2章
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あんた、特別美人ってわけじゃないけど所作が綺麗で品がいいねぇ。どこで習ってきたんだい?」
「昔、母に教えて貰って…。」
「そうかい。なのにここに売られてくるなんて苦労してるねぇ。」
ときと屋の女将に連れられ、名前は室内を案内されていた。
「うちの一番人気が、これから会ってもらう鯉夏なんだ。今日で店を出ちまうんだけど、あんたに会ったら少しは安心してくれるかもしれないねぇ。」
女将が訪ねたのは、おそらくこの店で一番広い部屋だった。
「鯉夏、ちょっといいかい。」
「はい、女将さん。」
すっと襖を開けると、美人で人の良い笑顔をした遊女がいた。
「名前、うちで一番の遊女の鯉夏よ。」
鯉夏を前に、名前は深く頭を下げた。
「お初にお目にかかります、鯉夏花魁。名前と申します。」
「顔を上げて頂戴。そんなに私を敬う必要なんてないのよ。」
その言葉に顔を上げると、鯉夏は優しい笑顔で名前を見つめていた。
「初めまして、名前ちゃん。私は鯉夏と申します。私は今日ここを出てしまうけれど最後に会えて良かったわ。」
「鯉夏程になるかはわからないけど、名前も入ったしあんたは安心してここを出なさいね。」
「ありがとう、女将さん。」
その後、女将は忙しいと言って部屋を出ていった。
鯉夏は名前を近くまで呼び、お菓子を与えてくれた。
「名前ちゃん、すごく目が綺麗ね。」
お菓子を受け取る時、鯉夏がじっと名前の目を見て言った。
(なんだか、炭ちゃんの目に似ている気がする。)
鯉夏は直前までここにいた炭治郎の目を思い出していた。
名前の目は、先程男性の格好で現れた炭治郎と同じ、覚悟のある目をしていた。
そんな名前の目を見て、鯉夏は何故か安心した。
「名前ちゃんらしく、これからも生きてね。」
「え…?」
にっこりと微笑んだ鯉夏に、名前はその言葉の意味を尋ねようとした時後ろの襖が開いた。
「鬼の気配がすると思ったら…。何?アンタひとの獲物狙ってんじゃないわよ。」
名前と鯉夏が振り向くと、そこにはおどろおどろしい気配を出しながら不機嫌そうにこちらを睨みつける鬼がいた。
鯉夏はひっ、と小さく悲鳴をあげ、名前は目を見開いた。
「忘れないように食っておかないと、アンタは今夜までしかいないから。ねぇ、鯉夏。」
名前は瞬時に腕を引っ掻き、藤衣を発動させた。
その判断は正しく、無数の帯が鯉夏に襲いかかろうとしていた。
名前の藤衣が目の前の鬼の攻撃を弾いたのだった。
攻撃を仕掛けた鬼、上弦の陸 堕姫は自身の攻撃が弾かれたことに眉をひそめた。
(攻撃を防がれた…?)
ミミズのように蠢く帯で、何度も何度も鯉夏を狙うものの、尽く弾かれてしまう。
それどころか、鯉夏を庇うように立つ名前を狙っても同じように弾かれてしまうことに、堕姫は段々と腹立たしくなってきた。
「なんなのアンタのその能力!?どうしてアタシの帯が当たらないの!?」
名前は息を荒くしながら、堕姫を睨みつける。
「貴女、上弦の鬼なのね。聞きたいことがあるんだけど。」
「そんなことよりアタシの問いに答えなさいよ!!」
さらに攻撃は激しくなり、名前は少しずつ防ぎきれなくなってきていた。
名前の頬から血が流れ出す。
忌血の匂いが、名前の周囲を漂う。
(鯉夏さんを守りながらだと、自分への守りが疎かになる…!どうにかして、この場から離れてもらわないと…。)
ちらりと鯉夏を見ると、初めて見る鬼の存在に言葉を失っているようだった。
堕姫は不快そうに顔を歪めながらも、一度攻撃を止めた。
「アンタ、そいつを守ってどうしたいわけ?アタシの方が強いってわかってんでしょ?鬼同士で戦っても無意味なんだから、さっさと………アンタ…その腕どうしたのよ…。」
攻撃が止まったことで藤衣を解除した名前は、左腕が日の光に当てられたかのようにボロボロと焼け焦げていた。
その様子に、堕姫は動揺した。
(今は夜。日の光が差すことはない。それなのにこの鬼、左腕が無い。それにこの血の匂い…気分が悪い…!)
対する名前も、藤衣でこんなに強い攻撃を防ぐことは初めてな上、自分だけでなく誰かを守り続けるのは、名前の体に大きな負担がかかった。
その結果、左腕が丸ごと日の光に焼かれたようになってしまった。
(まずい…!これ以上藤衣を出し続けると消滅する…!)
名前にはもう何も出来なかった。
左腕の痛みとともに忌血の匂いが名前を襲う。
その様子を見て、堕姫は再度帯を二人に向けた。
帯に取り込まれながら、名前は意識を手放した。
手放す直前、最後に名前の目が捉えたのは自分と同じ覚悟をもった目だった。
「昔、母に教えて貰って…。」
「そうかい。なのにここに売られてくるなんて苦労してるねぇ。」
ときと屋の女将に連れられ、名前は室内を案内されていた。
「うちの一番人気が、これから会ってもらう鯉夏なんだ。今日で店を出ちまうんだけど、あんたに会ったら少しは安心してくれるかもしれないねぇ。」
女将が訪ねたのは、おそらくこの店で一番広い部屋だった。
「鯉夏、ちょっといいかい。」
「はい、女将さん。」
すっと襖を開けると、美人で人の良い笑顔をした遊女がいた。
「名前、うちで一番の遊女の鯉夏よ。」
鯉夏を前に、名前は深く頭を下げた。
「お初にお目にかかります、鯉夏花魁。名前と申します。」
「顔を上げて頂戴。そんなに私を敬う必要なんてないのよ。」
その言葉に顔を上げると、鯉夏は優しい笑顔で名前を見つめていた。
「初めまして、名前ちゃん。私は鯉夏と申します。私は今日ここを出てしまうけれど最後に会えて良かったわ。」
「鯉夏程になるかはわからないけど、名前も入ったしあんたは安心してここを出なさいね。」
「ありがとう、女将さん。」
その後、女将は忙しいと言って部屋を出ていった。
鯉夏は名前を近くまで呼び、お菓子を与えてくれた。
「名前ちゃん、すごく目が綺麗ね。」
お菓子を受け取る時、鯉夏がじっと名前の目を見て言った。
(なんだか、炭ちゃんの目に似ている気がする。)
鯉夏は直前までここにいた炭治郎の目を思い出していた。
名前の目は、先程男性の格好で現れた炭治郎と同じ、覚悟のある目をしていた。
そんな名前の目を見て、鯉夏は何故か安心した。
「名前ちゃんらしく、これからも生きてね。」
「え…?」
にっこりと微笑んだ鯉夏に、名前はその言葉の意味を尋ねようとした時後ろの襖が開いた。
「鬼の気配がすると思ったら…。何?アンタひとの獲物狙ってんじゃないわよ。」
名前と鯉夏が振り向くと、そこにはおどろおどろしい気配を出しながら不機嫌そうにこちらを睨みつける鬼がいた。
鯉夏はひっ、と小さく悲鳴をあげ、名前は目を見開いた。
「忘れないように食っておかないと、アンタは今夜までしかいないから。ねぇ、鯉夏。」
名前は瞬時に腕を引っ掻き、藤衣を発動させた。
その判断は正しく、無数の帯が鯉夏に襲いかかろうとしていた。
名前の藤衣が目の前の鬼の攻撃を弾いたのだった。
攻撃を仕掛けた鬼、上弦の陸 堕姫は自身の攻撃が弾かれたことに眉をひそめた。
(攻撃を防がれた…?)
ミミズのように蠢く帯で、何度も何度も鯉夏を狙うものの、尽く弾かれてしまう。
それどころか、鯉夏を庇うように立つ名前を狙っても同じように弾かれてしまうことに、堕姫は段々と腹立たしくなってきた。
「なんなのアンタのその能力!?どうしてアタシの帯が当たらないの!?」
名前は息を荒くしながら、堕姫を睨みつける。
「貴女、上弦の鬼なのね。聞きたいことがあるんだけど。」
「そんなことよりアタシの問いに答えなさいよ!!」
さらに攻撃は激しくなり、名前は少しずつ防ぎきれなくなってきていた。
名前の頬から血が流れ出す。
忌血の匂いが、名前の周囲を漂う。
(鯉夏さんを守りながらだと、自分への守りが疎かになる…!どうにかして、この場から離れてもらわないと…。)
ちらりと鯉夏を見ると、初めて見る鬼の存在に言葉を失っているようだった。
堕姫は不快そうに顔を歪めながらも、一度攻撃を止めた。
「アンタ、そいつを守ってどうしたいわけ?アタシの方が強いってわかってんでしょ?鬼同士で戦っても無意味なんだから、さっさと………アンタ…その腕どうしたのよ…。」
攻撃が止まったことで藤衣を解除した名前は、左腕が日の光に当てられたかのようにボロボロと焼け焦げていた。
その様子に、堕姫は動揺した。
(今は夜。日の光が差すことはない。それなのにこの鬼、左腕が無い。それにこの血の匂い…気分が悪い…!)
対する名前も、藤衣でこんなに強い攻撃を防ぐことは初めてな上、自分だけでなく誰かを守り続けるのは、名前の体に大きな負担がかかった。
その結果、左腕が丸ごと日の光に焼かれたようになってしまった。
(まずい…!これ以上藤衣を出し続けると消滅する…!)
名前にはもう何も出来なかった。
左腕の痛みとともに忌血の匂いが名前を襲う。
その様子を見て、堕姫は再度帯を二人に向けた。
帯に取り込まれながら、名前は意識を手放した。
手放す直前、最後に名前の目が捉えたのは自分と同じ覚悟をもった目だった。