的に返事をし、我に返った。
「何故お前の『兄』とやらが人間界にいると言い切れる」
「え?」
ポカンとした表情のイリコに飛影は再び溜息をつく。
「お前が、この世界にそいつがいると確信している理由は何だ」
「それは……」
イリコは『あの時』の光景を思い出し、目を伏せ途切れ途切れに答えた。
「兄様は……15年前、ハンターに追われて傷ついて……人間界に逃げたの。もし妖力が回復して魔界に戻ってるなら、すぐに噂が広まるはず……『伝説の妖狐が帰ってきた』って」
「人間界に逃げた伝説の妖狐……」
イリコは顔を上げる。
「飛影、もしかして心当たりがあるの……?」
「イリコ。そいつは──酷く冷たい目をした男か?」
飛影の言葉に、イリコは ためらわずに首を振った。
「ううん。すごく優しい目、してる。……優しいんだよ、兄様は」
切れ長の目が自分を見つめて微笑む瞬間を思い出し、イリコの胸はぎゅっと締め付けられる。
飛影はしばらく考えてから、かぶりを振った。
「……心当たりはないな」
「そっか……」
今日も また空振り。
でも きっとこの出会いは、貴重。
何故か、イリコは そんな気がした。
「それが……わからないの……小さい頃からずっと『兄様』って呼んでたから」
飛影は溜息をついた。
「……話にならんな。銀髪の妖狐が魔界にどれだけいると思っている」
「う……」
じわりと溢れかけた涙を堪え、イリコは飛影に食ってかかる。
「でも今はこっちに いるんだもん!絶対見つかるんだから!」
「フン。名前も教えんとは、随分と用心深い『兄』だな」
その言葉を聞いた瞬間、イリコの脳裏にふっと男の声が響く。
──名前を教えていないとは……あいつも随分用心深いな──
(えっ……?)
覚えのない声。記憶にない会話。
(今のは……)
「……おい……」
(誰……!?)
「……おい!チッ……イリコッ!!」
「ハイッ!!」
飛影の怒鳴り声にイリコは反射的に返事をし、我に返った。
「何故お前の『兄』とやらが人間界にいると言い切れる」
「え?」
ポカンとした表情のイリコに飛影は再び溜息をつく。
「お前が、この世界にそいつがいると確信している理由は何だ」
「それは……」
イリコは『あの時』の光景を思い出し、目を伏せ途切れ途切れに答えた。
「兄様は……15年前、ハンターに追われて傷ついて……人間界に逃げたの。もし妖力が回復して魔界に戻ってるなら、すぐに噂が広まるはず……『伝説の妖狐が帰ってきた』って」
「人間界に逃げた伝説の妖狐……」
イリコは顔を上げる。
「飛影、もしかして心当たりがあるの……?」
「イリコ。そいつは──酷く冷たい目をした男か?」
飛影の言葉に、イリコは ためらわずに首を振った。
「ううん。すごく優しい目、してる。……優しいんだよ、兄様は」
切れ長の目が自分を見つめて微笑む瞬間を思い出し、イリコの胸はぎゅっと締め付けられる。
飛影はしばらく考えてから、かぶりを振った。
「……心当たりはないな」
「そっか……」
今日も また空振り。
でも きっとこの出会いは、貴重。
何故か、イリコは そんな気がした。