2章
おなまえ
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「お祖母様!」
「おや、名前。どうしたの?」
「珍しく縁側にいらっしゃってたから、何されてるのかなって思って!」
幼い頃の名前が、祖母へ駆け寄った。
祖母はにこりと笑って名前を隣に座らせた。
「掃除していたら昔のものが出てきてねぇ。ちょっと思い出していたんだよ。」
祖母の手の中には、二つの小さな巾着があった。
一つは綺麗な紫色の巾着で、もう一つは薄汚れた赤い巾着だった。
「お祖母様、それは何ですか?」
名前は祖母の手の中のものに興味津々だった。
見たことの無いものだった。
「これはね、匂い袋っていうのよ。良い香りのする巾着なの。ほら、名前も嗅いでごらん。」
祖母が差し出した紫色の巾着に、名前は鼻を近づけくんくんと匂いを嗅ぐ。
とても良い花の匂いが名前の鼻腔をくすぐった。
名前はぱぁっと笑顔になり、祖母を見た。
「いい匂い!」
「そうでしょう。藤の花の匂いなのよ。」
祖母は名前の反応が嬉しかったようで、さらににこにこした。
貰い物なのよ、と大事そうに抱える祖母に、名前は疑問を投げかけた。
「お祖母様、もう一個も匂い袋なんですか?そちらの匂いも嗅ぎたいです!」
名前のその言葉に祖母は一瞬固まり、嬉しそうな笑顔から悲しげな表情に変わった。
そして、ぎゅっと赤い巾着を握った。
「…こっちも匂い袋なんだけど、良い匂いはしないのよ。悪いやつを追い払うお守りが入っているの。」
祖母の表情の変化に名前は気づかないまま、ふぅんと相槌をうつ。
そっちの匂いも嗅ぎたいな、と名前はぼんやり思いながら、黙り込んでしまった祖母の横で庭を眺めた。
しばらくすると祖母が名前に語りかけた。
「名前。父と母の言うことをちゃんと聞くのよ。」
「え…はい。聞いておりますよ。」
「できる限り、外には出てはいけませんよ。それだけは絶対に守って頂戴ね。」
祖母は名前の目を真っ直ぐに見つめながら言った。
そして二つの巾着を名前に渡した。
「もう私が持っていてもしょうがないから、これは名前にあげるわ。大切に持っているのよ。」
祖母は真剣な表情から一転し、いつもの優しい表情に戻っていた。
その後、部屋に戻った名前は祖母がその場で見せてくれなかった赤い巾着の中身を取り出した。
「なにこれ?」
それは真っ赤な液体が入った小瓶だった。
小瓶の蓋は蝋でしっかりとめられていて、開けることは叶わなかった。
名前はじっと見つめたが、なんなのかは全く分からなかったので、そのまま巾着にしまって放っておいた。
今思えば、祖母はよく鬼の話をしていた。
名前はいつも作り話だと思って真剣には聞いていなかった。
だが、鬼の存在を知ってから考えると祖母が持っていた理由には納得がいく。
藤の花の匂い袋は鬼避けのために持っていたのだろう。
そして、赤い巾着の中身はおそらく忌血だ。
どちらも鬼が嫌がるものだ。
何故祖母がそれを持っていたのか、誰から貰ったものなのか、何故名前に渡したのかは、分からないままだ。
この記憶を何故この状況で思い出したのか分からない。
ただ名前は、あの二つの巾着がどこにいってしまったのか気になった。
ゆっくりと目を開けると、暗い空が見えた。
手も足も動かせない。
視界も左側しか動かせない。
自分がどうなっているのか名前にはさっぱりだった。
(随分昔の夢をみていた…。お祖母様のこと、すっかり忘れちゃってたな…。)
名前は先程まで見ていた夢をぼうっと思い返しながら、ゆっくりと息を吐いた。
(皆のこと、守れたのかな。ここまで私の体が駄目になってるってことは、きちんと血気術が発動したんだと思うけど…。)
妓夫太郎の最後の攻撃から身を守るため、名前は血気術 藤衣・打掛を発動させた。
戦いの中で作り出した新たな術にも関わらず、炭治郎、善逸、伊之助、宇髄はもちろん三人の女性にも術をかけた。
過去最大の術となり、それは名前の体を蝕んだ。
その結果、元々焼け焦げていた左腕と右腹だけでなく、右足と左頭部にも焼け焦げが広がり、もう人の原型をとどめていなかった。
このまま人間の血肉を取らなければ、名前は消失する。
自身の術の影響で消失せずとも、もう動けない名前は日光に晒されてそのまま消えるだろう。
(ちゃんと、守れていますように…。)
皆を守れているなら、名前に後悔はなかった。
最後まで人として生きることができた、と名前は思うのだ。
残っている左目をゆっくりと閉じ、意識を手放そうとしたその時、
「派手にやられてんな、大丈夫か?」
再び目を開けると、横に宇髄が座り込んでいた。
「おや、名前。どうしたの?」
「珍しく縁側にいらっしゃってたから、何されてるのかなって思って!」
幼い頃の名前が、祖母へ駆け寄った。
祖母はにこりと笑って名前を隣に座らせた。
「掃除していたら昔のものが出てきてねぇ。ちょっと思い出していたんだよ。」
祖母の手の中には、二つの小さな巾着があった。
一つは綺麗な紫色の巾着で、もう一つは薄汚れた赤い巾着だった。
「お祖母様、それは何ですか?」
名前は祖母の手の中のものに興味津々だった。
見たことの無いものだった。
「これはね、匂い袋っていうのよ。良い香りのする巾着なの。ほら、名前も嗅いでごらん。」
祖母が差し出した紫色の巾着に、名前は鼻を近づけくんくんと匂いを嗅ぐ。
とても良い花の匂いが名前の鼻腔をくすぐった。
名前はぱぁっと笑顔になり、祖母を見た。
「いい匂い!」
「そうでしょう。藤の花の匂いなのよ。」
祖母は名前の反応が嬉しかったようで、さらににこにこした。
貰い物なのよ、と大事そうに抱える祖母に、名前は疑問を投げかけた。
「お祖母様、もう一個も匂い袋なんですか?そちらの匂いも嗅ぎたいです!」
名前のその言葉に祖母は一瞬固まり、嬉しそうな笑顔から悲しげな表情に変わった。
そして、ぎゅっと赤い巾着を握った。
「…こっちも匂い袋なんだけど、良い匂いはしないのよ。悪いやつを追い払うお守りが入っているの。」
祖母の表情の変化に名前は気づかないまま、ふぅんと相槌をうつ。
そっちの匂いも嗅ぎたいな、と名前はぼんやり思いながら、黙り込んでしまった祖母の横で庭を眺めた。
しばらくすると祖母が名前に語りかけた。
「名前。父と母の言うことをちゃんと聞くのよ。」
「え…はい。聞いておりますよ。」
「できる限り、外には出てはいけませんよ。それだけは絶対に守って頂戴ね。」
祖母は名前の目を真っ直ぐに見つめながら言った。
そして二つの巾着を名前に渡した。
「もう私が持っていてもしょうがないから、これは名前にあげるわ。大切に持っているのよ。」
祖母は真剣な表情から一転し、いつもの優しい表情に戻っていた。
その後、部屋に戻った名前は祖母がその場で見せてくれなかった赤い巾着の中身を取り出した。
「なにこれ?」
それは真っ赤な液体が入った小瓶だった。
小瓶の蓋は蝋でしっかりとめられていて、開けることは叶わなかった。
名前はじっと見つめたが、なんなのかは全く分からなかったので、そのまま巾着にしまって放っておいた。
今思えば、祖母はよく鬼の話をしていた。
名前はいつも作り話だと思って真剣には聞いていなかった。
だが、鬼の存在を知ってから考えると祖母が持っていた理由には納得がいく。
藤の花の匂い袋は鬼避けのために持っていたのだろう。
そして、赤い巾着の中身はおそらく忌血だ。
どちらも鬼が嫌がるものだ。
何故祖母がそれを持っていたのか、誰から貰ったものなのか、何故名前に渡したのかは、分からないままだ。
この記憶を何故この状況で思い出したのか分からない。
ただ名前は、あの二つの巾着がどこにいってしまったのか気になった。
ゆっくりと目を開けると、暗い空が見えた。
手も足も動かせない。
視界も左側しか動かせない。
自分がどうなっているのか名前にはさっぱりだった。
(随分昔の夢をみていた…。お祖母様のこと、すっかり忘れちゃってたな…。)
名前は先程まで見ていた夢をぼうっと思い返しながら、ゆっくりと息を吐いた。
(皆のこと、守れたのかな。ここまで私の体が駄目になってるってことは、きちんと血気術が発動したんだと思うけど…。)
妓夫太郎の最後の攻撃から身を守るため、名前は血気術 藤衣・打掛を発動させた。
戦いの中で作り出した新たな術にも関わらず、炭治郎、善逸、伊之助、宇髄はもちろん三人の女性にも術をかけた。
過去最大の術となり、それは名前の体を蝕んだ。
その結果、元々焼け焦げていた左腕と右腹だけでなく、右足と左頭部にも焼け焦げが広がり、もう人の原型をとどめていなかった。
このまま人間の血肉を取らなければ、名前は消失する。
自身の術の影響で消失せずとも、もう動けない名前は日光に晒されてそのまま消えるだろう。
(ちゃんと、守れていますように…。)
皆を守れているなら、名前に後悔はなかった。
最後まで人として生きることができた、と名前は思うのだ。
残っている左目をゆっくりと閉じ、意識を手放そうとしたその時、
「派手にやられてんな、大丈夫か?」
再び目を開けると、横に宇髄が座り込んでいた。