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第8話『神奈川と東京の地区予選』
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「おおぉぉ! 県大会っ!」
「私達にとっては初めての大会だね」
一方、王者立海が君臨する神奈川でも県大会が始まろうとしていた。
秋と遥は立海ベンチに座り、もうすぐ始まる試合コートを眺め応援に徹する。
立海大附属は16年連続関東大会を優勝し、2年連続全国大会優勝の輝かしい成績を残している。そのため最強王者立海と謳われており、他校の選手達は立海の姿を見る度に尊敬の眼差しを向けていた。
「お前らこれくらいで興奮してんじゃねーぞ。そのうち全国大会だって行くんだからな」
ぷくーっと風船ガムを膨らませながらキャッキャと仲良く盛り上がるマネージャー二人に丸井が声をかけた。
「全国大会って凄いの?」
「そりゃあな。凄いの一言じゃ終わらねーぜ」
遥の疑問に簡単に答える桑原。それを聞いてますます全国大会が楽しみでならない気持ちになった。
「そういえば今日の県大会のテーマは『体力を使わない』だったよね」
先ほど真田がレギュラー達に話していた内容を秋は思い出す。
王者ゆえに、王者だからこそ完璧に相手を叩きのめし、最速で試合を終わらせる。それが我らの県大会テーマだ。
そう語っていた真田はどんな相手だろうと手加減する気配は微塵も見えなくて、部長である幸村が不在だというのに秋から見ても彼はとても頼もしかった。
「そーそー。王者が県大会で時間かけて無駄な体力使うわけにもいかねーからな。ま、楽勝だろぃ」
「確かにこんなところで躓いてたら常勝なんて言ってられないだろうし、真田にもどやされる。決勝戦だってシングルス3の赤也で終わっちまうだろ」
まだ試合も始まってないというのに丸井と桑原は県大会優勝する気満々であった。
「さっすが我が校のラスボステニス部!」
「遥……それだと悪役っぽく聞こえるよ」
まるで最後は打ちのめされるような縁起でもない言葉にも聞こえなくないので秋はやんわりと注意する。
そんな中、丸井がきょろきょろしながら誰かを探していた。
「そういや、赤宮の姿は見てねぇな。今日は来てないのか?」
「真田くんの話によると柿ノ木中の試合を観に行ったみたいだよ」
「柿ノ木中の偵察……? 必要か、それ? 偵察するほどのレベルじゃなかったと思うが……」
「そーだなぁ。準備運動くらいにもなんねーって」
「めちゃくちゃディスるじゃん。それにしても麻美も仕事熱心だこと! 我がテニス部の大会より偵察を優先しちゃうんだから。あたしには出来ないなぁ~!」
腕を組みながら、うんうんと頷く遥だったが、彼女は気づかなかった。後ろに眼鏡のジェントルマンが立っていることに。
「ならば赤宮さんが頑張っている間、西成さんは別のことを頑張ってもらいましょう」
「!!」
「あ、柳生くん」
遥が柳生の存在に気付き、ゆっくり後ろを振り向いた。嫌な予感を感じて冷や汗を流さずにはいられない。
「お、応援だよね! 頑張るぞー。オー!」
「いいえ。今回は応援はしなくても結構なのでこちらを読んでおいて下さい」
腕を上げて無理やり応援する意欲を見せるも、柳生はきっぱりと否定した後に、一冊の雑誌を遥に手渡した。
「雑誌? ……えっと、『月刊プロテニス』? 何これ?」
「テニスの専門誌ですよ」
「な、なな何故プロテニス雑誌なんかを……!」
あたし達は学生なんだからプロテニスは関係ないでしょお!? そう訴えようとする遥に秋が補足した。
「プロだけじゃなく最近は学生テニスについての情報もあるし、色んなショットの打ち方も載ってるんだよ」
「へぇ、よく知ってるな」
桑原がそう口にすると秋は少し照れながら答えた。
「私も勉強のために買ってるの」
「さすがは九条さん。素晴らしい心掛けですね。西成さんも九条さんを見習ってください」
爽やかに言うも少しばかりの悪意があるのではと思いながら「うっ」と言葉に詰まる遥。
一度雑誌の表紙をジッと見てみる。どうやら今月は今年注目の中学テニス部特集のようだった。
「は、はは……。と、とにかくあとで読むよ、絶対! 今は応援を……」
「いいえ、結構です。巻末にはテニス用語もあるのですから少しでも覚えてもらわないと困るのは我々なんですよ? ほら、こちらのベンチよりあちらのベンチの方が静かで集中出来ますので。さぁ、行きましょう」
一刻も早くテニスルールを覚えてもらうため、柳生はコートから一番遠いベンチへと手で指し示し、場所変えを要求する。
「うううぅぅ……つーーまーーんーーなーーいーー!!」
唸りながらもここで駄々をこねたら柳生よりも怖い真田の雷が落ちるかもしれないという恐れを抱き、最後の抵抗として喚きながらも足だけは柳生の指示に従い、遠いベンチへと向かった。
そんな様子を残った三人は静かに見送る。
「……行っちゃった」
「比呂士も大変だねぇ」
「頑張れ、としか言いようがねぇな……」
「お前達。そろそろ時間だ。コートに集まるぞ」
ちょうど柳生と遥の入れ替わりで真田がやって来た。間もなく立海の最初の試合が始まるらしく、丸井と桑原はそれぞれ返事をしてコートの中へと入る。
「真田くん。県大会頑張ってね」
「あぁ。早々に終わらせよう」
「麻美も遥もいないから私だけなんだけど、精一杯応援するよ」
「いや、この程度ならば応援がなくとも勝利は見えている。その応援は今後に取っておくべきだろう」
凄い自信だ。そう思いながらも立海の過去の功績を思い出した秋は結果があっての自信だと理解する。でも、応援がなくてもいいのは少し寂しくもあった。
「そんなことないよ。今後もしっかり応援するし、今日だって変わらずに応援したいかな。邪魔にならなければ、なんだけど」
正直に応援したいことを伝える。マネージャーとなったからには自分も部員の一人として声援を送りたいため。
そんな秋の言葉に真田は少し間を空けたあと、ゆっくり頷いた。
「俺達に向けた声援に邪魔などと思うわけがない。お前がそのように言ってくれるのなら喜んで受け入れよう」
「ありがとう、真田くん」
「その程度で礼などいらん。……お前はもう少し肩の力を抜くべきだ」
「え?」
真田の言葉に秋はきょとんとした。そんなに肩を張っているつもりはなかったから。
「お前はただでさえ真面目にマネージャー業をこなしてくれているんだ。こういう時くらい息を抜いても構わんのだぞ」
未だに秋を騙してマネージャーへと引き入れたことに罪悪感を抱く真田は秋に無理をしないように伝えるが、彼女は小さく笑った。
「気遣ってくれてありがとう。十分に息を抜いてるつもりだし、応援するのはマネージャー業とは関係なく、私がしたいだけだから気にしないでいいんだよ」
ふふっ、と笑いかける秋に真田は少しの眩しさを覚えた。思わず視線を逸らそうと帽子のつばを持って目元を隠すくらいに。
「……ならばいい。無理をしないでくれたら構わん」
「真田くん、優しいね。無理はしないよ」
厳しいこともあるが、このように気遣う言葉もかけてくれる真田に秋はさらに嬉しくなった。
自分が真田よりもか弱い女子だからというのもあるかもしれないが、それでも優しく接してくれることが多いのでとても恵まれた部活に入部出来たと思わずにはいられない。
「俺は……九条、お前が思っているほど優しくはない」
そう伝えると真田は静かに秋の前を去った。照れ隠し、かと思ったのだけど声に深い重みがあったので本気でそう言ってきたと察する。
そんなことないのに……と思いながらも秋はその背中を見つめた。
(……やはり、黙ったままだというのは性に合わん。そのうち九条にはしっかりと本当のことを伝えよう)
真実を伝えずに騙したままなのは己の信念に反するほどである。こんな女々しい気持ちで、罪悪感を抱くくらいなら全て話してスッキリすべきだと考えた。
例え、幻滅してマネージャーを辞めるようなことになったとしても。
「私達にとっては初めての大会だね」
一方、王者立海が君臨する神奈川でも県大会が始まろうとしていた。
秋と遥は立海ベンチに座り、もうすぐ始まる試合コートを眺め応援に徹する。
立海大附属は16年連続関東大会を優勝し、2年連続全国大会優勝の輝かしい成績を残している。そのため最強王者立海と謳われており、他校の選手達は立海の姿を見る度に尊敬の眼差しを向けていた。
「お前らこれくらいで興奮してんじゃねーぞ。そのうち全国大会だって行くんだからな」
ぷくーっと風船ガムを膨らませながらキャッキャと仲良く盛り上がるマネージャー二人に丸井が声をかけた。
「全国大会って凄いの?」
「そりゃあな。凄いの一言じゃ終わらねーぜ」
遥の疑問に簡単に答える桑原。それを聞いてますます全国大会が楽しみでならない気持ちになった。
「そういえば今日の県大会のテーマは『体力を使わない』だったよね」
先ほど真田がレギュラー達に話していた内容を秋は思い出す。
王者ゆえに、王者だからこそ完璧に相手を叩きのめし、最速で試合を終わらせる。それが我らの県大会テーマだ。
そう語っていた真田はどんな相手だろうと手加減する気配は微塵も見えなくて、部長である幸村が不在だというのに秋から見ても彼はとても頼もしかった。
「そーそー。王者が県大会で時間かけて無駄な体力使うわけにもいかねーからな。ま、楽勝だろぃ」
「確かにこんなところで躓いてたら常勝なんて言ってられないだろうし、真田にもどやされる。決勝戦だってシングルス3の赤也で終わっちまうだろ」
まだ試合も始まってないというのに丸井と桑原は県大会優勝する気満々であった。
「さっすが我が校のラスボステニス部!」
「遥……それだと悪役っぽく聞こえるよ」
まるで最後は打ちのめされるような縁起でもない言葉にも聞こえなくないので秋はやんわりと注意する。
そんな中、丸井がきょろきょろしながら誰かを探していた。
「そういや、赤宮の姿は見てねぇな。今日は来てないのか?」
「真田くんの話によると柿ノ木中の試合を観に行ったみたいだよ」
「柿ノ木中の偵察……? 必要か、それ? 偵察するほどのレベルじゃなかったと思うが……」
「そーだなぁ。準備運動くらいにもなんねーって」
「めちゃくちゃディスるじゃん。それにしても麻美も仕事熱心だこと! 我がテニス部の大会より偵察を優先しちゃうんだから。あたしには出来ないなぁ~!」
腕を組みながら、うんうんと頷く遥だったが、彼女は気づかなかった。後ろに眼鏡のジェントルマンが立っていることに。
「ならば赤宮さんが頑張っている間、西成さんは別のことを頑張ってもらいましょう」
「!!」
「あ、柳生くん」
遥が柳生の存在に気付き、ゆっくり後ろを振り向いた。嫌な予感を感じて冷や汗を流さずにはいられない。
「お、応援だよね! 頑張るぞー。オー!」
「いいえ。今回は応援はしなくても結構なのでこちらを読んでおいて下さい」
腕を上げて無理やり応援する意欲を見せるも、柳生はきっぱりと否定した後に、一冊の雑誌を遥に手渡した。
「雑誌? ……えっと、『月刊プロテニス』? 何これ?」
「テニスの専門誌ですよ」
「な、なな何故プロテニス雑誌なんかを……!」
あたし達は学生なんだからプロテニスは関係ないでしょお!? そう訴えようとする遥に秋が補足した。
「プロだけじゃなく最近は学生テニスについての情報もあるし、色んなショットの打ち方も載ってるんだよ」
「へぇ、よく知ってるな」
桑原がそう口にすると秋は少し照れながら答えた。
「私も勉強のために買ってるの」
「さすがは九条さん。素晴らしい心掛けですね。西成さんも九条さんを見習ってください」
爽やかに言うも少しばかりの悪意があるのではと思いながら「うっ」と言葉に詰まる遥。
一度雑誌の表紙をジッと見てみる。どうやら今月は今年注目の中学テニス部特集のようだった。
「は、はは……。と、とにかくあとで読むよ、絶対! 今は応援を……」
「いいえ、結構です。巻末にはテニス用語もあるのですから少しでも覚えてもらわないと困るのは我々なんですよ? ほら、こちらのベンチよりあちらのベンチの方が静かで集中出来ますので。さぁ、行きましょう」
一刻も早くテニスルールを覚えてもらうため、柳生はコートから一番遠いベンチへと手で指し示し、場所変えを要求する。
「うううぅぅ……つーーまーーんーーなーーいーー!!」
唸りながらもここで駄々をこねたら柳生よりも怖い真田の雷が落ちるかもしれないという恐れを抱き、最後の抵抗として喚きながらも足だけは柳生の指示に従い、遠いベンチへと向かった。
そんな様子を残った三人は静かに見送る。
「……行っちゃった」
「比呂士も大変だねぇ」
「頑張れ、としか言いようがねぇな……」
「お前達。そろそろ時間だ。コートに集まるぞ」
ちょうど柳生と遥の入れ替わりで真田がやって来た。間もなく立海の最初の試合が始まるらしく、丸井と桑原はそれぞれ返事をしてコートの中へと入る。
「真田くん。県大会頑張ってね」
「あぁ。早々に終わらせよう」
「麻美も遥もいないから私だけなんだけど、精一杯応援するよ」
「いや、この程度ならば応援がなくとも勝利は見えている。その応援は今後に取っておくべきだろう」
凄い自信だ。そう思いながらも立海の過去の功績を思い出した秋は結果があっての自信だと理解する。でも、応援がなくてもいいのは少し寂しくもあった。
「そんなことないよ。今後もしっかり応援するし、今日だって変わらずに応援したいかな。邪魔にならなければ、なんだけど」
正直に応援したいことを伝える。マネージャーとなったからには自分も部員の一人として声援を送りたいため。
そんな秋の言葉に真田は少し間を空けたあと、ゆっくり頷いた。
「俺達に向けた声援に邪魔などと思うわけがない。お前がそのように言ってくれるのなら喜んで受け入れよう」
「ありがとう、真田くん」
「その程度で礼などいらん。……お前はもう少し肩の力を抜くべきだ」
「え?」
真田の言葉に秋はきょとんとした。そんなに肩を張っているつもりはなかったから。
「お前はただでさえ真面目にマネージャー業をこなしてくれているんだ。こういう時くらい息を抜いても構わんのだぞ」
未だに秋を騙してマネージャーへと引き入れたことに罪悪感を抱く真田は秋に無理をしないように伝えるが、彼女は小さく笑った。
「気遣ってくれてありがとう。十分に息を抜いてるつもりだし、応援するのはマネージャー業とは関係なく、私がしたいだけだから気にしないでいいんだよ」
ふふっ、と笑いかける秋に真田は少しの眩しさを覚えた。思わず視線を逸らそうと帽子のつばを持って目元を隠すくらいに。
「……ならばいい。無理をしないでくれたら構わん」
「真田くん、優しいね。無理はしないよ」
厳しいこともあるが、このように気遣う言葉もかけてくれる真田に秋はさらに嬉しくなった。
自分が真田よりもか弱い女子だからというのもあるかもしれないが、それでも優しく接してくれることが多いのでとても恵まれた部活に入部出来たと思わずにはいられない。
「俺は……九条、お前が思っているほど優しくはない」
そう伝えると真田は静かに秋の前を去った。照れ隠し、かと思ったのだけど声に深い重みがあったので本気でそう言ってきたと察する。
そんなことないのに……と思いながらも秋はその背中を見つめた。
(……やはり、黙ったままだというのは性に合わん。そのうち九条にはしっかりと本当のことを伝えよう)
真実を伝えずに騙したままなのは己の信念に反するほどである。こんな女々しい気持ちで、罪悪感を抱くくらいなら全て話してスッキリすべきだと考えた。
例え、幻滅してマネージャーを辞めるようなことになったとしても。