1章 人間界の片隅で
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「・・・・見つけたぞ、ミズヒトナキだ!」
私は そんな名前じゃない
「これが伝説の、ねぇ・・・・」
そんな目で 見ないで
「胸元に埋まった蒼い珠……間違いないな」
私にさわらないで
「次のオークションの目玉は決まりだな。ミズヒトナキ……どれほどの値段がつくか、楽しみだよ」
ミズヒトナキ……
違うのに……
私の……私の名前は……
「イリコーー」
あぁ。
大好きなあなたの声。
大きな手が、私の頭を優しく撫でる。
風に揺れる美しい銀髪に、私はいつだって見とれてしまう。
「どうした?イリコ」
「ん、なんでもない。ただ ちょっと、幸せだな~って」
そう言って微笑めば、あなたは尻尾を揺らしながら私を抱きしめる。
「兄様」
「イリコ。どこにも行くな」
そう言ったのは、あなたの方なのに……
* * * *
「くそ、しくじった……霊界の奴等、あれはなかなかしぶとい様だ……クッ」
「兄様!酷い傷……!今 治療を!」
私の腕を掴んであなたは首を振る。
「イリコ。俺はしばらく人間界に潜伏する。傷が癒えたら、必ずまた逢いに来る。それまで……待っていてくれるか?」
嫌
どこにも行かないで
私を一人にしないで
それでも
私の手の届かない場所へ
あなたは行ってしまう
「いい子で、待ってるんだぞ。イリコ……愛してるよ」
涙が溢れる
滲むのは、痛々しい体を引きずるあなた
「お前を守ってやれなくて……すまない」
――兄様……いつか逢えるその日まで…無事でいて……
走り去るあなたの後ろ姿に
私は全ての妖力を託し
そのまま気を失った
* * * *
「オイオイお嬢ちゃん、こんなトコで寝てると風邪引くぜ~?
それとも、誘ってんのかァ?まぁ誘われてなくてもイタダいちまうけどな、ケケケ」
ぼんやりとした意識の中で、イリコは大切な人を追う。
(兄様……)
もう、彼の姿はなく――
見知らぬ雄の妖怪がイリコに馬乗りになっていた。
まだ朦朧としている彼女に容赦なく男は襲い掛かり、服を乱暴に裂く。
「はっ・・・・!」
妖怪は胸元に触れてニヤリと笑う。
「蒼い珠……お前、ミズヒトナキか!ヒャハッ!こりゃツイてる」
「やぁあっ!触らないで!」
妖力を放出して威嚇……したはずだった。
相手の腕に絡み付いたのは、ごくわずかな妖気のみ。
(そうか……私、妖力を兄様に…!)
「何だァ~?テメェがヤられそうだって時に手加減してくれんのかよ……まぁこっちは好都合だけどな!」
妖怪は下卑た笑いを浮かべながら軽々とイリコの両腕を掴み、頭の上に纏めてしまった。
「やだ……っ!」
その瞬間、イリコは違和感に気付く。
その正体は、普段 頭にあるべきものが触れない、という事。
(耳がない…!!)
生えていたはずの、三角の狐耳。
腰下に感じるはずの尻尾の感触もなくなっている。
「嘘……」
妖力もない。
あの人とお揃いだった耳も尻尾もない。
目の前には、肉欲を剥き出しにした雄。
「たすけて……」
「こんな山奥で助けなんか来るかよ!恨むなら、こんな所に独りでいた自分を恨むんだな!」
誰か……助けて……
助けてよ、兄様……!!
* *
「いやぁあぁーっ!!」
見慣れた部屋のベッドの上で、イリコは目を覚ました。全身に汗をびっしょりとかき、心臓がどくどくと跳ねている。
(また、あの日の夢……)
私は そんな名前じゃない
「これが伝説の、ねぇ・・・・」
そんな目で 見ないで
「胸元に埋まった蒼い珠……間違いないな」
私にさわらないで
「次のオークションの目玉は決まりだな。ミズヒトナキ……どれほどの値段がつくか、楽しみだよ」
ミズヒトナキ……
違うのに……
私の……私の名前は……
「イリコーー」
あぁ。
大好きなあなたの声。
大きな手が、私の頭を優しく撫でる。
風に揺れる美しい銀髪に、私はいつだって見とれてしまう。
「どうした?イリコ」
「ん、なんでもない。ただ ちょっと、幸せだな~って」
そう言って微笑めば、あなたは尻尾を揺らしながら私を抱きしめる。
「兄様」
「イリコ。どこにも行くな」
そう言ったのは、あなたの方なのに……
* * * *
「くそ、しくじった……霊界の奴等、あれはなかなかしぶとい様だ……クッ」
「兄様!酷い傷……!今 治療を!」
私の腕を掴んであなたは首を振る。
「イリコ。俺はしばらく人間界に潜伏する。傷が癒えたら、必ずまた逢いに来る。それまで……待っていてくれるか?」
嫌
どこにも行かないで
私を一人にしないで
それでも
私の手の届かない場所へ
あなたは行ってしまう
「いい子で、待ってるんだぞ。イリコ……愛してるよ」
涙が溢れる
滲むのは、痛々しい体を引きずるあなた
「お前を守ってやれなくて……すまない」
――兄様……いつか逢えるその日まで…無事でいて……
走り去るあなたの後ろ姿に
私は全ての妖力を託し
そのまま気を失った
* * * *
「オイオイお嬢ちゃん、こんなトコで寝てると風邪引くぜ~?
それとも、誘ってんのかァ?まぁ誘われてなくてもイタダいちまうけどな、ケケケ」
ぼんやりとした意識の中で、イリコは大切な人を追う。
(兄様……)
もう、彼の姿はなく――
見知らぬ雄の妖怪がイリコに馬乗りになっていた。
まだ朦朧としている彼女に容赦なく男は襲い掛かり、服を乱暴に裂く。
「はっ・・・・!」
妖怪は胸元に触れてニヤリと笑う。
「蒼い珠……お前、ミズヒトナキか!ヒャハッ!こりゃツイてる」
「やぁあっ!触らないで!」
妖力を放出して威嚇……したはずだった。
相手の腕に絡み付いたのは、ごくわずかな妖気のみ。
(そうか……私、妖力を兄様に…!)
「何だァ~?テメェがヤられそうだって時に手加減してくれんのかよ……まぁこっちは好都合だけどな!」
妖怪は下卑た笑いを浮かべながら軽々とイリコの両腕を掴み、頭の上に纏めてしまった。
「やだ……っ!」
その瞬間、イリコは違和感に気付く。
その正体は、普段 頭にあるべきものが触れない、という事。
(耳がない…!!)
生えていたはずの、三角の狐耳。
腰下に感じるはずの尻尾の感触もなくなっている。
「嘘……」
妖力もない。
あの人とお揃いだった耳も尻尾もない。
目の前には、肉欲を剥き出しにした雄。
「たすけて……」
「こんな山奥で助けなんか来るかよ!恨むなら、こんな所に独りでいた自分を恨むんだな!」
誰か……助けて……
助けてよ、兄様……!!
* *
「いやぁあぁーっ!!」
見慣れた部屋のベッドの上で、イリコは目を覚ました。全身に汗をびっしょりとかき、心臓がどくどくと跳ねている。
(また、あの日の夢……)
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