自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
第2話『新米マネージャー達は入部初日を迎える』
主人公名前変換
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テニス部マネージャー初日の朝。麻美はいつもより身だしなみに気を遣って朝練に向かった。
家を出て少し歩けば幼馴染みである真田の家が見えてくる。登下校の通り道でもあるが、相手は朝早くから遅い時間までテニスに明け暮れているため、例え家が近くても登下校で顔を合わすことは全くなかった。
(でも、今日からは違う)
麻美は確信していた。会話すらしない冷めた関係は今日で終わると。マネージャーになったなら登下校が一緒になる確率も上がると。
ピタリ、と立派な玄関前で足を止めた麻美は偶然を装って真田と鉢合わせるのを狙っていた。
胸の鼓動が速くなる。だって久々に言葉を交えるかもしれないという現実がすぐそこまできているのだ。
普段は他人に興味がないといった態度を示す麻美だが、それは間違いである。正しくはたった一人の人間にしか興味がないのだ。
(……)
しかし、5分ほど待ってはみたが、扉が開く音は聞こえてこない。
気合を入れて早く家を出たのにもしかしたらすでに学校へ向かったのか? そんな考えも過ぎった麻美はこのまま一人で待つのはさすがに近所から怪しまれると懸念を抱き、諦めて一人で部活に向かおうと歩き出した。
せっかく気合を入れたのに、と不機嫌そうな顔をして真田の家を通り過ぎたすぐのことだった。
ガラリと麻美の後ろから引き戸の音が聞こえたので、彼女の足はその音に反応して動きを止める。
人の気配がする。当たり前だ。扉の開く音がしたのだから。麻美の中で一気に緊張感が走り、いつ後ろを振り向くか考えたが━━。
「麻美、か?」
久々に近くで聞こえる渋い声。しかも昔と変わらず名前で呼んでくれたことにドキリとした。胸が爆発するんじゃないかと錯覚してしまうほどに。
名前を呼ばれたなら無視するわけにはいかない。そう言い聞かせてゆっくり振り返れば、そこには間違いなく麻美の想い人である真田弦一郎が立っていた。
「弦、一郎……」
口にするのも実に久々であった。心の中では何度も呼んでいたその名はどのくらいぶりに口から発したのか分からない。そのせいだろう、いやそのせいに違いない。少しだけ声が掠れてしまったのだ。その恥ずかしさと真田に会えた嬉しさで顔が熱くなる。
そんなあからさまな表情を相手に見られたくないため、少し顔を逸らして会話を試みた。
「おはよ……」
「あぁ、おはよう。……」
「……」
会話が途切れてしまった。麻美は内心慌てる。こんなに早く会話が続かなくなるとは思わなかったからだ。しかし、考えれば分かることだと彼女は気づく。
何せ彼と話をするのは小学校4年生以来。好きなのに周りの目が気になってしまい、恥ずかしさも相まって真田から距離を置いたのは麻美からだ。
気まずいと向こうが思っているに違いない。そう考えると会話なんて続くわけがないだろう。
もうダメだ。振り切って逃げよう。そう思った矢先のことだった。
「……今日からうちのマネージャーになるそうだな?」
意外にも真田から会話の種を生んでくれた。これはチャンスだ。もう少し話を続けることが出来る。そう思った麻美は決心した目で真田を見つめた。まるで睨みつけるかのように。
「あぁ。弦一郎がいるから」
「俺が……?」
まさかのそう返ってくるとは思っていなかったと言わんばかりの驚きの表情に麻美はしまったと思わずにはいられなかった。
これは正直に言いすぎた。変に思われてしまう。そう焦り始める麻美は言い訳のように言葉を紡いだ。
「げ、弦一郎がいるから、部活も真剣に取り組んでいると思って……。遊びみたいな気分の部活には入りたくないし……」
「なるほど、そうだったのか」
ふむ。と頷く真田だったが、またそこで会話が止まってしまった。というより相手が何か考え込んでいるようにも見える。
もしかして何かおかしなことを言ったのか? 大丈夫だと思っていたが見抜かれていたのか? あれこれと自分の言動を振り返りながらも麻美は顔には出さないようにポーカーフェイスを徹する。
「……てっきり、嫌われたものだと思っていた」
「え……?」
「お前の口から拒絶するような言葉を聞かない限り気のせいだと思うようにしていたが、避けられているという思いが拭えなかった。だから話しかけても鬱陶しがられるかもしれないと思っていてお前に関わらないようにしていたのだが……いらぬ気遣いだったな」
心做しか真田の表情が安堵の笑みを浮かべているようだった。しかし、呆れられるならともかく、嫌われていたと思っていたことに麻美は衝撃を受けていた。
嫌うなんて思うはずないのに。声を大にして言いたかったが、麻美にはそんな度胸はなかった。
自分から勝手に離れたのに気遣ってくれたことが麻美にとっては嬉しくて、そんな彼の優しさにまた心が跳ね上がる。
「あれは……その、周りが変な噂を立てたりするかもしれないから……つい……」
「そうだったのか。お前はお前で悩んでいたのだな」
そんなんじゃない。そんな重いものではない。いや、想いが重いことは認める。
「もし、俺達のことでとやかく言う奴がいれば俺が注意しよう。だからまた昔のようによろしくやってはくれないか?」
まさか、向こうからそう言ってくれるなんて。また声が震えそうになったが、麻美は一度唾を飲み込み、軽く喉を整えた。
「もちろん。またよろしく頼む、弦一郎」
「あぁ」
真田も僅かに表情が柔らかくなっているような気がした。社交辞令ではないことが窺える。
こうしてまた真田と対話出来るようになった麻美は嬉しさのあまり叫びたい気持ちをぐっと堪えて、相手に見えないように後ろ手で小さく力強い拳を作りながら何年かぶりに幼馴染みと登校したのだった。
家を出て少し歩けば幼馴染みである真田の家が見えてくる。登下校の通り道でもあるが、相手は朝早くから遅い時間までテニスに明け暮れているため、例え家が近くても登下校で顔を合わすことは全くなかった。
(でも、今日からは違う)
麻美は確信していた。会話すらしない冷めた関係は今日で終わると。マネージャーになったなら登下校が一緒になる確率も上がると。
ピタリ、と立派な玄関前で足を止めた麻美は偶然を装って真田と鉢合わせるのを狙っていた。
胸の鼓動が速くなる。だって久々に言葉を交えるかもしれないという現実がすぐそこまできているのだ。
普段は他人に興味がないといった態度を示す麻美だが、それは間違いである。正しくはたった一人の人間にしか興味がないのだ。
(……)
しかし、5分ほど待ってはみたが、扉が開く音は聞こえてこない。
気合を入れて早く家を出たのにもしかしたらすでに学校へ向かったのか? そんな考えも過ぎった麻美はこのまま一人で待つのはさすがに近所から怪しまれると懸念を抱き、諦めて一人で部活に向かおうと歩き出した。
せっかく気合を入れたのに、と不機嫌そうな顔をして真田の家を通り過ぎたすぐのことだった。
ガラリと麻美の後ろから引き戸の音が聞こえたので、彼女の足はその音に反応して動きを止める。
人の気配がする。当たり前だ。扉の開く音がしたのだから。麻美の中で一気に緊張感が走り、いつ後ろを振り向くか考えたが━━。
「麻美、か?」
久々に近くで聞こえる渋い声。しかも昔と変わらず名前で呼んでくれたことにドキリとした。胸が爆発するんじゃないかと錯覚してしまうほどに。
名前を呼ばれたなら無視するわけにはいかない。そう言い聞かせてゆっくり振り返れば、そこには間違いなく麻美の想い人である真田弦一郎が立っていた。
「弦、一郎……」
口にするのも実に久々であった。心の中では何度も呼んでいたその名はどのくらいぶりに口から発したのか分からない。そのせいだろう、いやそのせいに違いない。少しだけ声が掠れてしまったのだ。その恥ずかしさと真田に会えた嬉しさで顔が熱くなる。
そんなあからさまな表情を相手に見られたくないため、少し顔を逸らして会話を試みた。
「おはよ……」
「あぁ、おはよう。……」
「……」
会話が途切れてしまった。麻美は内心慌てる。こんなに早く会話が続かなくなるとは思わなかったからだ。しかし、考えれば分かることだと彼女は気づく。
何せ彼と話をするのは小学校4年生以来。好きなのに周りの目が気になってしまい、恥ずかしさも相まって真田から距離を置いたのは麻美からだ。
気まずいと向こうが思っているに違いない。そう考えると会話なんて続くわけがないだろう。
もうダメだ。振り切って逃げよう。そう思った矢先のことだった。
「……今日からうちのマネージャーになるそうだな?」
意外にも真田から会話の種を生んでくれた。これはチャンスだ。もう少し話を続けることが出来る。そう思った麻美は決心した目で真田を見つめた。まるで睨みつけるかのように。
「あぁ。弦一郎がいるから」
「俺が……?」
まさかのそう返ってくるとは思っていなかったと言わんばかりの驚きの表情に麻美はしまったと思わずにはいられなかった。
これは正直に言いすぎた。変に思われてしまう。そう焦り始める麻美は言い訳のように言葉を紡いだ。
「げ、弦一郎がいるから、部活も真剣に取り組んでいると思って……。遊びみたいな気分の部活には入りたくないし……」
「なるほど、そうだったのか」
ふむ。と頷く真田だったが、またそこで会話が止まってしまった。というより相手が何か考え込んでいるようにも見える。
もしかして何かおかしなことを言ったのか? 大丈夫だと思っていたが見抜かれていたのか? あれこれと自分の言動を振り返りながらも麻美は顔には出さないようにポーカーフェイスを徹する。
「……てっきり、嫌われたものだと思っていた」
「え……?」
「お前の口から拒絶するような言葉を聞かない限り気のせいだと思うようにしていたが、避けられているという思いが拭えなかった。だから話しかけても鬱陶しがられるかもしれないと思っていてお前に関わらないようにしていたのだが……いらぬ気遣いだったな」
心做しか真田の表情が安堵の笑みを浮かべているようだった。しかし、呆れられるならともかく、嫌われていたと思っていたことに麻美は衝撃を受けていた。
嫌うなんて思うはずないのに。声を大にして言いたかったが、麻美にはそんな度胸はなかった。
自分から勝手に離れたのに気遣ってくれたことが麻美にとっては嬉しくて、そんな彼の優しさにまた心が跳ね上がる。
「あれは……その、周りが変な噂を立てたりするかもしれないから……つい……」
「そうだったのか。お前はお前で悩んでいたのだな」
そんなんじゃない。そんな重いものではない。いや、想いが重いことは認める。
「もし、俺達のことでとやかく言う奴がいれば俺が注意しよう。だからまた昔のようによろしくやってはくれないか?」
まさか、向こうからそう言ってくれるなんて。また声が震えそうになったが、麻美は一度唾を飲み込み、軽く喉を整えた。
「もちろん。またよろしく頼む、弦一郎」
「あぁ」
真田も僅かに表情が柔らかくなっているような気がした。社交辞令ではないことが窺える。
こうしてまた真田と対話出来るようになった麻美は嬉しさのあまり叫びたい気持ちをぐっと堪えて、相手に見えないように後ろ手で小さく力強い拳を作りながら何年かぶりに幼馴染みと登校したのだった。