1章
おなまえ
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名前は血溜まりの中にいた。
何人もの人間が周りには倒れており、どれも息をしていなかった。
そして自分の足元には死体があり、その死体から取り外したであろう腕を抱えていた。
その腕には噛み付いた跡があり、自分の口元には自分のではない血がべったりとついていた。
「え……?」
名前は自分のいる場所が理解できなかった。
(私は…さっきまで村長さんの家にいて……それから……。あれ、そのあと、何したっけ…?)
ここにいる前の記憶が全くなかった。
ちらりと手に持った人間の腕を見ると、
「ひっ…!」
それは老人の腕だった。
ぱっと手を離すと、その腕は名前の足元の死体の近くに転がり、もう動くことの無いその顔は、
先程まで話していた村長であった。
(なんで、どうして、こんなことに?)
名前の息が乱れた。
自分が村長を始めとする村人を殺し、ましてや食べていたとしか思えないこの状況に、名前は全く頭がついて行かなかった。
震える手を自分の口元に持っていき、浅く息を繰り返して目の前の光景を呆然と見た。
「それがお前の本性だ」
ばっと後ろを振り返ると、顔の見えない男がこちらを指さしていた。
「人間と交流し優しくされようが、命を救われようが、お前がすることは一つ。人間を食うことだ。」
その男は刺々しい言葉を名前に吐く。
名前は小さく首を振った。
「ちが…ちがう…!これは、これは私がやったわけじゃ…」
「ではその口元の血と足元の噛み跡はなんだ?この辺りにお前以外の鬼はいない。お前しかいないだろう?」
「覚えてないわ…。私じゃないはずよ…。」
名前はどんどん言葉に自信をなくしていく。
そんな名前へ少しずつ男が近づいてきた。
「これは鬼の運命だ。鬼の本能だ。」
近づいてくる男が、名前の見知った声と姿に変わっていく。
「どんなに私を憎み嫌おうとも、結局貴様は私と同類の鬼なのだよ。」
名前の顎をくいっと持ち上げ、無惨が言った。
手足に力が入らず、名前は力なく首を振る。
憎い男が目の前にいるのに、自分のしでかしたであろう状況に直面し、何の力も出せなかった。
「私は…お前とは、違う…。」
「何が違う?人間の血肉を求め、人間と同じように陽の光を浴びたいと願う。鬼と分かれば鬼狩り共に命を狙われ、人間共には迫害される。私と同じじゃないか。」
無惨はにやりと笑って名前の目を見返している。
名前が瞬きをすると無惨の姿は消え、代わりに遠くの方に炭治郎の姿が見えた。
炭治郎は悲しそうな目で名前を見つめていた。
「名前さん、俺は信じていました。貴女は他の鬼とは違うって。でもやっぱり、貴女も人の命を奪う鬼なんですね。」
炭治郎の言葉に名前は目を見開き、違う、と呟いた。
「私は、人を殺したりしない…!人間を、食べるために殺さない…!」
そう答えると、炭治郎の横に煉獄が並んだ。
「鬼の少女よ。俺は君を救った訳では無い。君が鬼として生きるのであれば、俺は君を許さない。」
煉獄の表情は名前に向けた笑顔など無く、自らの敵へ向けた冷酷なものだった。
名前は息を飲んだ。
(あの人は死んだ、これは幻だ…!!)
そう言い聞かせても、煉獄が自分に向けた冷たい表情と言葉が名前の頭から離れない。
名前はがくんと膝をついて、その場に蹲る。
(私は…鬼でしかない……。人間の気持ちを持っていても、人間に戻れた訳では無い…。)
名前は顔を上げて炭治郎と煉獄が立っていた辺りをぼうっと見つめる。
二人の幻影はもう消えていた。
そんな名前の耳元で、もう一度無惨の声がした。
「貴様が倒すべき相手は、本当に私なのか?」
ばっと目を開けると、そこは見たことの無い洞窟だった。
周りを見渡しても誰もいないし、自分の手足や口元に血などついてはいなかった。
名前は先程まで見た光景が、現実ではなく夢だったことに少しだけ安堵した。
そして疑問を覚えた。
(ここ、どこ…?それになんか右肩が痛い…。)
村長の家で飲んだ飲み物に、睡眠剤か何が入っていたのだろう。
名前が気を失ったあと、何らかの目的でこの洞窟に運び込んだに違いない。
そう推理する名前だが、周りに誰もいないのが違和感だった。
洞窟を見回すと、奥の方に道が続いているのが見えた。
名前はそちらに向かうことにした。
何人もの人間が周りには倒れており、どれも息をしていなかった。
そして自分の足元には死体があり、その死体から取り外したであろう腕を抱えていた。
その腕には噛み付いた跡があり、自分の口元には自分のではない血がべったりとついていた。
「え……?」
名前は自分のいる場所が理解できなかった。
(私は…さっきまで村長さんの家にいて……それから……。あれ、そのあと、何したっけ…?)
ここにいる前の記憶が全くなかった。
ちらりと手に持った人間の腕を見ると、
「ひっ…!」
それは老人の腕だった。
ぱっと手を離すと、その腕は名前の足元の死体の近くに転がり、もう動くことの無いその顔は、
先程まで話していた村長であった。
(なんで、どうして、こんなことに?)
名前の息が乱れた。
自分が村長を始めとする村人を殺し、ましてや食べていたとしか思えないこの状況に、名前は全く頭がついて行かなかった。
震える手を自分の口元に持っていき、浅く息を繰り返して目の前の光景を呆然と見た。
「それがお前の本性だ」
ばっと後ろを振り返ると、顔の見えない男がこちらを指さしていた。
「人間と交流し優しくされようが、命を救われようが、お前がすることは一つ。人間を食うことだ。」
その男は刺々しい言葉を名前に吐く。
名前は小さく首を振った。
「ちが…ちがう…!これは、これは私がやったわけじゃ…」
「ではその口元の血と足元の噛み跡はなんだ?この辺りにお前以外の鬼はいない。お前しかいないだろう?」
「覚えてないわ…。私じゃないはずよ…。」
名前はどんどん言葉に自信をなくしていく。
そんな名前へ少しずつ男が近づいてきた。
「これは鬼の運命だ。鬼の本能だ。」
近づいてくる男が、名前の見知った声と姿に変わっていく。
「どんなに私を憎み嫌おうとも、結局貴様は私と同類の鬼なのだよ。」
名前の顎をくいっと持ち上げ、無惨が言った。
手足に力が入らず、名前は力なく首を振る。
憎い男が目の前にいるのに、自分のしでかしたであろう状況に直面し、何の力も出せなかった。
「私は…お前とは、違う…。」
「何が違う?人間の血肉を求め、人間と同じように陽の光を浴びたいと願う。鬼と分かれば鬼狩り共に命を狙われ、人間共には迫害される。私と同じじゃないか。」
無惨はにやりと笑って名前の目を見返している。
名前が瞬きをすると無惨の姿は消え、代わりに遠くの方に炭治郎の姿が見えた。
炭治郎は悲しそうな目で名前を見つめていた。
「名前さん、俺は信じていました。貴女は他の鬼とは違うって。でもやっぱり、貴女も人の命を奪う鬼なんですね。」
炭治郎の言葉に名前は目を見開き、違う、と呟いた。
「私は、人を殺したりしない…!人間を、食べるために殺さない…!」
そう答えると、炭治郎の横に煉獄が並んだ。
「鬼の少女よ。俺は君を救った訳では無い。君が鬼として生きるのであれば、俺は君を許さない。」
煉獄の表情は名前に向けた笑顔など無く、自らの敵へ向けた冷酷なものだった。
名前は息を飲んだ。
(あの人は死んだ、これは幻だ…!!)
そう言い聞かせても、煉獄が自分に向けた冷たい表情と言葉が名前の頭から離れない。
名前はがくんと膝をついて、その場に蹲る。
(私は…鬼でしかない……。人間の気持ちを持っていても、人間に戻れた訳では無い…。)
名前は顔を上げて炭治郎と煉獄が立っていた辺りをぼうっと見つめる。
二人の幻影はもう消えていた。
そんな名前の耳元で、もう一度無惨の声がした。
「貴様が倒すべき相手は、本当に私なのか?」
ばっと目を開けると、そこは見たことの無い洞窟だった。
周りを見渡しても誰もいないし、自分の手足や口元に血などついてはいなかった。
名前は先程まで見た光景が、現実ではなく夢だったことに少しだけ安堵した。
そして疑問を覚えた。
(ここ、どこ…?それになんか右肩が痛い…。)
村長の家で飲んだ飲み物に、睡眠剤か何が入っていたのだろう。
名前が気を失ったあと、何らかの目的でこの洞窟に運び込んだに違いない。
そう推理する名前だが、周りに誰もいないのが違和感だった。
洞窟を見回すと、奥の方に道が続いているのが見えた。
名前はそちらに向かうことにした。