1章
おなまえ
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麓の鬼を切り、炭治郎は名前の元に戻ろうと足を進めていた。
(そんなに時間はかかっていないが…。)
炭治郎は名前が他の鬼とは異なり、対話ができ無闇矢鱈に人間を襲わない鬼であるという確信は得ていた。
しかし、だからといって飢餓状態の鬼を無防備に放っておけるほど鬼を信頼したわけではなかった。
だからこそ名前のいる洞窟に戻った時、その場の光景を見て炭治郎は目を見開いたまま固まってしまったのだ。
名前は自らの腕に鬼特有の鋭い爪を押し当て、血を流し続けていた。
それは鬼にとっては飢餓状態にさらに追い打ちをかける行動であった。
ふと我に返り、炭治郎はすごい速さで名前の腕を掴んだ。
「何をやってるんだ!!今、自分は飢餓状態だって分かってるんだろ!?こんなことしたら、尚更辛くなる上に人間をさらに食べたくなってしまう!」
名前は抵抗することなく、自分へ怒鳴る炭治郎をぼうっと見つめ返し、小さな声でこう答えた。
「私の血の匂いは、私にも害があるの…。この匂いを嗅ぎ続ければ気を失って…竈門さんを食べたいだなんて思わなくなると思って…。」
言い終えると、名前の身体は力を失い、炭治郎に身を預けるように気を失った。
炭治郎は名前のその言葉と行動に言葉を失った。
そして名前を見つめ、小さく息を吐いた。
「珠世さん。俺、この人は信頼していいと思います…。」
どこにいるか分からない、味方の鬼に向かってぽつりと呟いた。
ゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井が見えた。
名前はパチパチと数回瞬きをし、意識をはっきりさせようとした。
「お目覚めですか。」
右側から女性の声がし、名前がそちらに目を向けると、美しい女性とこちらを睨みつける青年が扉の所に立っていた。
名前は上半身を起こし、2人を見つめ返した。
「珠世さんと愈史郎さんでしょうか。」
久しぶりに声を出したかのような、かすれた声が出た。
女性はゆっくりと頷くと、はい、と答えた。
そしてベットに近づき、すぐ横にある小さな椅子に腰掛けた。
「初めまして名前さん。私は珠世と申します。こちらは愈史郎です。貴女のことは炭治郎さんからお話を聞いています。」
珠世の後ろに立つ愈史郎が、恨めしそうに名前を睨み続けていたが、珠世にすぐに咎められ大人しくなった。
「炭治郎さんと出会ってからの貴女の行動はお聞きしました。鬼とはいえ随分自殺行為をしたものです。ここへ炭治郎さんに連れてこられた時にはもう自我を失いかけていて危ない状況でした。間に合って本当に良かった。」
珠世の話を聞いて、名前は炭治郎が自分を背負ってここまで連れてきてくれたことに驚いた。
そして、あぁまた借りを作ってしまったと思った。
「自我を失ってしまったらもう貴女を殺すしか無かった。」
珠世は眉間に皺を寄せて言った。
「竈門さんに命を救われたのは2回目です。お礼をまたお伝えしないと…。」
名前が自分の手元を見ながらそう呟くのを珠世はじっと見ていた。
愈史郎がまた名前を睨みつけていたが、二人は気にせず会話を続けた。
「貴女の血を調べさせてもらいました。名前さん、貴女の血は忌血と呼ばれるものです。もう実感されているようですが、忌血は、鬼にとっては毒のようなもの。鬼舞辻も貴女の血の匂いが気に入らず、自らの血を入れることで匂いを消しさろうとしていたのでしょう。」
珠世の話によると、忌血は何千年も前から存在しているが、無惨がその血を持つものを鬼化させていった。
鬼化することで忌血の匂いや効力が薄れるだけでなく、自らが手を下さなくても鬼狩りに切られて消滅するようになる。
そうして忌血を持つものは現代にはほとんどいなくなった。
忌血の効力として挙げられるものは、その匂いで鬼を寄せつけなくなること、その血を取り入れた鬼は約300人分の人間を食べた力を失うこと。
名前は自分の血にそこまでの力があるとは思っていなかった。
ぼんやりと自分で傷つけた腕を見つめる。
傷跡は全く残っていなかった。
「貴女には少しだけ人間の血を飲ませました。もう飢餓状態ではないでしょう。」
「はい、ありがとうございます。」
「もう少し休んでからで構いませんので、あとで上の階に上がってきてください。お話したいことがあります。」
そう言って珠世は立ち上がり、部屋を出ていった。
愈史郎はふんと鼻を鳴らして名前をひと睨みし、珠世について行った。
(そんなに時間はかかっていないが…。)
炭治郎は名前が他の鬼とは異なり、対話ができ無闇矢鱈に人間を襲わない鬼であるという確信は得ていた。
しかし、だからといって飢餓状態の鬼を無防備に放っておけるほど鬼を信頼したわけではなかった。
だからこそ名前のいる洞窟に戻った時、その場の光景を見て炭治郎は目を見開いたまま固まってしまったのだ。
名前は自らの腕に鬼特有の鋭い爪を押し当て、血を流し続けていた。
それは鬼にとっては飢餓状態にさらに追い打ちをかける行動であった。
ふと我に返り、炭治郎はすごい速さで名前の腕を掴んだ。
「何をやってるんだ!!今、自分は飢餓状態だって分かってるんだろ!?こんなことしたら、尚更辛くなる上に人間をさらに食べたくなってしまう!」
名前は抵抗することなく、自分へ怒鳴る炭治郎をぼうっと見つめ返し、小さな声でこう答えた。
「私の血の匂いは、私にも害があるの…。この匂いを嗅ぎ続ければ気を失って…竈門さんを食べたいだなんて思わなくなると思って…。」
言い終えると、名前の身体は力を失い、炭治郎に身を預けるように気を失った。
炭治郎は名前のその言葉と行動に言葉を失った。
そして名前を見つめ、小さく息を吐いた。
「珠世さん。俺、この人は信頼していいと思います…。」
どこにいるか分からない、味方の鬼に向かってぽつりと呟いた。
ゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井が見えた。
名前はパチパチと数回瞬きをし、意識をはっきりさせようとした。
「お目覚めですか。」
右側から女性の声がし、名前がそちらに目を向けると、美しい女性とこちらを睨みつける青年が扉の所に立っていた。
名前は上半身を起こし、2人を見つめ返した。
「珠世さんと愈史郎さんでしょうか。」
久しぶりに声を出したかのような、かすれた声が出た。
女性はゆっくりと頷くと、はい、と答えた。
そしてベットに近づき、すぐ横にある小さな椅子に腰掛けた。
「初めまして名前さん。私は珠世と申します。こちらは愈史郎です。貴女のことは炭治郎さんからお話を聞いています。」
珠世の後ろに立つ愈史郎が、恨めしそうに名前を睨み続けていたが、珠世にすぐに咎められ大人しくなった。
「炭治郎さんと出会ってからの貴女の行動はお聞きしました。鬼とはいえ随分自殺行為をしたものです。ここへ炭治郎さんに連れてこられた時にはもう自我を失いかけていて危ない状況でした。間に合って本当に良かった。」
珠世の話を聞いて、名前は炭治郎が自分を背負ってここまで連れてきてくれたことに驚いた。
そして、あぁまた借りを作ってしまったと思った。
「自我を失ってしまったらもう貴女を殺すしか無かった。」
珠世は眉間に皺を寄せて言った。
「竈門さんに命を救われたのは2回目です。お礼をまたお伝えしないと…。」
名前が自分の手元を見ながらそう呟くのを珠世はじっと見ていた。
愈史郎がまた名前を睨みつけていたが、二人は気にせず会話を続けた。
「貴女の血を調べさせてもらいました。名前さん、貴女の血は忌血と呼ばれるものです。もう実感されているようですが、忌血は、鬼にとっては毒のようなもの。鬼舞辻も貴女の血の匂いが気に入らず、自らの血を入れることで匂いを消しさろうとしていたのでしょう。」
珠世の話によると、忌血は何千年も前から存在しているが、無惨がその血を持つものを鬼化させていった。
鬼化することで忌血の匂いや効力が薄れるだけでなく、自らが手を下さなくても鬼狩りに切られて消滅するようになる。
そうして忌血を持つものは現代にはほとんどいなくなった。
忌血の効力として挙げられるものは、その匂いで鬼を寄せつけなくなること、その血を取り入れた鬼は約300人分の人間を食べた力を失うこと。
名前は自分の血にそこまでの力があるとは思っていなかった。
ぼんやりと自分で傷つけた腕を見つめる。
傷跡は全く残っていなかった。
「貴女には少しだけ人間の血を飲ませました。もう飢餓状態ではないでしょう。」
「はい、ありがとうございます。」
「もう少し休んでからで構いませんので、あとで上の階に上がってきてください。お話したいことがあります。」
そう言って珠世は立ち上がり、部屋を出ていった。
愈史郎はふんと鼻を鳴らして名前をひと睨みし、珠世について行った。