2章
おなまえ
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名前が目を覚ますと、藤の花の強い匂いが名前を襲った。
苦しい、と思いながらも自身の忌血の匂いに慣れたこともあり、体が上手く動かせない状態ではあるがどうにか意識を保つことが出来た。
「あら?やはり貴女は藤の花の匂いに慣れていらっしゃるんですね。」
綺麗な女性の声が自身の左側から聞こえたかと思うと、変わった刀身の刀を頚元に当てられた。
その正体を見ようと顔を動かそうとすると、今度は逆側から刀を当てられた。
「動くな。」
静かな男性の声だった。
その声と同時に名前はぴたりと動くのを止めた。
(一体、どうなっている?)
名前は現在拘束されたままうつ伏せに倒れ、頚には二本の刀を当てられている。
目の前には大きな屋敷があり、その屋敷内の立派な庭の中に名前はいた。
そして自身の右側には男性、左側には女性がいることしか今はわからなかった。
「冨岡さん。この方は今のところ何もしていないんですから、貴方まで刀を抜かなくて良いですよ。何かあれば私の方で処理しますので。」
「………。」
「それとも私では対応しきれないとでも?」
「………。」
「何か仰ってくださいよ。」
自身の頭上で女性の声がする。
(ここはどこ…?確か宇髄さんに助けられたあと、別の柱に拘束されて…。それでここに連れてこられてきた…?)
名前が記憶を辿っていると女性がそれを察したのか説明してくれた。
「こんばんは、鬼のお嬢さん。ここまでのこと覚えてらっしゃいますか?貴女は伊黒さんに拘束されてここに連れてこられています。ここは鬼殺隊の本拠地です。貴女からお話を聞くために私達はここに居るんですよ。」
優しい声でそう言ってくれたが、名前はその女性からは鬼に対する憎しみの感情を強く感じた。
その感情に名前は萎縮と同時に、自信の持つ憎しみの感情と似たものを感じた。
(鬼に、大切な生きがいを奪われたのだろうか。)
名前は女性の声を聞きながら思った。
女性へ話しかけようと思ったその時、子供の声が聞こえた。
「「お館様の御成です。」」
揃った二つの声の後、両側に立つ二人が膝を着いた。
「こんばんは、義勇、しのぶ。夜分に呼び出して申し訳ない。」
「とんでもございません。お館様のお言葉を頂戴できることが我々の幸せでごさいます。」
「ありがとう、しのぶ。」
名前が初めて聞くこの声は、鬼殺隊の長である産屋敷耀哉のもの。
柱を初めとする隊員たちからはお館様と呼ばれる存在である。
名前は刀が頚元から無くなったことで少しだけ顔を動かすことができ、その声の主を目視することができた。
(この人が、鬼殺隊の長…!)
体が弱いのか、横にいる女性に支えられた状態で立っていた。
その表情は穏やかで、名前を優しく見つめていた。
「初めまして、名前。私は産屋敷耀哉。君のことは少し前から知っていたんだ。直接会えて嬉しいよ。」
名前はその穏やかな声に敬意を示すように顔を伏せた。
その様子に耀哉はにこり、と笑った。
「小芭内にやられた傷は痛むかい?」
「い、いえ…大丈夫です…。」
「良かった。」
耀哉の問いに戸惑いつつも名前は答えた。
(この人の声、すごく不思議…。何だかふわふわする…。)
耀哉はうん、と頷くと本題を話し始めた。
「今日はね、名前のことが知りたくてここに来てもらったんだ。君は無惨の呪いを解き放ち、自らの意思で鬼と戦っているね。名前の目的は何なのかな。」
「わ…私は、無惨に肉親を殺され、さらに自分を鬼にしたことを恨んでいます…。無惨をこの手で倒すことが私の生きる目的です。」
「そうか…。私の子供達と同じ目的だね。」
耀哉の言葉に、名前はぱっと顔を上げその目を見つめた。
「名前、君と協定を結びたい。君が鬼殺隊と同じ気持ちで戦っているのを私は知っているよ。杏寿郎や天元のことを命をかけて守ろうとしたり、炭治郎たちと共に己の力を高めあっているね。その様子を度々耳にしたんだ。だから君に会ってみたいと思ったんだよ。」
名前はじっと耀哉を見つめながら話を聞いていた。
「それに、君は杏寿郎の意思を継ごうとしてくれているね。鬼でありながらも人間としての誇りを失うことなく生きている。きっと杏寿郎も喜んでくれているよ。」
耀哉の言葉に名前は目が潤んだ。
死んでいった煉獄へ、恥じるような生き方はしたくないと思ってここまで戦ってきたが、誰かにその生き方を認められるとは思っていなかった。
ましてや、それを杏寿郎が誇りを持っていた鬼殺隊の長が認めるなんて名前は思ってもみなかった。
「…ありがとう、ございます……。」
心からの感謝を述べ、名前は涙を流した。
苦しい、と思いながらも自身の忌血の匂いに慣れたこともあり、体が上手く動かせない状態ではあるがどうにか意識を保つことが出来た。
「あら?やはり貴女は藤の花の匂いに慣れていらっしゃるんですね。」
綺麗な女性の声が自身の左側から聞こえたかと思うと、変わった刀身の刀を頚元に当てられた。
その正体を見ようと顔を動かそうとすると、今度は逆側から刀を当てられた。
「動くな。」
静かな男性の声だった。
その声と同時に名前はぴたりと動くのを止めた。
(一体、どうなっている?)
名前は現在拘束されたままうつ伏せに倒れ、頚には二本の刀を当てられている。
目の前には大きな屋敷があり、その屋敷内の立派な庭の中に名前はいた。
そして自身の右側には男性、左側には女性がいることしか今はわからなかった。
「冨岡さん。この方は今のところ何もしていないんですから、貴方まで刀を抜かなくて良いですよ。何かあれば私の方で処理しますので。」
「………。」
「それとも私では対応しきれないとでも?」
「………。」
「何か仰ってくださいよ。」
自身の頭上で女性の声がする。
(ここはどこ…?確か宇髄さんに助けられたあと、別の柱に拘束されて…。それでここに連れてこられてきた…?)
名前が記憶を辿っていると女性がそれを察したのか説明してくれた。
「こんばんは、鬼のお嬢さん。ここまでのこと覚えてらっしゃいますか?貴女は伊黒さんに拘束されてここに連れてこられています。ここは鬼殺隊の本拠地です。貴女からお話を聞くために私達はここに居るんですよ。」
優しい声でそう言ってくれたが、名前はその女性からは鬼に対する憎しみの感情を強く感じた。
その感情に名前は萎縮と同時に、自信の持つ憎しみの感情と似たものを感じた。
(鬼に、大切な生きがいを奪われたのだろうか。)
名前は女性の声を聞きながら思った。
女性へ話しかけようと思ったその時、子供の声が聞こえた。
「「お館様の御成です。」」
揃った二つの声の後、両側に立つ二人が膝を着いた。
「こんばんは、義勇、しのぶ。夜分に呼び出して申し訳ない。」
「とんでもございません。お館様のお言葉を頂戴できることが我々の幸せでごさいます。」
「ありがとう、しのぶ。」
名前が初めて聞くこの声は、鬼殺隊の長である産屋敷耀哉のもの。
柱を初めとする隊員たちからはお館様と呼ばれる存在である。
名前は刀が頚元から無くなったことで少しだけ顔を動かすことができ、その声の主を目視することができた。
(この人が、鬼殺隊の長…!)
体が弱いのか、横にいる女性に支えられた状態で立っていた。
その表情は穏やかで、名前を優しく見つめていた。
「初めまして、名前。私は産屋敷耀哉。君のことは少し前から知っていたんだ。直接会えて嬉しいよ。」
名前はその穏やかな声に敬意を示すように顔を伏せた。
その様子に耀哉はにこり、と笑った。
「小芭内にやられた傷は痛むかい?」
「い、いえ…大丈夫です…。」
「良かった。」
耀哉の問いに戸惑いつつも名前は答えた。
(この人の声、すごく不思議…。何だかふわふわする…。)
耀哉はうん、と頷くと本題を話し始めた。
「今日はね、名前のことが知りたくてここに来てもらったんだ。君は無惨の呪いを解き放ち、自らの意思で鬼と戦っているね。名前の目的は何なのかな。」
「わ…私は、無惨に肉親を殺され、さらに自分を鬼にしたことを恨んでいます…。無惨をこの手で倒すことが私の生きる目的です。」
「そうか…。私の子供達と同じ目的だね。」
耀哉の言葉に、名前はぱっと顔を上げその目を見つめた。
「名前、君と協定を結びたい。君が鬼殺隊と同じ気持ちで戦っているのを私は知っているよ。杏寿郎や天元のことを命をかけて守ろうとしたり、炭治郎たちと共に己の力を高めあっているね。その様子を度々耳にしたんだ。だから君に会ってみたいと思ったんだよ。」
名前はじっと耀哉を見つめながら話を聞いていた。
「それに、君は杏寿郎の意思を継ごうとしてくれているね。鬼でありながらも人間としての誇りを失うことなく生きている。きっと杏寿郎も喜んでくれているよ。」
耀哉の言葉に名前は目が潤んだ。
死んでいった煉獄へ、恥じるような生き方はしたくないと思ってここまで戦ってきたが、誰かにその生き方を認められるとは思っていなかった。
ましてや、それを杏寿郎が誇りを持っていた鬼殺隊の長が認めるなんて名前は思ってもみなかった。
「…ありがとう、ございます……。」
心からの感謝を述べ、名前は涙を流した。