1章
おなまえ
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那田蜘蛛山での出来事から数日後。
名前は運が良く、那田蜘蛛山では明るい髪色を持つうるさい隊士以外の鬼狩りに鉢合わせることはなかった。
あの山で名前はいくつか得たものがあった。
まず、自分を鬼にし両親を殺した男の名前が『無惨』であること。
次にその無惨がこの近くにはいないであろうこと。
そして、今の自分の力は確実に柱には及ばないであろうこと。
(あの山には私が会った鬼の他に何匹かいた。もちろん他の鬼にも念のため聞き込みをしたかった。でも…。)
名前はあの山での気配を思い出し、身震いをした。
(でも、私は柱の気配におびえた。遠くからでも分かった。私は柱には勝てない。)
あの山での出来事は名前にとって自分の弱さを知る良い機会になった。
強くならなければ無惨は倒せない。
それに、倒す前に鬼狩りに殺されてしまっては元も子もない。
自分を鍛えなければならない、憎しみだけでは目的は達成できない。
名前は改めて自分を叱責した。
(甘い考えではいられない。殺られる前に殺らなければいけない。)
そうして名前は戦うことを決心した。
ずっと避けてきた戦闘という行為を行おうと決めた。
(戦うためには何が必要なの?武器?道場に弟子入り?いやいや、人間じゃないんだから…。)
名前鬼となってから今までの記憶を呼び起こす。
(あ…!)
名前は那田蜘蛛山での白い蜘蛛を思い出した。
(そうか、あの蜘蛛は鬼の能力だ。鬼は何かしらの能力を持つことができる…?
そうだとしたら、私の能力は…?)
――――ー貴様、忌血か…?
(忌血…。確かあの男、私の血を嫌がっていた…?私の血には何か力がある…?)
名前が自分の血に興味を持った時、
べんっ!
琵琶の音がした。
気が付いた時には、知らない空間に来ていた。
天と地があべこべになった館。
周りには誰もいない。
(嘘…さっきまで山の中だったじゃない…。)
名前は動揺が隠し切れなかった。
左右をせわしなく見渡し、自分の立っている場所、周囲にあるものすべて把握しようとした。
べんべん!
しかし再び琵琶の音がして、また場所が変わった。
先ほどと風景はほとんど変わらない。
しかし目の前には、
「久しいな、名前よ。」
噎せ返る血の匂いの中、黒髪を持つ和装の美女が目の前に立っていた。
名前はこの人間に会ったことはなかった。
しかし、その声と気配は間違いなく自分の憎む男であった。
「お前は………。無惨!!」
名前は我を忘れて無惨に飛び掛かった。
冷静な判断はできなかった。
爪を鋭利な刃物のように尖らせ、無惨の首目掛けて腕を伸ばした。
それは名前の中で最速の動きだった。
しかし無惨は少し顔を動かしただけで避けた。
「無駄だ、名前。」
避けられたことで名前は顔から床に突っ込んだが、すぐに体制を立て直して手を床に着き足払いを仕掛ける。
だがそれは無惨には届かない。
その回転の勢いで、立ち上がり再び爪を無惨に向ける。
そして名前の爪が無惨の首に届く直前、無惨が名前の首をつかんだ。
一切無駄のない動きで、まるで赤子の手をひねるかのように名前は動きを封じられたのだ。
それは名前が初めて無惨に会った時、鬼にさせられた時と同じ光景だった。
「貴様の中の、私の血の匂いが薄まっている。何故だ?」
「っく……。」
「あぁすまない。これじゃ話すことができないな。」
どさっと床の上に落とされた。
名前は呼吸を整え、目の前に立つ無惨を睨みつけた。
「以前私の血を与えたとき、確かに貴様の血の匂いは薄まったはず。しかし今はどうだ。また貴様の忌血の匂いが強くなっている。何をした、名前。」
無惨は名前を面白そうに見つめながら聞いた。
笑みを浮かべ、名前を試すかように答えを待っていた。
名前は猫が威嚇するかのような激しい息遣いをしながら、無惨の問いに答えた。
「知らないわ…っ!それに知っていても、お前には絶対に言わない!」
名前の答えに無惨は満足そうに笑った。
「そうか、知らないか。正直者は嫌いではない。私に対して挑発をしたかったようだが、残念ながら私にはすべて筒抜けだ。本当に何も知らないようだ。」
(思考が…読まれている!?)
名前は悔しそうに顔を歪めた。
「それにしても、私の命を奪おうだなんて無謀なことを考えたものだな。そんなに弱い力で何をしようと言うのだ。」
少しずつ名前のもとに無惨が近づいてきた。
「このまま貴様の命を奪ってもいいのだが、少しくらい私の役に立ってから私に挑みに来い。まぁ、それまで生きていられればの話だが。」
(勝てない…。このままでは、私はこいつを殺せない…!悔しい、悔しい!!)
名前の目には悔しさにより涙が浮かんでいた。
目の前の男を殺せる力を、名前は持っていなかった。
名前のその表情を見て、無惨はさらに口角を釣りあげた。
「貴様に構っている時間はないが、貴様の血が私の求めるものになれば、その時は相手をしてやろう。」
無惨がそういった直後、名前の首元に無惨の一部が刺さり、あの夜のように血を注がれた。
名前は再度絶叫し、その場にのたうち回ったが、無惨はもう興味を無くしたらしく名前に背を向けた。
そしてまた琵琶の音がして、名前が目を覚ましたときはもう館も無惨の姿も無く、もといた山の中に戻されていたのだった。
名前は運が良く、那田蜘蛛山では明るい髪色を持つうるさい隊士以外の鬼狩りに鉢合わせることはなかった。
あの山で名前はいくつか得たものがあった。
まず、自分を鬼にし両親を殺した男の名前が『無惨』であること。
次にその無惨がこの近くにはいないであろうこと。
そして、今の自分の力は確実に柱には及ばないであろうこと。
(あの山には私が会った鬼の他に何匹かいた。もちろん他の鬼にも念のため聞き込みをしたかった。でも…。)
名前はあの山での気配を思い出し、身震いをした。
(でも、私は柱の気配におびえた。遠くからでも分かった。私は柱には勝てない。)
あの山での出来事は名前にとって自分の弱さを知る良い機会になった。
強くならなければ無惨は倒せない。
それに、倒す前に鬼狩りに殺されてしまっては元も子もない。
自分を鍛えなければならない、憎しみだけでは目的は達成できない。
名前は改めて自分を叱責した。
(甘い考えではいられない。殺られる前に殺らなければいけない。)
そうして名前は戦うことを決心した。
ずっと避けてきた戦闘という行為を行おうと決めた。
(戦うためには何が必要なの?武器?道場に弟子入り?いやいや、人間じゃないんだから…。)
名前鬼となってから今までの記憶を呼び起こす。
(あ…!)
名前は那田蜘蛛山での白い蜘蛛を思い出した。
(そうか、あの蜘蛛は鬼の能力だ。鬼は何かしらの能力を持つことができる…?
そうだとしたら、私の能力は…?)
――――ー貴様、忌血か…?
(忌血…。確かあの男、私の血を嫌がっていた…?私の血には何か力がある…?)
名前が自分の血に興味を持った時、
べんっ!
琵琶の音がした。
気が付いた時には、知らない空間に来ていた。
天と地があべこべになった館。
周りには誰もいない。
(嘘…さっきまで山の中だったじゃない…。)
名前は動揺が隠し切れなかった。
左右をせわしなく見渡し、自分の立っている場所、周囲にあるものすべて把握しようとした。
べんべん!
しかし再び琵琶の音がして、また場所が変わった。
先ほどと風景はほとんど変わらない。
しかし目の前には、
「久しいな、名前よ。」
噎せ返る血の匂いの中、黒髪を持つ和装の美女が目の前に立っていた。
名前はこの人間に会ったことはなかった。
しかし、その声と気配は間違いなく自分の憎む男であった。
「お前は………。無惨!!」
名前は我を忘れて無惨に飛び掛かった。
冷静な判断はできなかった。
爪を鋭利な刃物のように尖らせ、無惨の首目掛けて腕を伸ばした。
それは名前の中で最速の動きだった。
しかし無惨は少し顔を動かしただけで避けた。
「無駄だ、名前。」
避けられたことで名前は顔から床に突っ込んだが、すぐに体制を立て直して手を床に着き足払いを仕掛ける。
だがそれは無惨には届かない。
その回転の勢いで、立ち上がり再び爪を無惨に向ける。
そして名前の爪が無惨の首に届く直前、無惨が名前の首をつかんだ。
一切無駄のない動きで、まるで赤子の手をひねるかのように名前は動きを封じられたのだ。
それは名前が初めて無惨に会った時、鬼にさせられた時と同じ光景だった。
「貴様の中の、私の血の匂いが薄まっている。何故だ?」
「っく……。」
「あぁすまない。これじゃ話すことができないな。」
どさっと床の上に落とされた。
名前は呼吸を整え、目の前に立つ無惨を睨みつけた。
「以前私の血を与えたとき、確かに貴様の血の匂いは薄まったはず。しかし今はどうだ。また貴様の忌血の匂いが強くなっている。何をした、名前。」
無惨は名前を面白そうに見つめながら聞いた。
笑みを浮かべ、名前を試すかように答えを待っていた。
名前は猫が威嚇するかのような激しい息遣いをしながら、無惨の問いに答えた。
「知らないわ…っ!それに知っていても、お前には絶対に言わない!」
名前の答えに無惨は満足そうに笑った。
「そうか、知らないか。正直者は嫌いではない。私に対して挑発をしたかったようだが、残念ながら私にはすべて筒抜けだ。本当に何も知らないようだ。」
(思考が…読まれている!?)
名前は悔しそうに顔を歪めた。
「それにしても、私の命を奪おうだなんて無謀なことを考えたものだな。そんなに弱い力で何をしようと言うのだ。」
少しずつ名前のもとに無惨が近づいてきた。
「このまま貴様の命を奪ってもいいのだが、少しくらい私の役に立ってから私に挑みに来い。まぁ、それまで生きていられればの話だが。」
(勝てない…。このままでは、私はこいつを殺せない…!悔しい、悔しい!!)
名前の目には悔しさにより涙が浮かんでいた。
目の前の男を殺せる力を、名前は持っていなかった。
名前のその表情を見て、無惨はさらに口角を釣りあげた。
「貴様に構っている時間はないが、貴様の血が私の求めるものになれば、その時は相手をしてやろう。」
無惨がそういった直後、名前の首元に無惨の一部が刺さり、あの夜のように血を注がれた。
名前は再度絶叫し、その場にのたうち回ったが、無惨はもう興味を無くしたらしく名前に背を向けた。
そしてまた琵琶の音がして、名前が目を覚ましたときはもう館も無惨の姿も無く、もといた山の中に戻されていたのだった。