自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
第8話『神奈川と東京の地区予選』
主人公名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(ここが柿ノ木の出る地区大会の会場か……)
日曜日。麻美は柿ノ木中が出場する地区大会へと足を運んでいた。
本日は立海も神奈川県大会地区予選があるので本当はマネージャーとして、それより何より真田の応援として行きたかったが、彼女は九鬼貴一に会うためにこの地区予選会場にやって来た。
片手にはキンキンに冷えたスポーツ飲料を持って。
事の経緯はこの間の柿ノ木中との練習試合後のこと。帰り際に真田と話をする機会が少しあったので時間が許す限り話をしていた。
その際、柿ノ木中の主将である九鬼からスポーツ飲料水を貰ったことを話したのだが、どうやらそれがいけなかったようだ。
『ほぅ。ならば近々礼をするべきだな。聞いた話では九条も同じように差し入れをされたそうだ。マネージャーに気遣うとはマメな男だな』
なぜか九鬼への好感度が上がっていて麻美には解せない気持ちで一杯になる。
マネージャーにしか気遣えない男もどうかと思うが、と口にしたくなったが話に水を差すのも気が引けたので適当に相槌を打っていた。
『今度の県大会の日、向こうも地区大会があるので試合を終え次第俺からも直接何か差し入れをしてやろう』
『いや、弦一郎はそこまでしなくていいっ。それなら私が代わりにその役目を果たすから試合に集中してもらいたい!』
あのお調子者のために弦一郎を動かすわけにはいかない。というより、弦一郎があいつのために、と思うのが無性に腹が立つ。
嫉妬だとか、いけ好かないとか色々理由はあるが、大会後なのだから次の大会に向けて身体を休めてほしいというのが麻美の純粋な気持ちであった。もちろん、県大会如きでうちが負けるはずないと信じている。
けれど、そのせいで自分が神奈川県大会を蹴ってまで九鬼に会わなければならなくなったため、麻美は猛烈に後悔していた。これではお調子者は自分じゃないかと己自身にさえ苛立つ。
真田の手を煩わせたくないため、自分がその役目を引き受けたが、別にペットボトル一本くらいでここまでしてやる必要は本当にあったのかと自問自答してしまう。
というか、秋だって飲み物貰ったならあいつが代わりに行けば良かったんじゃないかと今更思いついてしまうが全て遅かった。
本当ならば今頃自分は弦一郎の応援をしていたはずなのに。全国三連覇を目指す序章とも言える最初の大会試合を拝めないなんて……!
そう思うと悔しくて悔しくて手に持つペットボトルに力が入る。ベコッと音が鳴るが、このまま潰してしまうと勿体ないので麻美はすぐに力を入れるのをやめた。
こうして麻美は酷い後悔を抱えながら一人で東京の地区大会会場へと足を踏み入れるのだった。
暫く辺りをうろうろしてみたが柿ノ木中のいるテニスコートが見つからない。地区予選会場となっている志季の森運動公園は広く、テニスコートもあちこちあるので麻美は迷ってしまった様子。
「……」
どこだここは? と疑問符を浮かべながら、とあるコートに辿り着く。どうやらそこは他のコートとは違い、人だかりが出来ていた。
確か柿ノ木中はシード校だったなということを思い出した麻美は「柿ノ木中はここか?」と小さく呟きながら近寄ってみる。しかし、人が多くてなかなかコートの様子が見えなかった。
なんでこんなに多いんだよ、たかが地区予選如きで。そう悪態つきそうになり、苛立ちの溜め息が漏れた麻美は誰かに尋ねようとして辺りを見回す。
すると男子テニス部の大会だというのに数少ない女子が観戦しているのを見つけたので麻美はその少女に声をかけてみることにした。
「なぁ、あんた。ここのコートに柿ノ木中はいるか?」
「え? 柿ノ木中? 柿ノ木中なら向こうのコートよ」
真ん中に分けられた髪の毛先は綺麗に切り揃えられ、ヘアピンをしている少女が違う方向に指を差した。それを見た麻美はその先へと目を向けて「そうか」と呟く。
「あなた、青学と玉林の試合は見ないの? 結構凄いことになってるみたいだけど」
青学という学校に麻美は聞き覚えがあった。それこそ記憶に新しい柿ノ木中との合同練習にて切原と遥がバスで寝過ごして辿り着いた学校だ。直接電話をして聞いたので麻美も何となくだがその名前を覚えている。
けれども今の麻美には関係のない学校だった。
「別に。私は青学も玉林にも興味ないから」
「そう? あ、柿ノ木中の応援に行くなら不動峰中も覚えておいて損はしないわよ」
「ふどう、みね?」
まだ他校のことは全く知らない麻美にとって不動峰が有名校なのかもさっぱりわからなかったため首を傾げる。
「えぇ。きっと、有名になるから。ファンになるなら今の内ね」
にっこり笑いながら「ファンクラブ設立してもいいわよ」なんてことまで言うので何かの勧誘なのかと思いながらも麻美は何も返答することなく黙ったまま彼女の前から立ち去った。
変な奴がいたもんだ。ふどうみね、という学校の回し者か。
なんて考えながら麻美はもう一度ヘアピンの少女へと視線を向ける。彼女はきょとんとしていたが、麻美と目が合えばにっこりと笑いながら手を振った。
それさえも無視して麻美は柿ノ木中へと向かう。
(ふどうみね……か)
日曜日。麻美は柿ノ木中が出場する地区大会へと足を運んでいた。
本日は立海も神奈川県大会地区予選があるので本当はマネージャーとして、それより何より真田の応援として行きたかったが、彼女は九鬼貴一に会うためにこの地区予選会場にやって来た。
片手にはキンキンに冷えたスポーツ飲料を持って。
事の経緯はこの間の柿ノ木中との練習試合後のこと。帰り際に真田と話をする機会が少しあったので時間が許す限り話をしていた。
その際、柿ノ木中の主将である九鬼からスポーツ飲料水を貰ったことを話したのだが、どうやらそれがいけなかったようだ。
『ほぅ。ならば近々礼をするべきだな。聞いた話では九条も同じように差し入れをされたそうだ。マネージャーに気遣うとはマメな男だな』
なぜか九鬼への好感度が上がっていて麻美には解せない気持ちで一杯になる。
マネージャーにしか気遣えない男もどうかと思うが、と口にしたくなったが話に水を差すのも気が引けたので適当に相槌を打っていた。
『今度の県大会の日、向こうも地区大会があるので試合を終え次第俺からも直接何か差し入れをしてやろう』
『いや、弦一郎はそこまでしなくていいっ。それなら私が代わりにその役目を果たすから試合に集中してもらいたい!』
あのお調子者のために弦一郎を動かすわけにはいかない。というより、弦一郎があいつのために、と思うのが無性に腹が立つ。
嫉妬だとか、いけ好かないとか色々理由はあるが、大会後なのだから次の大会に向けて身体を休めてほしいというのが麻美の純粋な気持ちであった。もちろん、県大会如きでうちが負けるはずないと信じている。
けれど、そのせいで自分が神奈川県大会を蹴ってまで九鬼に会わなければならなくなったため、麻美は猛烈に後悔していた。これではお調子者は自分じゃないかと己自身にさえ苛立つ。
真田の手を煩わせたくないため、自分がその役目を引き受けたが、別にペットボトル一本くらいでここまでしてやる必要は本当にあったのかと自問自答してしまう。
というか、秋だって飲み物貰ったならあいつが代わりに行けば良かったんじゃないかと今更思いついてしまうが全て遅かった。
本当ならば今頃自分は弦一郎の応援をしていたはずなのに。全国三連覇を目指す序章とも言える最初の大会試合を拝めないなんて……!
そう思うと悔しくて悔しくて手に持つペットボトルに力が入る。ベコッと音が鳴るが、このまま潰してしまうと勿体ないので麻美はすぐに力を入れるのをやめた。
こうして麻美は酷い後悔を抱えながら一人で東京の地区大会会場へと足を踏み入れるのだった。
暫く辺りをうろうろしてみたが柿ノ木中のいるテニスコートが見つからない。地区予選会場となっている志季の森運動公園は広く、テニスコートもあちこちあるので麻美は迷ってしまった様子。
「……」
どこだここは? と疑問符を浮かべながら、とあるコートに辿り着く。どうやらそこは他のコートとは違い、人だかりが出来ていた。
確か柿ノ木中はシード校だったなということを思い出した麻美は「柿ノ木中はここか?」と小さく呟きながら近寄ってみる。しかし、人が多くてなかなかコートの様子が見えなかった。
なんでこんなに多いんだよ、たかが地区予選如きで。そう悪態つきそうになり、苛立ちの溜め息が漏れた麻美は誰かに尋ねようとして辺りを見回す。
すると男子テニス部の大会だというのに数少ない女子が観戦しているのを見つけたので麻美はその少女に声をかけてみることにした。
「なぁ、あんた。ここのコートに柿ノ木中はいるか?」
「え? 柿ノ木中? 柿ノ木中なら向こうのコートよ」
真ん中に分けられた髪の毛先は綺麗に切り揃えられ、ヘアピンをしている少女が違う方向に指を差した。それを見た麻美はその先へと目を向けて「そうか」と呟く。
「あなた、青学と玉林の試合は見ないの? 結構凄いことになってるみたいだけど」
青学という学校に麻美は聞き覚えがあった。それこそ記憶に新しい柿ノ木中との合同練習にて切原と遥がバスで寝過ごして辿り着いた学校だ。直接電話をして聞いたので麻美も何となくだがその名前を覚えている。
けれども今の麻美には関係のない学校だった。
「別に。私は青学も玉林にも興味ないから」
「そう? あ、柿ノ木中の応援に行くなら不動峰中も覚えておいて損はしないわよ」
「ふどう、みね?」
まだ他校のことは全く知らない麻美にとって不動峰が有名校なのかもさっぱりわからなかったため首を傾げる。
「えぇ。きっと、有名になるから。ファンになるなら今の内ね」
にっこり笑いながら「ファンクラブ設立してもいいわよ」なんてことまで言うので何かの勧誘なのかと思いながらも麻美は何も返答することなく黙ったまま彼女の前から立ち去った。
変な奴がいたもんだ。ふどうみね、という学校の回し者か。
なんて考えながら麻美はもう一度ヘアピンの少女へと視線を向ける。彼女はきょとんとしていたが、麻美と目が合えばにっこりと笑いながら手を振った。
それさえも無視して麻美は柿ノ木中へと向かう。
(ふどうみね……か)