2章
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
屋敷から離れ、名前は一息ついていた。
(確か、女性の柱が今後のことを話してくれるんだったよね。あの人、優しそうだったけど…。
鬼に対する相当な恨みを感じた。協定にちゃんと従ってくれるのかな。)
名前はまだ暗い夜空を見上げながら呟いた。
「大丈夫かなぁ…。」
「何がですか?」
「うわっ!」
急に声をかけられ、大声を上げて飛び退くと、背後に名前が思い出していた柱張本人がいた。
胡蝶はにこりと笑いながら名前に向き合っていた。
「先程は乱暴な真似をしてすみませんでした。もうあのようなことはしないので、安心してくださいね。」
胡蝶は刀を構える素振りなど見せず、両手を広げて名前を安心させるように笑った。
「ご挨拶が遅れてしまいましたね。私は鬼殺隊蟲柱、胡蝶しのぶと申します。よろしくお願いします。」
「は、はい…。ご存知かと思いますが私は名前です。」
「はい、お名前と鬼になってからの若干の経緯は知っています。ただそれは人づてで聞いたまでです。ですのでまずは、貴女のことについて色々と教えていただけないですか?」
胡蝶は美しい顔をこてんと傾け、お願いするように言った。
名前はもちろん快諾し、夜が明けるまで胡蝶と話し続けた。
「色々とお話いただきありがとうございました。整理も兼ねて、聞いたお話をまとめさせていただいても良いですか?」
「はい、私も確認したいのでお願いします。」
夜が明けてきたため、近くの藤の花の家紋の家に移動し、胡蝶はゆっくりと話し始めた。
「まず、名前さんは人間の時ご両親と暮らす家で鬼舞辻に襲われた。ご両親は亡くなってしまいましたが、名前さんは忌血を持っており、そのおかげで殺されなかったものの、そのせいで鬼にされてしまった。」
「はい。」
鬼になるまでの経緯を確認し、胡蝶はなるほど、と相槌をうった。
「確かに忌血は古くから言い伝えがありました。しかし文書として残っている数は少なくて、迷信じゃないかと言われているんです。それがまさか、目の前に存在していること自体驚きですね…。」
胡蝶の話に、名前は自身が相当特殊な血を持っているんだなと改めて実感した。
(この血が私を何度も守ってくれたものであると同時に、私が鬼となった原因なんだよね…。)
名前はじっと手首のあたりを見つめた。
その様子を胡蝶は観察しながらも、話を続けた。
「鬼になった後はいくつかの町村をさまよいながら生きながらえていた。しかしとある町で我慢できず人間を食べたんですね。」
胡蝶の雰囲気が少しだけ鋭くなり、名前が触れたくない事実を突きつけられる。
名前はぐっと唇を噛みつつも、その事実に頷いた。
「何人食べました?」
胡蝶は名前が聞かれたくないであろう質問をした。
名前の表情は一気に強張り、ずっと合い続けていた視線が外れた。
(ここまで話してみて思うのは、名前さんはほとんど人間に近い。考え方や仕草に鬼らしさが無い。ただ問題なのは、人を食べたということ…。こんなに人間らしいのに、食欲という本能には勝てないのでしょうか。)
名前は胡蝶の質問にすぐに答えることができなかった。
人間としての尊厳を持って生き続ける名前が人を食べたことは、消すことの出来ない過ちであると同時に、紛れもない事実であった。
視線をさまよわせ、胡蝶の目を見れずに名前は答えた。
「……さ、三人、です。」
必死に絞り出した声で答えた名前に対して、胡蝶は顔色一つ変えずにふむ、と少し考え込んでいた。
(三人…。死体の場合そんなに栄養価は高くないはず。それにも関わらず名前さんは血気術を使用するほど能力が高い。何か他に要因があるはずですね。)
名前の表情は暗く、自身の犯した過ちに自己嫌悪しているようだった。
胡蝶は決して名前を責めている訳では無い。
鬼への恨みを抱えつつも、自身の姉であるカナエの夢、鬼と仲良くすることを本人もいつか叶えたいと思っている。
だからこそ、禰豆子や名前とは分かり合うことを望んでいるのだ。
胡蝶はくすりと笑い、名前の背中をぽんぽんと叩いた。
「そんな顔しないでください。人を食べたことは確かに罪です。ただ、食欲があることは人間も鬼も変わりません。鬼になってしまったばっかりに、それが人間になってしまっただけです。」
名前はゆっくりと顔を上げ、胡蝶のことを見つめた。
初めて会った時のような安心させるような笑顔を浮かべ、胡蝶は続けた。
「名前さん。貴女を研究することできっと鬼舞辻を倒すための何かが見つかるはずです。どうか、私の研究に力を貸してください。」
胡蝶の言葉に、名前は気持ちを奮い立たせた。
(そうだ、過去は変えられない。鬼の私ができることなら何だって協力して、私が食べてしまった人達のためにも無惨を倒すんだ…!)
「…っもちろんです!よろしくお願いします!」
名前は深々と胡蝶に頭を下げた。
その様子に胡蝶は一瞬驚いたように目を見開くも、すぐに楽しそうな笑顔に表情を変えた。
「うん、やる気があって何よりです。こちらこそよろしくお願いします。」
胡蝶もぺこり、と頭を下げた。
そして顔を上げた時、心底楽しそうな笑顔を浮かべてこう言い放った。
「さて、名前さん。そうは言っても、罪は償わなければいけませんね。貴女は三人の人間を食べてしまっていますので、三回研究も兼ねた拷問をさせていただきます。一緒に頑張りましょうね!」
キラキラした表情の胡蝶を、名前は止めることは出来なかった。
(確か、女性の柱が今後のことを話してくれるんだったよね。あの人、優しそうだったけど…。
鬼に対する相当な恨みを感じた。協定にちゃんと従ってくれるのかな。)
名前はまだ暗い夜空を見上げながら呟いた。
「大丈夫かなぁ…。」
「何がですか?」
「うわっ!」
急に声をかけられ、大声を上げて飛び退くと、背後に名前が思い出していた柱張本人がいた。
胡蝶はにこりと笑いながら名前に向き合っていた。
「先程は乱暴な真似をしてすみませんでした。もうあのようなことはしないので、安心してくださいね。」
胡蝶は刀を構える素振りなど見せず、両手を広げて名前を安心させるように笑った。
「ご挨拶が遅れてしまいましたね。私は鬼殺隊蟲柱、胡蝶しのぶと申します。よろしくお願いします。」
「は、はい…。ご存知かと思いますが私は名前です。」
「はい、お名前と鬼になってからの若干の経緯は知っています。ただそれは人づてで聞いたまでです。ですのでまずは、貴女のことについて色々と教えていただけないですか?」
胡蝶は美しい顔をこてんと傾け、お願いするように言った。
名前はもちろん快諾し、夜が明けるまで胡蝶と話し続けた。
「色々とお話いただきありがとうございました。整理も兼ねて、聞いたお話をまとめさせていただいても良いですか?」
「はい、私も確認したいのでお願いします。」
夜が明けてきたため、近くの藤の花の家紋の家に移動し、胡蝶はゆっくりと話し始めた。
「まず、名前さんは人間の時ご両親と暮らす家で鬼舞辻に襲われた。ご両親は亡くなってしまいましたが、名前さんは忌血を持っており、そのおかげで殺されなかったものの、そのせいで鬼にされてしまった。」
「はい。」
鬼になるまでの経緯を確認し、胡蝶はなるほど、と相槌をうった。
「確かに忌血は古くから言い伝えがありました。しかし文書として残っている数は少なくて、迷信じゃないかと言われているんです。それがまさか、目の前に存在していること自体驚きですね…。」
胡蝶の話に、名前は自身が相当特殊な血を持っているんだなと改めて実感した。
(この血が私を何度も守ってくれたものであると同時に、私が鬼となった原因なんだよね…。)
名前はじっと手首のあたりを見つめた。
その様子を胡蝶は観察しながらも、話を続けた。
「鬼になった後はいくつかの町村をさまよいながら生きながらえていた。しかしとある町で我慢できず人間を食べたんですね。」
胡蝶の雰囲気が少しだけ鋭くなり、名前が触れたくない事実を突きつけられる。
名前はぐっと唇を噛みつつも、その事実に頷いた。
「何人食べました?」
胡蝶は名前が聞かれたくないであろう質問をした。
名前の表情は一気に強張り、ずっと合い続けていた視線が外れた。
(ここまで話してみて思うのは、名前さんはほとんど人間に近い。考え方や仕草に鬼らしさが無い。ただ問題なのは、人を食べたということ…。こんなに人間らしいのに、食欲という本能には勝てないのでしょうか。)
名前は胡蝶の質問にすぐに答えることができなかった。
人間としての尊厳を持って生き続ける名前が人を食べたことは、消すことの出来ない過ちであると同時に、紛れもない事実であった。
視線をさまよわせ、胡蝶の目を見れずに名前は答えた。
「……さ、三人、です。」
必死に絞り出した声で答えた名前に対して、胡蝶は顔色一つ変えずにふむ、と少し考え込んでいた。
(三人…。死体の場合そんなに栄養価は高くないはず。それにも関わらず名前さんは血気術を使用するほど能力が高い。何か他に要因があるはずですね。)
名前の表情は暗く、自身の犯した過ちに自己嫌悪しているようだった。
胡蝶は決して名前を責めている訳では無い。
鬼への恨みを抱えつつも、自身の姉であるカナエの夢、鬼と仲良くすることを本人もいつか叶えたいと思っている。
だからこそ、禰豆子や名前とは分かり合うことを望んでいるのだ。
胡蝶はくすりと笑い、名前の背中をぽんぽんと叩いた。
「そんな顔しないでください。人を食べたことは確かに罪です。ただ、食欲があることは人間も鬼も変わりません。鬼になってしまったばっかりに、それが人間になってしまっただけです。」
名前はゆっくりと顔を上げ、胡蝶のことを見つめた。
初めて会った時のような安心させるような笑顔を浮かべ、胡蝶は続けた。
「名前さん。貴女を研究することできっと鬼舞辻を倒すための何かが見つかるはずです。どうか、私の研究に力を貸してください。」
胡蝶の言葉に、名前は気持ちを奮い立たせた。
(そうだ、過去は変えられない。鬼の私ができることなら何だって協力して、私が食べてしまった人達のためにも無惨を倒すんだ…!)
「…っもちろんです!よろしくお願いします!」
名前は深々と胡蝶に頭を下げた。
その様子に胡蝶は一瞬驚いたように目を見開くも、すぐに楽しそうな笑顔に表情を変えた。
「うん、やる気があって何よりです。こちらこそよろしくお願いします。」
胡蝶もぺこり、と頭を下げた。
そして顔を上げた時、心底楽しそうな笑顔を浮かべてこう言い放った。
「さて、名前さん。そうは言っても、罪は償わなければいけませんね。貴女は三人の人間を食べてしまっていますので、三回研究も兼ねた拷問をさせていただきます。一緒に頑張りましょうね!」
キラキラした表情の胡蝶を、名前は止めることは出来なかった。