1章
おなまえ
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息が上手く出来ない。
一歩も動くことが出来ない。
自分がどこに力を入れているのか分からない。
感じるのは背後にある威圧感と、首元に当たるヒヤリとした刀の感覚。
「もう一度聞こう。君は鬼だな?」
背後から再び声をかけられた。
眠りについていた時でさえ、柱の気配は強かった。
それが目覚めただけでなく、自分の首元に刃を当てている。
自分へ敵意を向けている。
名前は声を絞り出して返事をした。
「っ…はい…。」
呼吸が乱れる。
恐怖に押しつぶされそうになる。
後ろを振り向くことなど出来ない。
柱は続けて名前に問いかけた。
「うむ。では鬼である君は何故人間を守った?食うためか?」
「ち…違いますっ!わ、わ、私は…竈門さんに命を救われています。…っその恩を、返すためにここに来ました…!竈門さんが倒しに行っている鬼へ、さらに力を与える訳にはいきません。」
息を乱しながらも、名前は真実を述べた。
実は煉獄は、名前の戦う姿を見ていた。
人間を守るように名前は動き続けていた。
この車両に来るまでに、鬼殺隊として戦う禰豆子を見て煉獄は今までの考えを改めた。
そして、今日初めて見るもう一体の鬼の戦う姿も、禰豆子と同じように人間を守るという意図を持っているように見えた。
だが、禰豆子と異なりこの鬼のことはお館様から話を聞いていない。
今までの煉獄だったら、問答無用で斬っていただろう。
しかし禰豆子の存在を認めたことで、この鬼も人間を守っている可能性があるのでは、と迷いが生じてしまっていた。
煉獄の考えていることは名前には全く伝わっていない。
ただ名前は目前にあるであろう死を覚悟し始めていた。
(どうか、どうか無惨を殺してください、竈門さん。私が死んだ後、託せるのは貴方しかいないんです。)
煉獄に背を向けながらほろりと、一筋の涙が溢れた。
その直後、爆音とともに列車が大きく揺れた。
「なっなにが…!?」
名前の後ろに立っていたはずの煉獄は、すぐさま状況を察知し、最終車両を後にしていた。
ちらりと名前を振り返って見たが、列車が脱線していることに気づいていないのか、座り込んだまま動いていなかった。
煉獄は直ぐに視線を前に戻し、列車の中央に当たる四両目に向かった。
いくつもの技を繰り出すことで脱線の衝撃を弱めようと考えたのだ。
その行動は車両に乗る多くの人間を守るための行動であった。
しかし煉獄ほどの腕があれば、名前を斬ってからでも十分間に合った。
煉獄がそれをしなかったのは、名前を敵として認めることが出来ず、迷いが生じてしまったから。
(俺はまだまだ弱いな。あの状況で鬼を斬れないなんて。)
煉獄はそんなことを思いながら、たどり着いた四両目で刀を構えた。
(列車が脱線する!)
名前が気がついたのは煉獄が動いてから少しした後であった。
通常の脱線とは思えない程列車が動き、激しい音を立てて横転をしようとしていた。
名前にはどうすることも出来ず、見守ることしか出来なかった。
横転の衝撃を覚悟したその一瞬、名前の視界の端にゆらりと炎が見えた気がした。
凄まじい音を立てて列車が止まった。
あんなに揺れていたのに、何故か列車は少し傾いただけだった。
気がつけば人間は全員目覚めていて、動けるものはバタバタと急いで逃げだし、怪我をしている人間は血を流しつつも列車の外を目指して進んでいた。
名前はその光景に自身の目を疑った。
(あれほどの衝撃にもかかわらず、この車両の人間は全員生きている…!?あの勢いだったなら完全に横転は免れなかったはず。どうして…?)
名前も人間達と同じく列車の外に出た。
そこには、どの車両からも人々が生きて外に出てきているところだった。
その様子に名前は圧巻された。
(ちらりと見えたあの炎のような斬撃。あれは柱のもの…。柱が技を出して車両の勢いを殺したんだ…!なんてすごい力…!!)
名前は改めて柱の力を感じた。
先程までは恐怖しか感じなかったが、目の前の光景を見て、尊敬の域まで達したのだった。
あの柱にもう一度だけ会いたい、名前は殺されかけたにも関わらずそう思った。
(もしかしたら、竈門さんのように話せばわかってくれる人かもしれないし…。それに、人間の命を守るためとはいえ、私のこと殺さないでくれた。)
名前はまた鬼狩りに命を救われたのだ。
炭治郎と煉獄、二人に恩を返すことを名前は心に決めた。
名前が二人を探そうと決めた直後、ぞわりと名前に悪寒が走った。
まるで、無惨と会った時のような感覚だった。
(なんだか、嫌な予感がする…。)
名前は先頭車両方面へ向かうため、強く地面を蹴った。
一歩も動くことが出来ない。
自分がどこに力を入れているのか分からない。
感じるのは背後にある威圧感と、首元に当たるヒヤリとした刀の感覚。
「もう一度聞こう。君は鬼だな?」
背後から再び声をかけられた。
眠りについていた時でさえ、柱の気配は強かった。
それが目覚めただけでなく、自分の首元に刃を当てている。
自分へ敵意を向けている。
名前は声を絞り出して返事をした。
「っ…はい…。」
呼吸が乱れる。
恐怖に押しつぶされそうになる。
後ろを振り向くことなど出来ない。
柱は続けて名前に問いかけた。
「うむ。では鬼である君は何故人間を守った?食うためか?」
「ち…違いますっ!わ、わ、私は…竈門さんに命を救われています。…っその恩を、返すためにここに来ました…!竈門さんが倒しに行っている鬼へ、さらに力を与える訳にはいきません。」
息を乱しながらも、名前は真実を述べた。
実は煉獄は、名前の戦う姿を見ていた。
人間を守るように名前は動き続けていた。
この車両に来るまでに、鬼殺隊として戦う禰豆子を見て煉獄は今までの考えを改めた。
そして、今日初めて見るもう一体の鬼の戦う姿も、禰豆子と同じように人間を守るという意図を持っているように見えた。
だが、禰豆子と異なりこの鬼のことはお館様から話を聞いていない。
今までの煉獄だったら、問答無用で斬っていただろう。
しかし禰豆子の存在を認めたことで、この鬼も人間を守っている可能性があるのでは、と迷いが生じてしまっていた。
煉獄の考えていることは名前には全く伝わっていない。
ただ名前は目前にあるであろう死を覚悟し始めていた。
(どうか、どうか無惨を殺してください、竈門さん。私が死んだ後、託せるのは貴方しかいないんです。)
煉獄に背を向けながらほろりと、一筋の涙が溢れた。
その直後、爆音とともに列車が大きく揺れた。
「なっなにが…!?」
名前の後ろに立っていたはずの煉獄は、すぐさま状況を察知し、最終車両を後にしていた。
ちらりと名前を振り返って見たが、列車が脱線していることに気づいていないのか、座り込んだまま動いていなかった。
煉獄は直ぐに視線を前に戻し、列車の中央に当たる四両目に向かった。
いくつもの技を繰り出すことで脱線の衝撃を弱めようと考えたのだ。
その行動は車両に乗る多くの人間を守るための行動であった。
しかし煉獄ほどの腕があれば、名前を斬ってからでも十分間に合った。
煉獄がそれをしなかったのは、名前を敵として認めることが出来ず、迷いが生じてしまったから。
(俺はまだまだ弱いな。あの状況で鬼を斬れないなんて。)
煉獄はそんなことを思いながら、たどり着いた四両目で刀を構えた。
(列車が脱線する!)
名前が気がついたのは煉獄が動いてから少しした後であった。
通常の脱線とは思えない程列車が動き、激しい音を立てて横転をしようとしていた。
名前にはどうすることも出来ず、見守ることしか出来なかった。
横転の衝撃を覚悟したその一瞬、名前の視界の端にゆらりと炎が見えた気がした。
凄まじい音を立てて列車が止まった。
あんなに揺れていたのに、何故か列車は少し傾いただけだった。
気がつけば人間は全員目覚めていて、動けるものはバタバタと急いで逃げだし、怪我をしている人間は血を流しつつも列車の外を目指して進んでいた。
名前はその光景に自身の目を疑った。
(あれほどの衝撃にもかかわらず、この車両の人間は全員生きている…!?あの勢いだったなら完全に横転は免れなかったはず。どうして…?)
名前も人間達と同じく列車の外に出た。
そこには、どの車両からも人々が生きて外に出てきているところだった。
その様子に名前は圧巻された。
(ちらりと見えたあの炎のような斬撃。あれは柱のもの…。柱が技を出して車両の勢いを殺したんだ…!なんてすごい力…!!)
名前は改めて柱の力を感じた。
先程までは恐怖しか感じなかったが、目の前の光景を見て、尊敬の域まで達したのだった。
あの柱にもう一度だけ会いたい、名前は殺されかけたにも関わらずそう思った。
(もしかしたら、竈門さんのように話せばわかってくれる人かもしれないし…。それに、人間の命を守るためとはいえ、私のこと殺さないでくれた。)
名前はまた鬼狩りに命を救われたのだ。
炭治郎と煉獄、二人に恩を返すことを名前は心に決めた。
名前が二人を探そうと決めた直後、ぞわりと名前に悪寒が走った。
まるで、無惨と会った時のような感覚だった。
(なんだか、嫌な予感がする…。)
名前は先頭車両方面へ向かうため、強く地面を蹴った。