1章
おなまえ
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絶対に、許さない……
私は絶対にお前を許さない…
父と母を殺した……あの男を…!
これは初めて「憎しみ」を覚えた、少女の悲しい物語である。
(あぁ、もうだめだ、なにか食べないと…。)
名前の運命を変えた日から、3か月が経過した。
両親を殺し、彼女だけを残して去っていった男を探して、名前は毎日聞き込みを行った。
しかし全く手がかりは掴めない。
そんな日々が続き、名前は気が滅入っていた。
(あの男に、空想の生き物だと思っていた「鬼」にされて、日光にも当たれないし、今まで取っていた食事も体が受け付けない…。
だめだ…食べたい……人間の肉…)
名前の頭によぎる一つの欲求が、人間の肉への渇望だった。
彼女は毎夜、聞き取りを行ってきた。
あの男を探すため、いろんな人間に聞き込みをしてきたが、日に日に目の前の相手を食べたくなる気持ちが強くなっていく。
(このままでは、私は人を食べてしまう。)
そう思うとここ最近は聞き込みも行えなくなってしまっていた。
(しっかりしろ…!私…!
あの男の思いどおりになんてなるもんか…!)
名前はもう一度自分に鞭を打ち、見えてきた新しい村を尋ねることにした。
「あの…すみません。」
名前は村に到着すると早速最初に見かけた村人に声をかけた。
「ひぃ…!」
その人は何かに怯えているかのように名前を見て、少し距離を取って話し始めた。
「な…何の用だ…!お…お…お前はどこから来た!!」
「私は隣の山から下りてきた者で、人を探しているのですが…」
「知らねぇ!早くこの村から出ていけ!!」
名前の声に被さるように大声で返答され、そのまま走り去って言ってしまった。
「まだ…何も聞いていないのに……」
取り残された名前は、他の人に聞こうと周りを見渡した。
家の扉からいくつもの人がこちらを見ていたが、名前と目が合うとぴしゃりと閉じられてしまう。
(この村、何かに怯えている…?)
名前は村人たちの様子に首をかしげた。
しばらく村の中を歩いたが、人っ子一人歩いていないうえに、家の中も明かりさえ灯っておらずひっそりとしている。。
夜とは言え、外に出ない時間ではないし眠りにつくほど遅い時間でもない。
疑問に思った名前の背後から声がかかった。
「あれぇ、今日はわざわざ出てきてくれたのかい?」
振り向くとそこには、血走った眼をこちらに向ける一匹の鬼がいた。
「いつもみんな家に籠って、どの家を襲うか選ぶのも一つの楽しみだったんだがなァ。まぁ、探す手間が無くていいかァ。」
鬼が一歩ずつ近づいてくるが、名前は一歩も動けずにいた。
なぜなら名前が自分以外の鬼に会うのはこれが初めてであり、箱入り娘だった名前が明らかな殺意を向けられることは過去一度もなかったからである。
(これが…鬼。こいつは私と同じ生き物……。)
名前がそんなことを思っていると、近づいてきた鬼が名前を見て気づく。
「なんだよ、お前鬼かよ。」
名前は鬼のその言葉を聞いた途端、初めて感じたあの感情を思い出す。
――――ー貴様、忌血か…?
憎い。憎い憎い憎い。
両親を殺し、私をこんな醜い生き物にしたあの男!!!
――――ーしょうがない。その臭いを私自ら上書きしてやろう。
何故私も一緒に殺さなかった!?なぜ生かした!?
――――ーこれで貴様も、鬼となる。
私を、鬼にした、あの男を許すな!!!
「この村は俺の縄張りだ、さっさと出てけよ。お前に譲る気はねェ!
出て行かねェなら、痛い目見てもらうけどなァ」
目の前の鬼は名前に話しかけているが、名前の耳には届いていなかった。
今、彼女の感情は「憎しみ」で埋め尽くされている。
「おいお前、なんか言えよ。」
鬼が名前に触れようとしたその瞬間、鬼の腕が切れた。
「ぎゃああああああ!!!!!テメェ!俺とやり合おうってのか!?」
名前は鬼を無表情で見つめ、腕についた血を払いながら鬼に問いかけた。
「私を鬼にした男を知っていますか。」
「あ!?知らねェよそんなこと!!」
名前を睨みつけながら、切れた腕を再生させようとする鬼。
しかし鬼は、先ほどまで自分をただ見つめていた少女と、今目の前に立つ少女が同一人物だとは思えなかった。
(なんだこいつ…気味が悪ィ……)
「ちっ…興覚めだ…。さっさと出てけよ…」
鬼は戦闘態勢を解き、名前に背を向けた。
自分よりも強い鬼というのは、気配で分かる。
憎しみに染まった名前を前にして、鬼は強さの上下を悟った。
「そう…。」
無表情の名前は鬼を置いて、夜が明ける前に隠れる場所を探すことにした。
名前は村を出て、近くの山奥に身を隠した。
そして、あの憎しみが生まれた日を思い出していた。
私は絶対にお前を許さない…
父と母を殺した……あの男を…!
これは初めて「憎しみ」を覚えた、少女の悲しい物語である。
(あぁ、もうだめだ、なにか食べないと…。)
名前の運命を変えた日から、3か月が経過した。
両親を殺し、彼女だけを残して去っていった男を探して、名前は毎日聞き込みを行った。
しかし全く手がかりは掴めない。
そんな日々が続き、名前は気が滅入っていた。
(あの男に、空想の生き物だと思っていた「鬼」にされて、日光にも当たれないし、今まで取っていた食事も体が受け付けない…。
だめだ…食べたい……人間の肉…)
名前の頭によぎる一つの欲求が、人間の肉への渇望だった。
彼女は毎夜、聞き取りを行ってきた。
あの男を探すため、いろんな人間に聞き込みをしてきたが、日に日に目の前の相手を食べたくなる気持ちが強くなっていく。
(このままでは、私は人を食べてしまう。)
そう思うとここ最近は聞き込みも行えなくなってしまっていた。
(しっかりしろ…!私…!
あの男の思いどおりになんてなるもんか…!)
名前はもう一度自分に鞭を打ち、見えてきた新しい村を尋ねることにした。
「あの…すみません。」
名前は村に到着すると早速最初に見かけた村人に声をかけた。
「ひぃ…!」
その人は何かに怯えているかのように名前を見て、少し距離を取って話し始めた。
「な…何の用だ…!お…お…お前はどこから来た!!」
「私は隣の山から下りてきた者で、人を探しているのですが…」
「知らねぇ!早くこの村から出ていけ!!」
名前の声に被さるように大声で返答され、そのまま走り去って言ってしまった。
「まだ…何も聞いていないのに……」
取り残された名前は、他の人に聞こうと周りを見渡した。
家の扉からいくつもの人がこちらを見ていたが、名前と目が合うとぴしゃりと閉じられてしまう。
(この村、何かに怯えている…?)
名前は村人たちの様子に首をかしげた。
しばらく村の中を歩いたが、人っ子一人歩いていないうえに、家の中も明かりさえ灯っておらずひっそりとしている。。
夜とは言え、外に出ない時間ではないし眠りにつくほど遅い時間でもない。
疑問に思った名前の背後から声がかかった。
「あれぇ、今日はわざわざ出てきてくれたのかい?」
振り向くとそこには、血走った眼をこちらに向ける一匹の鬼がいた。
「いつもみんな家に籠って、どの家を襲うか選ぶのも一つの楽しみだったんだがなァ。まぁ、探す手間が無くていいかァ。」
鬼が一歩ずつ近づいてくるが、名前は一歩も動けずにいた。
なぜなら名前が自分以外の鬼に会うのはこれが初めてであり、箱入り娘だった名前が明らかな殺意を向けられることは過去一度もなかったからである。
(これが…鬼。こいつは私と同じ生き物……。)
名前がそんなことを思っていると、近づいてきた鬼が名前を見て気づく。
「なんだよ、お前鬼かよ。」
名前は鬼のその言葉を聞いた途端、初めて感じたあの感情を思い出す。
――――ー貴様、忌血か…?
憎い。憎い憎い憎い。
両親を殺し、私をこんな醜い生き物にしたあの男!!!
――――ーしょうがない。その臭いを私自ら上書きしてやろう。
何故私も一緒に殺さなかった!?なぜ生かした!?
――――ーこれで貴様も、鬼となる。
私を、鬼にした、あの男を許すな!!!
「この村は俺の縄張りだ、さっさと出てけよ。お前に譲る気はねェ!
出て行かねェなら、痛い目見てもらうけどなァ」
目の前の鬼は名前に話しかけているが、名前の耳には届いていなかった。
今、彼女の感情は「憎しみ」で埋め尽くされている。
「おいお前、なんか言えよ。」
鬼が名前に触れようとしたその瞬間、鬼の腕が切れた。
「ぎゃああああああ!!!!!テメェ!俺とやり合おうってのか!?」
名前は鬼を無表情で見つめ、腕についた血を払いながら鬼に問いかけた。
「私を鬼にした男を知っていますか。」
「あ!?知らねェよそんなこと!!」
名前を睨みつけながら、切れた腕を再生させようとする鬼。
しかし鬼は、先ほどまで自分をただ見つめていた少女と、今目の前に立つ少女が同一人物だとは思えなかった。
(なんだこいつ…気味が悪ィ……)
「ちっ…興覚めだ…。さっさと出てけよ…」
鬼は戦闘態勢を解き、名前に背を向けた。
自分よりも強い鬼というのは、気配で分かる。
憎しみに染まった名前を前にして、鬼は強さの上下を悟った。
「そう…。」
無表情の名前は鬼を置いて、夜が明ける前に隠れる場所を探すことにした。
名前は村を出て、近くの山奥に身を隠した。
そして、あの憎しみが生まれた日を思い出していた。