1章
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
伊之助は気合いが入っていた。
色々あったが無事に全集中・常中を会得し、自慢の愛刀も手元に戻ってきて、あとはしのぶから怪我が回復したことを確認してもらえば、やっと任務に戻ることが出来る。
常に戦いに身を置いていたい伊之助にとって、任務に行けることはご褒美のようなものだった。
善逸とは天と地の差である。
刀を振りたくてうずうずした伊之助は、夕食後こっそり蝶屋敷を抜け出し、近くの山で素振りを行っていた。
(早く戦いてぇ!しのぶ、いつになったら許可してくれんだ!!)
夢中で刀を振り回し、以前よりも格段に動きやすく、刀を振りやすくなったことを確認する伊之助。
全集中・常中をしているのとしていないのでは、動きに大きな違いがある。
詳しい理論は伊之助には理解できなかったが、自分で動いてみると格段に違うことを実感出来た。
基本的に伊之助は自分の本能に従い、我が道を行くタイプではあるが、人から教えてもらい、それを身につけることで彼自身が大きく成長する節もあるようだった。
ひと回りもふた周りも成長した伊之助に、今は戦いへの飢えが加わり、気配を認知する感覚が冴えたのだろう。
伊之助はこの山の中に鬼が入ってきたことを察した。
瞬時に刀を持ち直し、気配を察知した方へ走った。
「ガハハハ!ついてるぜェ!山の王である俺様のもとに、ノコノコ現れるなんてなァ!!」
しのぶから完治のお達しは出ていないが、鬼が出たならば伊之助がやることは一つだ。
猪の被り物の下で、伊之助は舌なめずりをした。
伊之助が鬼の侵入に気づいた同刻、名前は蝶屋敷近くの山の中に踏み入れた。
山に近づけば近づくほど藤の花の香りは強くなり、名前の精神を蝕んだ。
(こんなにも藤の花は鬼にとって有害なんだ…。)
名前はだいぶ弱っており、気配を探れない状態だった。
そのため、鬼狩りがいることに全く気が付かないまま入山した。
フラフラと力なく歩く名前が、とてつもない速さで向かってくる伊之助と出会うまでは大した時間はかからなかった。
「猪突猛進!!猪突猛進!!」
名前が鬼狩りに気づいたのは、その人物が発する大声が聞こえる距離になってからだった。
すごい速度で向かってくる鬼狩りに気づく距離としては、致命的な距離である。
これでは、逃げることも隠れることも出来なかった。
(まずい…!この状態で戦うことなんてできない。どうする…!)
名前がどうするか考えている間もなく、ギザギザに刃こぼれした刀が振り下ろされる。
咄嗟の判断でそれを避けた名前が、刀を振り下ろした人物に目を向ける。
「……いの……し…し?」
名前に背を向け、顔だけこちらに向けて立っていたのは、半裸で猪の皮を被った男だった。
猪の男は刀を真っ直ぐ名前に向けて言い放った。
「お前鬼だな。この伊之助様がテメェを切り刻んでやるぜェ!!」
そう言うと直ぐに2本の刀で切りかかってきた。
名前は声を発する暇もなく、斬撃を避け続けた。
藤の花の影響で弱っている名前にとっては、避けることも一苦労で、致命傷はないものの少しずつ傷が増えていく。
(くそ、この、猪…!攻撃が速いし低い…!!
この状態じゃ分が悪すぎる。どうする、どうする…!!)
考えているうちにまたひとつ傷ができる。
自分の血の匂いが漂い、それがまた名前を追い詰める。
もうほとんど、動くことが出来なくなってきていた。
「ゲハハハ!こんなんじゃ準備運動にもならねぇぜ!!俺の前に現れたのが運の尽きだったなぁ!」
猪の皮の下で楽しそうに笑っていた鬼狩りが、突如構えを変えた。
カァァァァという音ともに呼吸音が変わった。
その瞬間、名前は死を覚悟した。
(この攻撃は絶対に避けられない。)
その場にぺたんと座り込み、自分への攻撃を待った。
猪の男は手に持った二つの刀を交差させながら技を繰り出した。
「獣の呼吸 参ノ牙 喰い裂き」
凄まじい斬撃が名前を襲う、はずだった。
しかし刀は名前の元に届く前に、名前を庇うように目の前に立つ男がその刃を刀で受け止めていた。
「オイ!何すんだてめぇ!!」
「悪い伊之助!俺はこの人から聞きたいことがあるんだ!」
男の揺れる耳飾りを見ながら、名前は意識を手放した。
色々あったが無事に全集中・常中を会得し、自慢の愛刀も手元に戻ってきて、あとはしのぶから怪我が回復したことを確認してもらえば、やっと任務に戻ることが出来る。
常に戦いに身を置いていたい伊之助にとって、任務に行けることはご褒美のようなものだった。
善逸とは天と地の差である。
刀を振りたくてうずうずした伊之助は、夕食後こっそり蝶屋敷を抜け出し、近くの山で素振りを行っていた。
(早く戦いてぇ!しのぶ、いつになったら許可してくれんだ!!)
夢中で刀を振り回し、以前よりも格段に動きやすく、刀を振りやすくなったことを確認する伊之助。
全集中・常中をしているのとしていないのでは、動きに大きな違いがある。
詳しい理論は伊之助には理解できなかったが、自分で動いてみると格段に違うことを実感出来た。
基本的に伊之助は自分の本能に従い、我が道を行くタイプではあるが、人から教えてもらい、それを身につけることで彼自身が大きく成長する節もあるようだった。
ひと回りもふた周りも成長した伊之助に、今は戦いへの飢えが加わり、気配を認知する感覚が冴えたのだろう。
伊之助はこの山の中に鬼が入ってきたことを察した。
瞬時に刀を持ち直し、気配を察知した方へ走った。
「ガハハハ!ついてるぜェ!山の王である俺様のもとに、ノコノコ現れるなんてなァ!!」
しのぶから完治のお達しは出ていないが、鬼が出たならば伊之助がやることは一つだ。
猪の被り物の下で、伊之助は舌なめずりをした。
伊之助が鬼の侵入に気づいた同刻、名前は蝶屋敷近くの山の中に踏み入れた。
山に近づけば近づくほど藤の花の香りは強くなり、名前の精神を蝕んだ。
(こんなにも藤の花は鬼にとって有害なんだ…。)
名前はだいぶ弱っており、気配を探れない状態だった。
そのため、鬼狩りがいることに全く気が付かないまま入山した。
フラフラと力なく歩く名前が、とてつもない速さで向かってくる伊之助と出会うまでは大した時間はかからなかった。
「猪突猛進!!猪突猛進!!」
名前が鬼狩りに気づいたのは、その人物が発する大声が聞こえる距離になってからだった。
すごい速度で向かってくる鬼狩りに気づく距離としては、致命的な距離である。
これでは、逃げることも隠れることも出来なかった。
(まずい…!この状態で戦うことなんてできない。どうする…!)
名前がどうするか考えている間もなく、ギザギザに刃こぼれした刀が振り下ろされる。
咄嗟の判断でそれを避けた名前が、刀を振り下ろした人物に目を向ける。
「……いの……し…し?」
名前に背を向け、顔だけこちらに向けて立っていたのは、半裸で猪の皮を被った男だった。
猪の男は刀を真っ直ぐ名前に向けて言い放った。
「お前鬼だな。この伊之助様がテメェを切り刻んでやるぜェ!!」
そう言うと直ぐに2本の刀で切りかかってきた。
名前は声を発する暇もなく、斬撃を避け続けた。
藤の花の影響で弱っている名前にとっては、避けることも一苦労で、致命傷はないものの少しずつ傷が増えていく。
(くそ、この、猪…!攻撃が速いし低い…!!
この状態じゃ分が悪すぎる。どうする、どうする…!!)
考えているうちにまたひとつ傷ができる。
自分の血の匂いが漂い、それがまた名前を追い詰める。
もうほとんど、動くことが出来なくなってきていた。
「ゲハハハ!こんなんじゃ準備運動にもならねぇぜ!!俺の前に現れたのが運の尽きだったなぁ!」
猪の皮の下で楽しそうに笑っていた鬼狩りが、突如構えを変えた。
カァァァァという音ともに呼吸音が変わった。
その瞬間、名前は死を覚悟した。
(この攻撃は絶対に避けられない。)
その場にぺたんと座り込み、自分への攻撃を待った。
猪の男は手に持った二つの刀を交差させながら技を繰り出した。
「獣の呼吸 参ノ牙 喰い裂き」
凄まじい斬撃が名前を襲う、はずだった。
しかし刀は名前の元に届く前に、名前を庇うように目の前に立つ男がその刃を刀で受け止めていた。
「オイ!何すんだてめぇ!!」
「悪い伊之助!俺はこの人から聞きたいことがあるんだ!」
男の揺れる耳飾りを見ながら、名前は意識を手放した。