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2章

おなまえ

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宇髄は街中で鬼を見つけていた。
あれだけ見られていれば、柱でなくともある程度の実力があれば分かるだろう。

(何者だ…?)

宇髄が瞬時に狩りにいかなかったのは三つの理由がある。

一つ目は、炭治郎達を遊郭に潜入させるためには自分の顔が必要だったからだ。
自らの手で三人をド派手に化粧をさせたが、どれも不細工に仕上がり、買ってもらうためには自分の整った顔を利用するしかなかった。

二つ目は、その鬼からは殺気を少しも感じなかったからである。
基本的に鬼は人間を見ると、自身の食欲のために殺しにかかってくる。
それが鬼殺隊の場合、同じく殺しにかかってくるか、逃げ出すのだ。
しかしこちらを見ている鬼は殺気どころか、『ただ知り合いを見ている』かのような視線だ。

そして三つ目は、お館様からの連絡だ。
鴉を通じてとある鬼についての連絡があった。

『鬼舞辻無惨に深い恨みを持つ鬼がいる。
禰豆子とは性質が異なるようだが、人間を襲わないと聞いている。
杏寿郎を鬼から守ろうとし、炭治郎達とも共闘している鬼の子だという。
私自身の目でまだ見ていないから確信は出来ないが、無惨の尻尾を掴む切り札になるのではと私は踏んでいる。
もし柱の皆がその鬼に会うことがあれば、まず話をしてみて欲しい。
そのあとの判断は各々に任せるよ。』

宇髄は元々、鬼であれば斬るのが当たり前の考え方だ。
しかし禰豆子の存在や煉獄の死、お館様からの連絡を通して、その鬼が現れたなら会話くらいはしてやろうと考えていた。




無事三人を潜入させ、宇髄は今回探している鬼の気配を探りつつ、昼間見た鬼の様子を屋根の上で伺っていた。

(嫌ぁな感じはするが鬼の気配ははっきりしねぇ。煙に巻かれているようだ…。)

宇髄は口元に手を当てながら考える。

(気配の隠し方の巧さ…地味さ。もしやここに巣食っている鬼…。上弦の鬼か?だとするとド派手な『殺し合い』になるかもな…。)

少しだけ眉間に皺を寄せ、宇髄は立ち上がった。

(もし本当に上弦だとしたら、先にこの問題を片付けておくか…。)





夜になり、名前は警戒しながら鬼の気配を探った。
鬼がいることは分かるが、どこにいるのかまでは分からなかった。

(巧妙な隠れ方…。実力がある鬼なのは間違いない!)

名前は高いところから気配を探ろうと、屋根の上に登った。
登り切った瞬間、殺気を感じた。


「!」


斬撃を避け、刀を持った人物を睨みつける。

「よく避けたな。7割くらいの力は出したんだが。」

昼間見た柱、宇髄が名前に刀を向けていた。
すぐに斬りかかるつもりは無いらしい。
名前は前に会った柱との会話を思い出し、話などせずに問答無用で斬りかかられると覚悟していたため、少しだけ拍子抜けした。


「お前は俺が探している鬼じゃねーよな。」
「貴方が探している鬼がどれのことかは知らないですけど、私は人間を傷つけて食べるつもりは無いです。」

宇髄の質問に名前は淡々と答えた。
その答えに、宇髄は予想通りだと思った。

(やっぱりコイツがお館様が言ってた鬼か。竈門達が会っているのもコイツか…。)

刀は構えたまま、宇髄は話し続ける。

「煉獄を守ったんだって?鬼のくせにどういう風の吹き回しだ?」
「…っ!?」

宇髄の言葉に名前は不快そうに表情を歪めた。


「私は彼を守れていない。むしろ彼に守られたんです。鬼である私に人間としての尊厳を奪わずにいてくれた。あの人の、煉獄さんの為に、私は人間としての誇りを持って生きる。それを邪魔するなら、貴方のような柱が相手だとしても容赦なく戦います。」


名前の真っ直ぐな瞳と言葉に、宇髄はほぉ、と感心した表情を見せた。

「いいねぇ、ド派手な覚悟だ。お前が人間に手を出さず、それでいて俺にとって有益な存在なら、俺はお前を斬らねぇよ。」

刀を収める宇髄を見て、名前は驚いた。
まさか柱が、自分の話を聞いて刀を収めるとは思っていなかった。
驚きと同時に嬉しさもあり、名前は少しだけ警戒を緩めた。
宇髄はその表情を見て少しだけ目を細めた。

(俺は、な。)



「有益な存在っていうのは、どう証明したらいいですか?」

名前のその質問に対してにやりと笑った宇髄は、一瞬で名前の背後に回り、その首元に刀を当てた。


「まぁまず、俺の言うことを聞いてもらおうかぁ?」


油断した名前に冷や汗が伝った。
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