2章
おなまえ
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「不死川さん、何をしていらっしゃるんですか?」
二人の均衡を破るように、しのぶが騒ぎを聞き付けて現れた。
いつもの優しげな笑みは身を潜め、少しだけ険しい顔をして不死川を見つめる。
不死川は名前から目を離し、しのぶに目を向ける。
「胡蝶ォ、一体どういうことだァ?なんで鬼がこの屋敷の中にいる?」
「彼女が我々の協力者だからですよ。」
しのぶが間髪入れずにそう答えたことに、不死川は驚いたをように目を見開いた。
しかしその答えに不満だと言うかのように、眉間のシワの数を増やした。
「オイオイ、頭でも沸いたか?てめェの鬼への恨みはそんなもんじゃねェだろ?」
「…はい、私は鬼を恨んでいます。けれど、名前さんは他の鬼とは違います。」
「………どっかの阿呆と同じこと言ってんなァ。」
不死川は堂々巡りになりそうな会話に、ガシガシと頭をかいて、心底めんどくさそうな表情を浮かべた。
「コイツも人を食わねェってか?だから認めろ?そんなの無理に決まってんだろォ。鬼になっちまった時点で、斬る以外の選択はねェ。」
「不死川さんの言うことはもちろん正論です。しかし、鬼舞辻を倒すための力を持つ者が何の功績も残さずに死ぬことは、我々鬼殺隊にとっては不利益でしかないはずです。禰豆子さんと名前さんは鬼ですが、その力を持っている。それだけで生かす意味があるはずです。」
不死川が名前を斬る理由を並べた分、しのぶは生かす理由を並べ返した。
両者共に知識は豊富で強靭な理性も持ちえているが、医学に通ずるしのぶの弁論には流石の不死川でも勝ち目は無い。
不死川は早々に口論を諦めた。
「…チッ。まぁ俺はてめェに何言われてもコイツを認める気はねェよ。悪ィが俺を説得することは諦めろ。」
そう言うと不死川は自分の腕に刀を突き刺した。
真っ赤な鮮血が不死川の腕を通って地面に落ちた。
その血が雫となって地面に落ちる瞬間、名前のもとにその匂いが届いた。
他の人間の血とは違う芳醇な匂いに、名前の体はふらついた。
(何、これ……?)
ただ単にまだ体調が万全でないから、という理由では無いであろうふらつき具合に、名前は戸惑った。
その様子を見て、不死川はニヤリと笑った。
「まずは、意地汚ねェ食欲を我慢できるのかお手並み拝見だなァ?」
瞬き一つの間に、名前は背後を取られ組み伏せられた。
そしてさらに、ぼたりと右頬に垂らされる血。
その匂いは名前の人間としての理性をどろどろに溶かしていった。
「……ぐっ…」
「あ?どうしたァ?あんなに威勢よかったのによォ?」
名前の上に乗る不死川は余裕そうに笑った。
(これが、珠世さんの言っていた稀血…?)
不死川は、名前の持つ忌血とは正反対の効果がある稀血の持ち主である。
稀血は鬼にとっては猫にマタタビを与えるようなもの。
名前も稀血の魅力から逃れることは出来なかった。
(名前さんは確かに、飢餓状態でもカナヲに噛みつかなかった。相当人間としての自我を強く持っていることは分かっている。けれど不死川さんの持つ稀血は、通常状態の鬼でさえ酩酊する稀血の中の稀血。それはまだ完全に飢餓が治っていない名前さんには恐らく…)
最初こそ不死川を止めようとしたしのぶだったが、名前が稀血をも我慢できるということが証明できれば、名前との協定を認める柱が増えるはずだと思い二人を止めずにいた。
しかし、苦しそうな名前を見てその判断が正しかったのか、しのぶは少しだけ不安に感じた。
(名前さん、乗り越えられますか…?)
「我慢しねェで噛み付いたらどうだ?お前ら鬼の大好物だろォ?」
名前の右頬にさらに血が垂れる。
どろり、と名前の食いしばった口元までその血は垂れ、口を開ければその血を味わうことが出来るだろう。
しかし名前は不死川の稀血に酔いつつも、自我を保ち続けた。
(この血を口にしたら私は戻れなくなる。人間としては生きていけなくなる…!だから絶対に口を開けてはいけない!!)
鬼としての欲求を抑え込み、不死川の思い通りになるものかと名前は唇を強く噛んだ。
稀血への欲に抗い続ける自分の下にいる鬼に、不死川は苛ついていた。
(なかなか噛み付いてこねェ。俺の血を欲しがっているのは分かるが、それを行動に移さねェ。クソ、動いた瞬間斬ってやるのによォ…。)
名前は呻くばかりで、不死川に噛み付くことも逃げ出そうともしない。
すぐにでも決着が着くと思っていた不死川にとってこれは予想外であった。
二人の均衡を破るように、しのぶが騒ぎを聞き付けて現れた。
いつもの優しげな笑みは身を潜め、少しだけ険しい顔をして不死川を見つめる。
不死川は名前から目を離し、しのぶに目を向ける。
「胡蝶ォ、一体どういうことだァ?なんで鬼がこの屋敷の中にいる?」
「彼女が我々の協力者だからですよ。」
しのぶが間髪入れずにそう答えたことに、不死川は驚いたをように目を見開いた。
しかしその答えに不満だと言うかのように、眉間のシワの数を増やした。
「オイオイ、頭でも沸いたか?てめェの鬼への恨みはそんなもんじゃねェだろ?」
「…はい、私は鬼を恨んでいます。けれど、名前さんは他の鬼とは違います。」
「………どっかの阿呆と同じこと言ってんなァ。」
不死川は堂々巡りになりそうな会話に、ガシガシと頭をかいて、心底めんどくさそうな表情を浮かべた。
「コイツも人を食わねェってか?だから認めろ?そんなの無理に決まってんだろォ。鬼になっちまった時点で、斬る以外の選択はねェ。」
「不死川さんの言うことはもちろん正論です。しかし、鬼舞辻を倒すための力を持つ者が何の功績も残さずに死ぬことは、我々鬼殺隊にとっては不利益でしかないはずです。禰豆子さんと名前さんは鬼ですが、その力を持っている。それだけで生かす意味があるはずです。」
不死川が名前を斬る理由を並べた分、しのぶは生かす理由を並べ返した。
両者共に知識は豊富で強靭な理性も持ちえているが、医学に通ずるしのぶの弁論には流石の不死川でも勝ち目は無い。
不死川は早々に口論を諦めた。
「…チッ。まぁ俺はてめェに何言われてもコイツを認める気はねェよ。悪ィが俺を説得することは諦めろ。」
そう言うと不死川は自分の腕に刀を突き刺した。
真っ赤な鮮血が不死川の腕を通って地面に落ちた。
その血が雫となって地面に落ちる瞬間、名前のもとにその匂いが届いた。
他の人間の血とは違う芳醇な匂いに、名前の体はふらついた。
(何、これ……?)
ただ単にまだ体調が万全でないから、という理由では無いであろうふらつき具合に、名前は戸惑った。
その様子を見て、不死川はニヤリと笑った。
「まずは、意地汚ねェ食欲を我慢できるのかお手並み拝見だなァ?」
瞬き一つの間に、名前は背後を取られ組み伏せられた。
そしてさらに、ぼたりと右頬に垂らされる血。
その匂いは名前の人間としての理性をどろどろに溶かしていった。
「……ぐっ…」
「あ?どうしたァ?あんなに威勢よかったのによォ?」
名前の上に乗る不死川は余裕そうに笑った。
(これが、珠世さんの言っていた稀血…?)
不死川は、名前の持つ忌血とは正反対の効果がある稀血の持ち主である。
稀血は鬼にとっては猫にマタタビを与えるようなもの。
名前も稀血の魅力から逃れることは出来なかった。
(名前さんは確かに、飢餓状態でもカナヲに噛みつかなかった。相当人間としての自我を強く持っていることは分かっている。けれど不死川さんの持つ稀血は、通常状態の鬼でさえ酩酊する稀血の中の稀血。それはまだ完全に飢餓が治っていない名前さんには恐らく…)
最初こそ不死川を止めようとしたしのぶだったが、名前が稀血をも我慢できるということが証明できれば、名前との協定を認める柱が増えるはずだと思い二人を止めずにいた。
しかし、苦しそうな名前を見てその判断が正しかったのか、しのぶは少しだけ不安に感じた。
(名前さん、乗り越えられますか…?)
「我慢しねェで噛み付いたらどうだ?お前ら鬼の大好物だろォ?」
名前の右頬にさらに血が垂れる。
どろり、と名前の食いしばった口元までその血は垂れ、口を開ければその血を味わうことが出来るだろう。
しかし名前は不死川の稀血に酔いつつも、自我を保ち続けた。
(この血を口にしたら私は戻れなくなる。人間としては生きていけなくなる…!だから絶対に口を開けてはいけない!!)
鬼としての欲求を抑え込み、不死川の思い通りになるものかと名前は唇を強く噛んだ。
稀血への欲に抗い続ける自分の下にいる鬼に、不死川は苛ついていた。
(なかなか噛み付いてこねェ。俺の血を欲しがっているのは分かるが、それを行動に移さねェ。クソ、動いた瞬間斬ってやるのによォ…。)
名前は呻くばかりで、不死川に噛み付くことも逃げ出そうともしない。
すぐにでも決着が着くと思っていた不死川にとってこれは予想外であった。