1章 人間界の片隅で
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イリコが人間界で暮らし始めて15年。
わずかな手掛かりを元に『彼』を追いかけて来たものの、そう簡単に巡り逢えるはずもない。
しかし、この15年の間にイリコは すっかり たくましくなった。
人間界で生きていく為、お金を稼ぐことも覚えたし、失った妖気も ある程度 回復させる事に成功した。
そして、様々な事を学んだ──
むやみやたらと『彼』を追うのではなく、情報を集める事。
妖怪だけでなく、人間にも正体を悟られないようにする事。
霊界の追求を逃れるため、『ミズヒトナキ』としての役目を果たす事──
(霊界の奴らなんか大っ嫌いだけど、人間界に居続けるためには仕方ないよね……)
ふぅ、と溜息をついてイリコは ベッドを後にした。
一方、霊界。
「うーむ……」
「どうしたんですか?コエンマ様。難しい顔して」
霊界の審判の門 内部。
閻魔大王ジュニア・コエンマの前に、霊界案内人のぼたんが現れた。
「ぼたんか。今『例の娘』を見ていたのだが……」
「あぁ、あのミズヒ……むぐっ!!」
手で口を塞がれ、ぼたんは自分の失言に気付く。
コエンマは細い目をわずかに開き、呟いた。
「忘れるな、ぼたん。アレは知られてはならん存在だ」
「は、はい…」
「相変わらず人間界での役目は果たしているようだが、『例の娘』が何を目的に あの地に留まっているのか、皆目 見当がつかん。
できれば何事もないうちに、魔界へ引き揚げさせたいんだがな……
しかし役目を果たし続ける限り、強制的に排除するわけにもいかん……間違いなく、アレの力で人間が起こす犯罪の件数は減少しているのだ」
深刻な顔で人間界のイリコの姿を追うコエンマ。
その表情を見たぼたんは、今まで胸に留めていた疑問をぶつけてみる事にした。
「コエンマ様、彼女は一体 何なんです?」
「そうだな……」
ひと呼吸おいてから、コエンマは再び口を開いた。
「アレは、厳密には妖怪ではない。本来なら、魔界にも人間界にも、霊界にも属さないものだ」
「えぇっ?それって、どういう…」
困惑顔のぼたんを見据え、周囲に話が洩れていないのを確認すると、コエンマは言葉を続けた。
「ミズヒトナキは、『全てを癒すもの』。無限の力を秘めた、この世界に唯一無二の存在なのだ」
「彼女が……」
「どちらかと言えば、神に近い。しかし、かなり未完成で不安定な、不完全な神だ」
「コエンマ様……!」
「あぁ……!」
ぼたんはゴクリと唾を飲む。その視線を受け、コエンマも力強く頷く。
「今、ちょっと韻 踏みましたね!」
「バレたか!カッコよかっただろう!?」
どうにも、深刻になりきれない霊界の面々であった。
わずかな手掛かりを元に『彼』を追いかけて来たものの、そう簡単に巡り逢えるはずもない。
しかし、この15年の間にイリコは すっかり たくましくなった。
人間界で生きていく為、お金を稼ぐことも覚えたし、失った妖気も ある程度 回復させる事に成功した。
そして、様々な事を学んだ──
むやみやたらと『彼』を追うのではなく、情報を集める事。
妖怪だけでなく、人間にも正体を悟られないようにする事。
霊界の追求を逃れるため、『ミズヒトナキ』としての役目を果たす事──
(霊界の奴らなんか大っ嫌いだけど、人間界に居続けるためには仕方ないよね……)
ふぅ、と溜息をついてイリコは ベッドを後にした。
一方、霊界。
「うーむ……」
「どうしたんですか?コエンマ様。難しい顔して」
霊界の審判の門 内部。
閻魔大王ジュニア・コエンマの前に、霊界案内人のぼたんが現れた。
「ぼたんか。今『例の娘』を見ていたのだが……」
「あぁ、あのミズヒ……むぐっ!!」
手で口を塞がれ、ぼたんは自分の失言に気付く。
コエンマは細い目をわずかに開き、呟いた。
「忘れるな、ぼたん。アレは知られてはならん存在だ」
「は、はい…」
「相変わらず人間界での役目は果たしているようだが、『例の娘』が何を目的に あの地に留まっているのか、皆目 見当がつかん。
できれば何事もないうちに、魔界へ引き揚げさせたいんだがな……
しかし役目を果たし続ける限り、強制的に排除するわけにもいかん……間違いなく、アレの力で人間が起こす犯罪の件数は減少しているのだ」
深刻な顔で人間界のイリコの姿を追うコエンマ。
その表情を見たぼたんは、今まで胸に留めていた疑問をぶつけてみる事にした。
「コエンマ様、彼女は一体 何なんです?」
「そうだな……」
ひと呼吸おいてから、コエンマは再び口を開いた。
「アレは、厳密には妖怪ではない。本来なら、魔界にも人間界にも、霊界にも属さないものだ」
「えぇっ?それって、どういう…」
困惑顔のぼたんを見据え、周囲に話が洩れていないのを確認すると、コエンマは言葉を続けた。
「ミズヒトナキは、『全てを癒すもの』。無限の力を秘めた、この世界に唯一無二の存在なのだ」
「彼女が……」
「どちらかと言えば、神に近い。しかし、かなり未完成で不安定な、不完全な神だ」
「コエンマ様……!」
「あぁ……!」
ぼたんはゴクリと唾を飲む。その視線を受け、コエンマも力強く頷く。
「今、ちょっと韻 踏みましたね!」
「バレたか!カッコよかっただろう!?」
どうにも、深刻になりきれない霊界の面々であった。