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第1話『部長は病室にてミッションを言い渡す』
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クラスの担任から幸村にと渡されたプリントを預かった秋は彼が入院する病室の前までやって来た、が、彼女の足はピタリと止まる。
なぜなら中には二人の先客がいたため。話をしているようなので終わるまで待とうかなと考えていた矢先だった。
「九条さん、来てくれたんだ。そんな所にいないで入ってきてよ」
「幸村くん……でも今お邪魔じゃないかな?」
「九条、気にしないでいい。俺達は長居してくるくらいだからな」
「あ、柳くん」
生徒会で顔を合わせている柳の存在に気づくと顔見知りということもあり、少しホッとする秋は彼の隣に立つ真田にも目が入った。
(確か、この人は幸村くんと同じテニス部の……)
「真田。自己紹介くらいしてあげなよ」
「む。……3年A組、真田弦一郎だ。幸村と同じテニス部に所属してるゆえ、こうして見舞いに来ている」
「あ、私は幸村くんと同じ3年C組、九条秋と申します」
ぺこりと秋が頭を下げると真田も「うむ」と頷く。
なんだか堅いな~と笑う幸村だったが、そうさせたのはお前なのでは? と柳が僅かに彼へと細目を向ける。
「幸村くん、今日のプリントを持ってきたよ」
「あぁ、いつもありがとう。ごめんね、君にばかり任せて」
最初は幸村にプリントを届ける役目を誰にするかと教師がクラスに募ったところ、クラスの女子達がこぞって「私が、私が」と凄い勢いで挙手をして主張が激しかったため、収拾がつかない予感がした教師は諦めて素行のいい生徒であり、副生徒会長でもある秋を名指ししたのだ。
女子達からいっせいに羨望の眼差しで見られたことは秋もなかなかない体験ではあった。
その後、一緒について行きたいと群がる女子達からどう返答すればいいのか戸惑った秋に柳が助け船を出したこともある。
「これくらいお易い御用だよ。むしろ友達と会話中に乱入しちゃう形になってごめんね」
「大丈夫だよ。むしろ君を待ってたくらいなんだし」
「えっ?」
それは一体どういうこと? そう思った秋だったが、そこへ一人の男が勢いよく病室に飛び込んで来た。
「大変じゃ幸村! 近々デビュー予定だったマネージャーが『やっぱり自信がない』と言って抜けてしまったぜよっ」
仁王の突然の報告により、幸村の表情が驚きの色に変わる。
「なんだって! せっかく、揃えたというのになんてことだ……」
「困ったな、精市」
「あぁ……俺がいない間、部員達に苦労をかけまいと少しでも負担を減らすためにマネージャーを人知れず整えてきたというのに……」
なんてことだ。そう呟きながら自身の片手で顔を覆う幸村は酷く落胆していた。
柳は彼の肩を叩き慰めるような素振りを見せ、真田は無言のまま帽子のつばを持って自分の顔を隠す。仁王はそんな幸村を見ていられないと言わんばかりに顔を俯かせ逸らしていた。
秋は突然の空気の変わりように戸惑いながら恐る恐る幸村に尋ねる。
「ゆ、幸村くん……マネージャーを探すのは大変なの……?」
「そう、だね。信頼出来る人に任せたいから誰でもいいってわけじゃないんだ。例えば……そう、九条さんみたいな気遣い出来る人とか」
「えっ?」
「あぁ、ごめんね。さすがに唐突すぎたかな。九条さんはいつも俺を気にかけてくれるし、優しいからつい甘えてしまって……」
「無理もない。お前はただでさえ病を患っているんだ。誰かに頼りたくなるのもよく分かる」
「蓮二もすまない。……でも、本当に彼女のような人材がそうそういるとも限らなくてね。せめて俺の代わりにテニス部を全国まで共に駆け抜けてくれる人がいたら……」
弱々しく儚げな表情で呟く幸村の言葉に秋は胸を締め付けられた。
長らく入院している彼がコートに立てない今、大会にも出場することも出来ない。それに彼にとって中学最後のテニスだ。
いつも優しい笑みと共に病室で出迎えてくれた幸村が悔しさと悲しさを滲ませていて、自分に何か出来ることはないかと秋は必死に考えた。
私が、彼のために何か出来ることを……。
そして彼女は決心した。
「幸村くん。差し出がましいかもしれないけど……私にお手伝い出来るかな?」
「九条さん……それってつまり、うちのマネージャーになってくれるってことかい?」
「うん……その、私じゃ力不足かもしれないけど……」
決心したとはいえ、自信なさげに言葉を漏らす秋に幸村は「とんでもない!」と告げて彼女の手を握った。
「願ってもないことだよ! 君なら安心して任せられるし、ありがたいくらいだ!」
「でも、本当にそんな期待しないでね。私がどこまで力になれるか分からないから……」
「九条、そんなに謙遜することはない。分からないことや困ったことがあれば俺達がサポートする。お前なら出来るのでそこは自信を持っていい。そうだろう? 弦一郎」
「あぁ……問題ない」
「ありがとう、柳くん。真田くん」
幸村、柳、真田から安心出来る言葉をもらい、秋も少しだけ気持ちが軽くなる。
これで少しは幸村くんの力になれるかな、とテニスが出来ない彼のことを思った。
こうして秋がテニス部のマネージャーになることが決まり、しばらくしてから彼女が帰っていくと幸村がいい笑みを浮かべた。
「いやーいい演技だったよ、みんな! 仁王もいいタイミングだったね」
「プリッ。まぁ、このくらいなら余裕じゃき」
「柳も俺を心配する様子はさすがだったよ」
「九条の性格を考えるとあのくらいが妥当だと思ってな」
「真田に関しては心配だったけど、口数を少なくしたおかげで怪しまれなかったし」
「……これは相手を騙したようなものではないのか? 普通に勧誘すれば良かっただろう」
「真田、俺からお願いするのと彼女からお願いするのでは何が違うか分からないかい?」
「? 何が違うと言うのだ?」
「辞めさせにくくするためだよ。自分からお願いした手前、真面目な彼女がそう簡単に辞めたいと口にすることは出来ないだろうし、これで逃げられずにすむということさ」
清々しい笑顔でそう告げる幸村に真田は眉間に皺を寄せる。正々堂々、真っ向勝負が信条でもある彼にとっては幸村のやり方はあまり褒められたものではなかった。
「これも部活の士気を上げるためだよ」
「全くそうは思えんが」
「もう終わったことだ、弦一郎。あとは実際に部活が始まって様子を見てから考えよう」
「……そうだな」
結局、過ぎてしまったことはどうしようもない。己も強く止めることは出来なかったということもあり、真田は溜め息をついて受け入れることにした。
なぜなら中には二人の先客がいたため。話をしているようなので終わるまで待とうかなと考えていた矢先だった。
「九条さん、来てくれたんだ。そんな所にいないで入ってきてよ」
「幸村くん……でも今お邪魔じゃないかな?」
「九条、気にしないでいい。俺達は長居してくるくらいだからな」
「あ、柳くん」
生徒会で顔を合わせている柳の存在に気づくと顔見知りということもあり、少しホッとする秋は彼の隣に立つ真田にも目が入った。
(確か、この人は幸村くんと同じテニス部の……)
「真田。自己紹介くらいしてあげなよ」
「む。……3年A組、真田弦一郎だ。幸村と同じテニス部に所属してるゆえ、こうして見舞いに来ている」
「あ、私は幸村くんと同じ3年C組、九条秋と申します」
ぺこりと秋が頭を下げると真田も「うむ」と頷く。
なんだか堅いな~と笑う幸村だったが、そうさせたのはお前なのでは? と柳が僅かに彼へと細目を向ける。
「幸村くん、今日のプリントを持ってきたよ」
「あぁ、いつもありがとう。ごめんね、君にばかり任せて」
最初は幸村にプリントを届ける役目を誰にするかと教師がクラスに募ったところ、クラスの女子達がこぞって「私が、私が」と凄い勢いで挙手をして主張が激しかったため、収拾がつかない予感がした教師は諦めて素行のいい生徒であり、副生徒会長でもある秋を名指ししたのだ。
女子達からいっせいに羨望の眼差しで見られたことは秋もなかなかない体験ではあった。
その後、一緒について行きたいと群がる女子達からどう返答すればいいのか戸惑った秋に柳が助け船を出したこともある。
「これくらいお易い御用だよ。むしろ友達と会話中に乱入しちゃう形になってごめんね」
「大丈夫だよ。むしろ君を待ってたくらいなんだし」
「えっ?」
それは一体どういうこと? そう思った秋だったが、そこへ一人の男が勢いよく病室に飛び込んで来た。
「大変じゃ幸村! 近々デビュー予定だったマネージャーが『やっぱり自信がない』と言って抜けてしまったぜよっ」
仁王の突然の報告により、幸村の表情が驚きの色に変わる。
「なんだって! せっかく、揃えたというのになんてことだ……」
「困ったな、精市」
「あぁ……俺がいない間、部員達に苦労をかけまいと少しでも負担を減らすためにマネージャーを人知れず整えてきたというのに……」
なんてことだ。そう呟きながら自身の片手で顔を覆う幸村は酷く落胆していた。
柳は彼の肩を叩き慰めるような素振りを見せ、真田は無言のまま帽子のつばを持って自分の顔を隠す。仁王はそんな幸村を見ていられないと言わんばかりに顔を俯かせ逸らしていた。
秋は突然の空気の変わりように戸惑いながら恐る恐る幸村に尋ねる。
「ゆ、幸村くん……マネージャーを探すのは大変なの……?」
「そう、だね。信頼出来る人に任せたいから誰でもいいってわけじゃないんだ。例えば……そう、九条さんみたいな気遣い出来る人とか」
「えっ?」
「あぁ、ごめんね。さすがに唐突すぎたかな。九条さんはいつも俺を気にかけてくれるし、優しいからつい甘えてしまって……」
「無理もない。お前はただでさえ病を患っているんだ。誰かに頼りたくなるのもよく分かる」
「蓮二もすまない。……でも、本当に彼女のような人材がそうそういるとも限らなくてね。せめて俺の代わりにテニス部を全国まで共に駆け抜けてくれる人がいたら……」
弱々しく儚げな表情で呟く幸村の言葉に秋は胸を締め付けられた。
長らく入院している彼がコートに立てない今、大会にも出場することも出来ない。それに彼にとって中学最後のテニスだ。
いつも優しい笑みと共に病室で出迎えてくれた幸村が悔しさと悲しさを滲ませていて、自分に何か出来ることはないかと秋は必死に考えた。
私が、彼のために何か出来ることを……。
そして彼女は決心した。
「幸村くん。差し出がましいかもしれないけど……私にお手伝い出来るかな?」
「九条さん……それってつまり、うちのマネージャーになってくれるってことかい?」
「うん……その、私じゃ力不足かもしれないけど……」
決心したとはいえ、自信なさげに言葉を漏らす秋に幸村は「とんでもない!」と告げて彼女の手を握った。
「願ってもないことだよ! 君なら安心して任せられるし、ありがたいくらいだ!」
「でも、本当にそんな期待しないでね。私がどこまで力になれるか分からないから……」
「九条、そんなに謙遜することはない。分からないことや困ったことがあれば俺達がサポートする。お前なら出来るのでそこは自信を持っていい。そうだろう? 弦一郎」
「あぁ……問題ない」
「ありがとう、柳くん。真田くん」
幸村、柳、真田から安心出来る言葉をもらい、秋も少しだけ気持ちが軽くなる。
これで少しは幸村くんの力になれるかな、とテニスが出来ない彼のことを思った。
こうして秋がテニス部のマネージャーになることが決まり、しばらくしてから彼女が帰っていくと幸村がいい笑みを浮かべた。
「いやーいい演技だったよ、みんな! 仁王もいいタイミングだったね」
「プリッ。まぁ、このくらいなら余裕じゃき」
「柳も俺を心配する様子はさすがだったよ」
「九条の性格を考えるとあのくらいが妥当だと思ってな」
「真田に関しては心配だったけど、口数を少なくしたおかげで怪しまれなかったし」
「……これは相手を騙したようなものではないのか? 普通に勧誘すれば良かっただろう」
「真田、俺からお願いするのと彼女からお願いするのでは何が違うか分からないかい?」
「? 何が違うと言うのだ?」
「辞めさせにくくするためだよ。自分からお願いした手前、真面目な彼女がそう簡単に辞めたいと口にすることは出来ないだろうし、これで逃げられずにすむということさ」
清々しい笑顔でそう告げる幸村に真田は眉間に皺を寄せる。正々堂々、真っ向勝負が信条でもある彼にとっては幸村のやり方はあまり褒められたものではなかった。
「これも部活の士気を上げるためだよ」
「全くそうは思えんが」
「もう終わったことだ、弦一郎。あとは実際に部活が始まって様子を見てから考えよう」
「……そうだな」
結局、過ぎてしまったことはどうしようもない。己も強く止めることは出来なかったということもあり、真田は溜め息をついて受け入れることにした。