1章
おなまえ
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この山に入る前から漂っていた藤の花の香りは、炭治郎が療養を取っている屋敷から来ていた。
屋敷の周りをぐるっと1周藤の花が囲っていると、歩いている途中で炭治郎が名前に話した。
無惨の呪いを無自覚ながら外している名前だが、鬼であることは変わらない。
屋敷に近づくにつれ、名前の拒否反応が激しくなったので、名前は屋敷からは少し離れた洞窟に身を休めることにした。
そして、血の研究をしている鬼に連絡を取るため、手紙を用意してくると炭治郎言い、一度別れた。
今まで名前が出会った鬼殺隊士は、炭治郎、善逸、伊之助の三人だ。
もちろん他の鬼殺隊士を見かけたことは何度もあったが、会話したり交戦したのはこの三人しかいない。
しかし問答無用で切りかかってきたのは伊之助だけで、他の二人は会話を先に求めてきた。
名前の中で鬼殺隊は思っているよりも鬼に優しいのではないかという認識が生まれ始めていた。
もちろんこの考えは後々裏切られるのだが、今の名前はとにかく味方が増えたことが嬉しかったのだ。
「名前さーん!」
しばらくすると、洞窟の入口から炭治郎の声がした。
炭治郎は手紙と短刀のようなものを持って戻ってきた。
話を聞くと、名前の血を届けるのと一緒に手紙も届けるのだという。
名前はそれに了承し、短刀に血が溜まった直後、にゃあん、と猫の声がして炭治郎の背後から猫が一匹現れた。
「この猫が珠世さんに血を届けてくれるんです。」
「賢い猫なんですね。」
「そうなんです!それに愈史郎さんの血鬼術で見えなくなるんです、凄いですよね。」
炭治郎が猫に短刀と手紙を渡している時に、名前は届け先の鬼の詳細を聞いた。
珠世という女性の鬼が血の研究を行っているということ。
愈史郎という男性の鬼は珠世さんが作り出した鬼だということ。
炭治郎から話を聞いているうちに名前は、鬼である自分より炭治郎の方が鬼に詳しいのではないかと思った。
(鬼になったからって、無条件で鬼に詳しくなれるわけではないんだよね。まだこんなに知らないことがある…。)
名前は自分の知識の薄さを呪った。
人間の時から変わらず、与えられる情報だけしか学んできていなかったのだ。
今後は自らの進んで情報や知識を勝ち取りに行くことを名前決意した。
(まずは、これが一歩だ。珠世さんと愈史郎さんから、できる限りの情報を引き出そう。)
珠世さんから返事が来るまで待って欲しいと言われ、3日が経った。
3日間、名前は洞窟に篭もり続けた。
毎晩炭治郎が様子を見に来てくれたが、名前にとってそれは少しだけ残酷な行動だった。
(お腹…すいたな…。)
空腹が名前を襲っていた。
死体安置所で人間を食べた名前だったが、それ以来人間を食べていなかった。
一度人間の味を覚えた鬼は、人間を食べずにはいられない。
名前がどんなに我慢しても、炭治郎がどんどん美味しそうに見えてきてしまう。
名前は、命の恩人かつ、自分の戦う力の道標を与えてくれた、仲間のような存在に対して食べたいと思ってしまう自分が本当に嫌だと思った。
(名前さん、お腹がすいているんだ。可哀想に。それでも俺を襲わないでいてくれる。
このまま珠世さんが言っていた1週間、どうか俺を襲わないでいてほしい。)
炭治郎は手紙に名前のことを書いた。
完全に鬼だが珠世に似た匂いがすること
人間を食べたことのある鬼の匂いであること
自分や伊之助を襲わず対話する自我があること
素直に血を取らせてくれたこと
そして何より、無惨の呪いを外していること
それらのことから、珠世のもとで人間を食べないような鬼にしてもらえないか依頼をした。
珠世からの返事は、1週間毎日炭治郎自らの会いに行き、名前が食べることを我慢できたならこちらに寄越してくださいとの事だった。
手紙を出した翌日には返事が来ていたのだが、炭治郎は黙っていた。
約束の1週間が過ぎ去るまで。
日に日に名前は口数が減り、炭治郎から距離をとるようになった。
それでも炭治郎は毎日会いに行き、その日にあったことを話し続けた。
約束の1週間の最終日が来た。
その日もいつもと変わらず炭治郎は話に来た。
「それで今日は善逸が鍛錬の途中で池に落ちちゃって、それを見て伊之助は大笑いしたんですけど、善逸が怒って伊之助も池に引き込んで二人してアオイさんに怒られてましたよ。」
あはは、と笑って炭治郎は話していた。
名前も笑顔を返すものの、ほとんどその内容は頭に入っていない。
(もう、この人を食べてしまうくらいなら逃げてしまおうか。)
名前はそんなことをぼんやりと考えていた。
すると、話し続けていた炭治郎がぴたりと話をやめた。
名前は不思議に思い炭治郎を見ると、炭治郎は周りの気配を探り警戒していた。
そしてちらりと名前の方を見ると、
「近くに鬼が来ました。」
と、ぽつりと言った。
炭治郎は鬼を切りに向かった。
(おそらく山の麓にいる。藤の花の香りでこれ以上この山には近づけないはずだ。)
炭治郎は、飢餓状態であの場に残してきた名前が心配だったが、今は鬼の対処が先だと思い、さらに走る速度を上げた。
屋敷の周りをぐるっと1周藤の花が囲っていると、歩いている途中で炭治郎が名前に話した。
無惨の呪いを無自覚ながら外している名前だが、鬼であることは変わらない。
屋敷に近づくにつれ、名前の拒否反応が激しくなったので、名前は屋敷からは少し離れた洞窟に身を休めることにした。
そして、血の研究をしている鬼に連絡を取るため、手紙を用意してくると炭治郎言い、一度別れた。
今まで名前が出会った鬼殺隊士は、炭治郎、善逸、伊之助の三人だ。
もちろん他の鬼殺隊士を見かけたことは何度もあったが、会話したり交戦したのはこの三人しかいない。
しかし問答無用で切りかかってきたのは伊之助だけで、他の二人は会話を先に求めてきた。
名前の中で鬼殺隊は思っているよりも鬼に優しいのではないかという認識が生まれ始めていた。
もちろんこの考えは後々裏切られるのだが、今の名前はとにかく味方が増えたことが嬉しかったのだ。
「名前さーん!」
しばらくすると、洞窟の入口から炭治郎の声がした。
炭治郎は手紙と短刀のようなものを持って戻ってきた。
話を聞くと、名前の血を届けるのと一緒に手紙も届けるのだという。
名前はそれに了承し、短刀に血が溜まった直後、にゃあん、と猫の声がして炭治郎の背後から猫が一匹現れた。
「この猫が珠世さんに血を届けてくれるんです。」
「賢い猫なんですね。」
「そうなんです!それに愈史郎さんの血鬼術で見えなくなるんです、凄いですよね。」
炭治郎が猫に短刀と手紙を渡している時に、名前は届け先の鬼の詳細を聞いた。
珠世という女性の鬼が血の研究を行っているということ。
愈史郎という男性の鬼は珠世さんが作り出した鬼だということ。
炭治郎から話を聞いているうちに名前は、鬼である自分より炭治郎の方が鬼に詳しいのではないかと思った。
(鬼になったからって、無条件で鬼に詳しくなれるわけではないんだよね。まだこんなに知らないことがある…。)
名前は自分の知識の薄さを呪った。
人間の時から変わらず、与えられる情報だけしか学んできていなかったのだ。
今後は自らの進んで情報や知識を勝ち取りに行くことを名前決意した。
(まずは、これが一歩だ。珠世さんと愈史郎さんから、できる限りの情報を引き出そう。)
珠世さんから返事が来るまで待って欲しいと言われ、3日が経った。
3日間、名前は洞窟に篭もり続けた。
毎晩炭治郎が様子を見に来てくれたが、名前にとってそれは少しだけ残酷な行動だった。
(お腹…すいたな…。)
空腹が名前を襲っていた。
死体安置所で人間を食べた名前だったが、それ以来人間を食べていなかった。
一度人間の味を覚えた鬼は、人間を食べずにはいられない。
名前がどんなに我慢しても、炭治郎がどんどん美味しそうに見えてきてしまう。
名前は、命の恩人かつ、自分の戦う力の道標を与えてくれた、仲間のような存在に対して食べたいと思ってしまう自分が本当に嫌だと思った。
(名前さん、お腹がすいているんだ。可哀想に。それでも俺を襲わないでいてくれる。
このまま珠世さんが言っていた1週間、どうか俺を襲わないでいてほしい。)
炭治郎は手紙に名前のことを書いた。
完全に鬼だが珠世に似た匂いがすること
人間を食べたことのある鬼の匂いであること
自分や伊之助を襲わず対話する自我があること
素直に血を取らせてくれたこと
そして何より、無惨の呪いを外していること
それらのことから、珠世のもとで人間を食べないような鬼にしてもらえないか依頼をした。
珠世からの返事は、1週間毎日炭治郎自らの会いに行き、名前が食べることを我慢できたならこちらに寄越してくださいとの事だった。
手紙を出した翌日には返事が来ていたのだが、炭治郎は黙っていた。
約束の1週間が過ぎ去るまで。
日に日に名前は口数が減り、炭治郎から距離をとるようになった。
それでも炭治郎は毎日会いに行き、その日にあったことを話し続けた。
約束の1週間の最終日が来た。
その日もいつもと変わらず炭治郎は話に来た。
「それで今日は善逸が鍛錬の途中で池に落ちちゃって、それを見て伊之助は大笑いしたんですけど、善逸が怒って伊之助も池に引き込んで二人してアオイさんに怒られてましたよ。」
あはは、と笑って炭治郎は話していた。
名前も笑顔を返すものの、ほとんどその内容は頭に入っていない。
(もう、この人を食べてしまうくらいなら逃げてしまおうか。)
名前はそんなことをぼんやりと考えていた。
すると、話し続けていた炭治郎がぴたりと話をやめた。
名前は不思議に思い炭治郎を見ると、炭治郎は周りの気配を探り警戒していた。
そしてちらりと名前の方を見ると、
「近くに鬼が来ました。」
と、ぽつりと言った。
炭治郎は鬼を切りに向かった。
(おそらく山の麓にいる。藤の花の香りでこれ以上この山には近づけないはずだ。)
炭治郎は、飢餓状態であの場に残してきた名前が心配だったが、今は鬼の対処が先だと思い、さらに走る速度を上げた。