自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
第11話『都大会での再会を果たす』
主人公名前変換
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「え。今なんて?」
土曜日の夜。時間は20時前後、風呂上がりの麻美は部屋の中で濡れた髪をタオルで拭きながら、スマートフォンに着信が入った相手と話をしていた。その相手は秋からだ。
『明日は都大会なんだって。ちょうど部活も休みだし、麻美の従兄妹の赤澤くんも出るから応援しに行こうよ』
「断る」
『行かないの? それに応援だけじゃなく、敵情視察も兼ねてるから。柳くんにもお願いされてるんだけど……』
「……」
敵情視察。そう言われると麻美は決断が揺らいだ。遊びでなく敵情視察なら行く行くは立海のため、テニス部のため、真田のためとなるから。
例えすでにデータを収集していそうな柳が欲しがる情報なんてないかもしれないが真田との会話のネタになり得る。麻美はそう思った。
「そういうことなら行ってやる」
『良かった。それじゃあ遥には私から伝えておくからね。待ち合わせ時間と場所はまた後でメッセージで送るから。こんな時間に電話かけちゃってごめんね』
「この時間なら構わないけど」
『それなら安心したよ、ありがとう。それじゃあ明日ね』
「あぁ」と、告げると麻美は電話を切った。正直従兄妹の応援なんて気が進まないし、顔を合わせたら暑苦しくて仕方ないので出来れば話はしたくない。
「しかも明日、か……」
軽く溜め息を吐き捨てる。実は明日は真田の家へ訪ねようと思っていたので麻美は惜しいことをしたな、という後悔の気持ちでいっぱいだった。
最近になってテニス部のマネージャーになったことを親に言うと「じゃあ、また弦一郎くんにお世話になっちゃうわね」と言われ、弦一郎くんに、と麻美に菓子折りを渡したのだ。
だから麻美は明日にでも真田の家に向かうつもりだった。
(今の時間じゃ遅いし……。明日の朝方なら大丈夫か?)
学校で手渡すことも考えていたが、周りの目があるのでそれだけは避けたかった。
そう決めた麻美はスマホのメッセージアプリを開き、真田宛にメッセージを打ち込む。
明日の朝方、少しだけ時間はあるか? 渡したい物がある。
短文なのにメッセージの内容を何度も読み返し、確認が終わるとすぐに送信した。あまりメッセージのやり取りが多いわけではないため、麻美はどこか緊張の面持ちである。
それから2、3分後、真田からの返事が返ってきて、内容は『あぁ、大丈夫だ』と一行だけだったが、彼らしい返事だったので麻美は少し笑みがこぼれた。
次の日。
雀の鳴き声が聞こえてくる時刻。麻美は真田の家を訪ねると真田の兄が対応し、道場にいると言われたため、麻美は真田家の敷地に足を踏み入れると昔よく通っていた道場へと向かった。
静かな道場へと辿り着くと、大きく開いた引き戸の扉の前から目的の人物が見えた。袴姿の真田が一人で瞑想をしているのか、目を瞑って正座をしている様子。
それを見た麻美は精神統一か、と理解し、彼の邪魔をしてはいけないと感じる。
麻美はただ立って、真田が自分に気づくのを待っていた。
あの姿を見るのはいつぶりだろうか……。そう思うのも仕方ない。幼い頃は袴姿の真田を何度も見た麻美だったが、長い期間その姿を目にしなくなったのだから。
中学になった今再び袴を着た真田の雄々しい姿に胸の鼓動が増した。
「……麻美か?」
「!」
目を閉じたままだというのに気配で麻美の存在に気づいたのか、名前を呼ぶ真田に麻美はびくりと心臓と肩が跳ねた。
平常心、平常心、と心の中で唱えながら口を開く。
「あぁ……悪い。朝早い上に邪魔をして」
麻美の声を聞いた真田がゆっくりと目を開ける。
「昨夜、連絡もくれたのだから気にするな。それで渡したい物とは?」
「これ。また色々世話になるだろうからって母が弦一郎に。多分、中身は和菓子」
道場の入口から真田の前へと近づいた麻美は真田と同じくその場で正座をし、持って来た菓子折りが入った紙袋を目の前の彼に差し出した。
「今さら気遣いは無用だろう」
「親が勝手にしたことだ。家族と食べてやってくれ」
「そうか……分かった。有難く頂こう」
「あぁ。それじゃあ、邪魔したな」
用件が終わり、名残惜しくもあるが約束もあるため麻美は立ち上がった。だが、そんな麻美に真田は少し不思議そうな顔をする。
「もう行くのか? 昔みたいにゆっくりしていけばいいだろう。母もお前に会いたがっていたからな」
「そうしたいのは山々だけど……用事が出来た。都大会に行って敵情視察」
「ほう? 一人でか?」
「いや、あいつらも……秋と遥も一緒だな」
「そうか、それは良かったな」
「っ……」
真田が少しだけ柔らかく笑った。あまり見ることはないその表情に麻美の体温も一気に上昇し、顔も赤くなる。
「じゃ、じゃあまたっ……」
「あぁ」
朱に染る顔を見せたくない麻美はすぐに背を向け、早足で道場から出て行った。あの顔は反則だ、と思いながら。
土曜日の夜。時間は20時前後、風呂上がりの麻美は部屋の中で濡れた髪をタオルで拭きながら、スマートフォンに着信が入った相手と話をしていた。その相手は秋からだ。
『明日は都大会なんだって。ちょうど部活も休みだし、麻美の従兄妹の赤澤くんも出るから応援しに行こうよ』
「断る」
『行かないの? それに応援だけじゃなく、敵情視察も兼ねてるから。柳くんにもお願いされてるんだけど……』
「……」
敵情視察。そう言われると麻美は決断が揺らいだ。遊びでなく敵情視察なら行く行くは立海のため、テニス部のため、真田のためとなるから。
例えすでにデータを収集していそうな柳が欲しがる情報なんてないかもしれないが真田との会話のネタになり得る。麻美はそう思った。
「そういうことなら行ってやる」
『良かった。それじゃあ遥には私から伝えておくからね。待ち合わせ時間と場所はまた後でメッセージで送るから。こんな時間に電話かけちゃってごめんね』
「この時間なら構わないけど」
『それなら安心したよ、ありがとう。それじゃあ明日ね』
「あぁ」と、告げると麻美は電話を切った。正直従兄妹の応援なんて気が進まないし、顔を合わせたら暑苦しくて仕方ないので出来れば話はしたくない。
「しかも明日、か……」
軽く溜め息を吐き捨てる。実は明日は真田の家へ訪ねようと思っていたので麻美は惜しいことをしたな、という後悔の気持ちでいっぱいだった。
最近になってテニス部のマネージャーになったことを親に言うと「じゃあ、また弦一郎くんにお世話になっちゃうわね」と言われ、弦一郎くんに、と麻美に菓子折りを渡したのだ。
だから麻美は明日にでも真田の家に向かうつもりだった。
(今の時間じゃ遅いし……。明日の朝方なら大丈夫か?)
学校で手渡すことも考えていたが、周りの目があるのでそれだけは避けたかった。
そう決めた麻美はスマホのメッセージアプリを開き、真田宛にメッセージを打ち込む。
明日の朝方、少しだけ時間はあるか? 渡したい物がある。
短文なのにメッセージの内容を何度も読み返し、確認が終わるとすぐに送信した。あまりメッセージのやり取りが多いわけではないため、麻美はどこか緊張の面持ちである。
それから2、3分後、真田からの返事が返ってきて、内容は『あぁ、大丈夫だ』と一行だけだったが、彼らしい返事だったので麻美は少し笑みがこぼれた。
次の日。
雀の鳴き声が聞こえてくる時刻。麻美は真田の家を訪ねると真田の兄が対応し、道場にいると言われたため、麻美は真田家の敷地に足を踏み入れると昔よく通っていた道場へと向かった。
静かな道場へと辿り着くと、大きく開いた引き戸の扉の前から目的の人物が見えた。袴姿の真田が一人で瞑想をしているのか、目を瞑って正座をしている様子。
それを見た麻美は精神統一か、と理解し、彼の邪魔をしてはいけないと感じる。
麻美はただ立って、真田が自分に気づくのを待っていた。
あの姿を見るのはいつぶりだろうか……。そう思うのも仕方ない。幼い頃は袴姿の真田を何度も見た麻美だったが、長い期間その姿を目にしなくなったのだから。
中学になった今再び袴を着た真田の雄々しい姿に胸の鼓動が増した。
「……麻美か?」
「!」
目を閉じたままだというのに気配で麻美の存在に気づいたのか、名前を呼ぶ真田に麻美はびくりと心臓と肩が跳ねた。
平常心、平常心、と心の中で唱えながら口を開く。
「あぁ……悪い。朝早い上に邪魔をして」
麻美の声を聞いた真田がゆっくりと目を開ける。
「昨夜、連絡もくれたのだから気にするな。それで渡したい物とは?」
「これ。また色々世話になるだろうからって母が弦一郎に。多分、中身は和菓子」
道場の入口から真田の前へと近づいた麻美は真田と同じくその場で正座をし、持って来た菓子折りが入った紙袋を目の前の彼に差し出した。
「今さら気遣いは無用だろう」
「親が勝手にしたことだ。家族と食べてやってくれ」
「そうか……分かった。有難く頂こう」
「あぁ。それじゃあ、邪魔したな」
用件が終わり、名残惜しくもあるが約束もあるため麻美は立ち上がった。だが、そんな麻美に真田は少し不思議そうな顔をする。
「もう行くのか? 昔みたいにゆっくりしていけばいいだろう。母もお前に会いたがっていたからな」
「そうしたいのは山々だけど……用事が出来た。都大会に行って敵情視察」
「ほう? 一人でか?」
「いや、あいつらも……秋と遥も一緒だな」
「そうか、それは良かったな」
「っ……」
真田が少しだけ柔らかく笑った。あまり見ることはないその表情に麻美の体温も一気に上昇し、顔も赤くなる。
「じゃ、じゃあまたっ……」
「あぁ」
朱に染る顔を見せたくない麻美はすぐに背を向け、早足で道場から出て行った。あの顔は反則だ、と思いながら。