2章
おなまえ
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翌日。
炭治郎と伊之助は屋根の上で定期連絡をするために集まっていた。
「だーかーらー 俺んとこに鬼がいんだよ!こういう奴がいるんだって、こういうのが!!」
伊之助はぐわっと手を広げながら言った。
その言葉に炭治郎はいや、あの、と言葉を濁す。
煮えきれない炭治郎の表情に、伊之助は今度は手を交差させる。
「こうか!?これなら分かるか!?」
「そろそろ宇髄さんと善逸が定期連絡に来ると思うから…。」
「こうなんだよ!俺にはわかってんだよ!」
「うん、うん…」
話をやめない伊之助に炭治郎は戸惑っていた。
「善逸は来ない。」
その声にばっと横を向くと、先程までいなかったはずの宇髄が座っていた。
(コイツ…やる奴だぜ。音がしねぇ…。風が揺らぎすらしなかった…。)
伊之助は改めて柱の強さを実感していた。
「善逸が来ないってどういうことですか?」
「お前達には悪いことをしたと思っている。」
炭治郎の質問に、宇髄は二人に背中を向けたまま話し始めた。
「俺は嫁を助けたいが為に、いくつもの判断を間違えた。善逸は今行方知れずだ。昨夜から連絡が途絶えてる。お前らはもう花街から出ろ、階級が低すぎる。ここにいる鬼が上弦だった場合、対処できない。」
宇髄はすっと立ち上がった。
「消息を絶った者は死んだと見倣す。後は俺一人で動く。」
「いいえ宇髄さん、俺たちは…!」
反論を言いかけた炭治郎に、宇髄は目線だけ送り、
「恥じるな。生きてる奴が勝ちなんだ。機会を見誤るんじゃない。」
そう言って音もなく消えた。
「待てよオッサン!!」
伊之助の声がその場に響いたが、宇髄は止まらなかった。
その日の夕方。
宇髄は素顔に戻り一人の女を連れてときと屋に来ていた。
「悪ィな奥さん。また貰ってもらうことになって。」
「いいのよォ、この間の子もよく働いてくれてるし。それにこの子はいい顔してるじゃない。鯉夏が抜けるし、少しでも可愛い子入れておきたいのよォ!」
宇髄はときと屋に、連れてきた女を預けその場を後にする。
すれ違いざまに小さな声で呟いた。
「んじゃ、任せたわ。」
「はい。」
返事をした女は、美しく着飾った名前であった。
昨晩、宇髄に脅されて連れてこられたのは藤の花の家紋の家であった。
そこで、名前へ任務を言い渡した。
「つまり私に、遊郭に潜入しろってことですか?」
「そうだ。竈門たちにも頼んだがあいつらじゃダメだ。階級が低すぎてあのまま命を落としかねねぇ。でも鬼であるお前なら死なねぇし、上手いこと鬼の居場所だけでも見つけ出してきてくれ。それに、お前も隠れてる鬼に用事があるんだろ?」
宇髄は名前を完全に信用していない。
名前が完全に自分の言うことを聞くとは思っていない。
しかし、宇髄と名前が探している鬼は同じである。
今回は『利害の一致』と『名前という鬼の生態確認』のために、宇髄は名前を利用するのだ。
名前も隠れている鬼を見つけ出すという目的を達成出来るだけでなく、柱からの信頼が得られるなら、喜んで協力をすることにした。
名前を見張った状態で、着飾られていく様子を見ていた宇髄は、どんどん変貌していく名前にへぇ、と内心感心した。
化粧っ気の無い顔に彩が乗り、安物の着物が派手なものに変わるだけで、見違えるようだった。
名前の所作の美しさが、尚更名前の魅力を引き出している。
(鬼になる前は、イイトコのお嬢さんだったのかもな…。)
宇髄の視線に耐えきれなくなり、名前はちらりと宇髄に目を向ける。
「どうですか…?」
「派手さはねぇが悪くねぇ。その顔なら普通に買ってもらえるだろ。」
名前はその言葉にほっと安心する。
化粧も派手な着物も、名前にとっては初めてのことで違和感を感じていた。
しかし同時に気分も高揚していた。
(鬼を探すためとはいえこんな格好…。まさか自分がするとは思ってなかった…。)
人間の時は母親の用意した着物だけを着て、外に出ることもほとんどなかったため、化粧などすることも無かった。
鏡を見た時に、自分の変わり様に名前自身驚いていたのだ。
「自分に見惚れてるのもいいが、しっかり働いてくれよ?」
にやりと笑った宇髄に、名前は顔を真っ赤にし、ぷいとそっぽを向いた。
炭治郎と伊之助は屋根の上で定期連絡をするために集まっていた。
「だーかーらー 俺んとこに鬼がいんだよ!こういう奴がいるんだって、こういうのが!!」
伊之助はぐわっと手を広げながら言った。
その言葉に炭治郎はいや、あの、と言葉を濁す。
煮えきれない炭治郎の表情に、伊之助は今度は手を交差させる。
「こうか!?これなら分かるか!?」
「そろそろ宇髄さんと善逸が定期連絡に来ると思うから…。」
「こうなんだよ!俺にはわかってんだよ!」
「うん、うん…」
話をやめない伊之助に炭治郎は戸惑っていた。
「善逸は来ない。」
その声にばっと横を向くと、先程までいなかったはずの宇髄が座っていた。
(コイツ…やる奴だぜ。音がしねぇ…。風が揺らぎすらしなかった…。)
伊之助は改めて柱の強さを実感していた。
「善逸が来ないってどういうことですか?」
「お前達には悪いことをしたと思っている。」
炭治郎の質問に、宇髄は二人に背中を向けたまま話し始めた。
「俺は嫁を助けたいが為に、いくつもの判断を間違えた。善逸は今行方知れずだ。昨夜から連絡が途絶えてる。お前らはもう花街から出ろ、階級が低すぎる。ここにいる鬼が上弦だった場合、対処できない。」
宇髄はすっと立ち上がった。
「消息を絶った者は死んだと見倣す。後は俺一人で動く。」
「いいえ宇髄さん、俺たちは…!」
反論を言いかけた炭治郎に、宇髄は目線だけ送り、
「恥じるな。生きてる奴が勝ちなんだ。機会を見誤るんじゃない。」
そう言って音もなく消えた。
「待てよオッサン!!」
伊之助の声がその場に響いたが、宇髄は止まらなかった。
その日の夕方。
宇髄は素顔に戻り一人の女を連れてときと屋に来ていた。
「悪ィな奥さん。また貰ってもらうことになって。」
「いいのよォ、この間の子もよく働いてくれてるし。それにこの子はいい顔してるじゃない。鯉夏が抜けるし、少しでも可愛い子入れておきたいのよォ!」
宇髄はときと屋に、連れてきた女を預けその場を後にする。
すれ違いざまに小さな声で呟いた。
「んじゃ、任せたわ。」
「はい。」
返事をした女は、美しく着飾った名前であった。
昨晩、宇髄に脅されて連れてこられたのは藤の花の家紋の家であった。
そこで、名前へ任務を言い渡した。
「つまり私に、遊郭に潜入しろってことですか?」
「そうだ。竈門たちにも頼んだがあいつらじゃダメだ。階級が低すぎてあのまま命を落としかねねぇ。でも鬼であるお前なら死なねぇし、上手いこと鬼の居場所だけでも見つけ出してきてくれ。それに、お前も隠れてる鬼に用事があるんだろ?」
宇髄は名前を完全に信用していない。
名前が完全に自分の言うことを聞くとは思っていない。
しかし、宇髄と名前が探している鬼は同じである。
今回は『利害の一致』と『名前という鬼の生態確認』のために、宇髄は名前を利用するのだ。
名前も隠れている鬼を見つけ出すという目的を達成出来るだけでなく、柱からの信頼が得られるなら、喜んで協力をすることにした。
名前を見張った状態で、着飾られていく様子を見ていた宇髄は、どんどん変貌していく名前にへぇ、と内心感心した。
化粧っ気の無い顔に彩が乗り、安物の着物が派手なものに変わるだけで、見違えるようだった。
名前の所作の美しさが、尚更名前の魅力を引き出している。
(鬼になる前は、イイトコのお嬢さんだったのかもな…。)
宇髄の視線に耐えきれなくなり、名前はちらりと宇髄に目を向ける。
「どうですか…?」
「派手さはねぇが悪くねぇ。その顔なら普通に買ってもらえるだろ。」
名前はその言葉にほっと安心する。
化粧も派手な着物も、名前にとっては初めてのことで違和感を感じていた。
しかし同時に気分も高揚していた。
(鬼を探すためとはいえこんな格好…。まさか自分がするとは思ってなかった…。)
人間の時は母親の用意した着物だけを着て、外に出ることもほとんどなかったため、化粧などすることも無かった。
鏡を見た時に、自分の変わり様に名前自身驚いていたのだ。
「自分に見惚れてるのもいいが、しっかり働いてくれよ?」
にやりと笑った宇髄に、名前は顔を真っ赤にし、ぷいとそっぽを向いた。