自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
第7話『合同練習とスパイ組』
主人公名前変換
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「柳くん、ごめんね。マネージャーの仕事を手伝ってもらっちゃって」
マネージャー業に励む秋だったが、やはり一人ではなかなかに忙しく、走り回っていた。そんな彼女を補佐しようと柳が手伝いを申し出たのだ。
最初は彼女も断ったものの「俺はすでに試合を終えた身だ。この方が周りにとっても効率がいいからな」と答えるとそれじゃあ……とお願いすることになり今に至る。
「いや、本来ならば校門前に向かった赤宮の役割を1年にお願いするべきなのに、赤宮のやる気に水を差し、業務に支障が出ると判断してしまった俺にも責任がある」
「そんな……柳くんがデータで導き出した答えなら責任なんて感じなくていいよ」
「ならばそっくりそのまま返そう。九条も責任を感じて謝罪などしなくていいのだ。それに最初に言っただろう? 困ったことがあったら俺達がサポートすると」
幸村の病室にてテニス部の手伝いになろうと口にしたあの日、確かに柳はそう言っていた。それを思い出した秋は申し訳なさそうな表情から安堵するような笑みに変わる。
「そうだね、ありがとう。柳くんは優しいね」
「……」
その言葉を聞いた柳は細目で秋を見つめたままただ黙っていた。そんな反応のない彼に秋は何かまずいことを言ってしまったのかと焦りを見せる。
「柳くん……? 何か気に障ること言っちゃったかな……?」
「あぁ、いや、気にしないでくれ。お前から見た俺はそう見えるのかと考えていただけだ」
「? だって柳くん、困ったことがあったら教えてくれるし、助けてくれるんだもの。もちろん、私にだけじゃなく周りにもそうしているところをよく見るし」
確かに困っていれば助けることもあるだろう。柳は秋の言葉に偽りはないと考えて頷いた。
ただ彼は秋に対して優しいかと問われるとそうとも言いきれないとも思っている。
何せ幸村の提案に乗り、秋を騙してマネージャーに引き入れたのだ。それを本人が知ったら優しいなんて印象は180度変わるだろう。
そのことを後悔してるのかと言えばそれはNOだ。ちゃんと彼女に真実を話してマネージャーに勧誘する手ももちろんあったが、萎縮してしまい「やっぱり私には合わない」と言われて辞められる可能性もなくはない。
秋は責任感があるからそのまま続けてくれる可能性もなくはないが、やはり確実性を増す方を柳は選んだ。秋の感情は考えずに。
責任感のある彼女が自分の口からマネージャーを志願すれば早々には逃げられない。
バランス良いマネージャー達が一人でも欠ければおそらく残り二人のマネージャーにも響くだろう。それは避けたいところだ。
結局のところテニス部のことしか考えず、特に秋に至っては嘘で手に入れた人材である。
罪悪感がこれっぽっちもないわけではないが、その分の償いとして少しは秋のことを気にかけるようにはしていた。
とはいえ悪事の片棒を担いだ人間が優しいと言えようか? 柳は自問自答しながら自嘲する。
「フフッ。優しいのは見てくれだけだ。中身がそうとは限らないだろう」
「そうだとしても、そう見えるように行動し続けていくのは凄いことだと思うよ。だから私は柳くんは優しいと思うの」
お世辞だろうと思った。しかし秋の顔を見れば一目瞭然である。彼女は柳の返答に困ることなく、柔らかく微笑みながら告げたのだ。その表情を見た柳がつられて口元が緩むほど。
「なるほど。お前がそう思うのなら多少胸を張っても良さそうだ」
「うん。だって柳くんははっきりものを言うことがあっても、人を傷つけるようなことはしてないしね」
客観的に見るとそうなのか、それとも秋の感性なのか、どちらにせよ今の秋を見ると退部する心配はないようなのでこのまま良好な関係を保っていようと柳は心に決める。
すでに終わった嘘もわざわざ彼女に言う必要はないだろう。嘘も方便なのだから。
そんな二人の元に不機嫌そうな麻美が戻ってきた。その両手には遥と切原の首根っこを掴んで引きずっている。
二人は眠っているのか、それとも麻美が気絶させたのかは分からない。
「おかえり、麻美っ。えっと……遥と切原くんは一体どうしたの?」
「……こいつらまたバスの中で寝ていやがったから次のバス停でぶん殴って引きずり降ろした」
「次のバス停、ということは赤宮はわざわざ走ったのか?」
「当たり前だろ」
「ほぅ。さすが、体力はあるな……」
ふむふむと頷きながら柳はノートを開き、メモを取っているようだった。
「そんなのはいいからこいつらをどうする?」
「そうだな、やはり弦一郎の元へ連れて行き、一度叱られてもらおう」
「分かった」
弦一郎の元へ、と聞いた麻美は秋と柳から離れると、そのまま二人を引きずりながら真田の元へ向かう━━その途中だった。
「待て待て待て、赤宮っ! 一度ストップ!」
麻美の前に突然丸井が現れた。
「丸井……何の用だ?」
「用って言うか、返すもんがあってよ……」
少し躊躇いがちではあったが丸井はポケットから生徒手帳を取り出し、麻美の前に差し出す。その瞬間、麻美は掴んでいた遥の首根っこを離し、中身を確認することなく瞬く暇もないスピードでそれを取り上げた。
気絶している遥は彼女の手が離れたことによってそのまま地面の上で転がってしまう。
「なんでお前が持ってんだっ!?」
ずいっと顔を寄せて睨みつける麻美に丸井は両手を上げながら背中と目を逸らす。
「いやいやいや、ぶつかって鞄をぶちまけた時があったろぃ? 多分そん時にでも間違って俺の鞄の中に━━」
「中身、見たのか?」
「名前の確認したくらい……」
「……中見てたらただじゃおかないからな」
脅すような言葉を突きつけ、麻美は再び遥の首根っこを掴み、フンと鼻を鳴らして丸井の横を通り過ぎた。
しかし、すでに中身を見てしまった丸井はよっぽど見られたくなかったんだな、と麻美の態度を見て確信する。
それと同時に写真を見てしまったことがバレたらただじゃすまないと言われたので、桑原の言う通り誰彼構わず麻美の秘密を明かさないため、口にチャックをした。
「……あそこまで言うってことは自分から秘密があるって言ってるようなもんじゃねーか」
ぽつりと呟くがもちろん麻美の耳に届かない音量なのでまださほど遠くない彼女に聞こえている様子はなかった。
マネージャー業に励む秋だったが、やはり一人ではなかなかに忙しく、走り回っていた。そんな彼女を補佐しようと柳が手伝いを申し出たのだ。
最初は彼女も断ったものの「俺はすでに試合を終えた身だ。この方が周りにとっても効率がいいからな」と答えるとそれじゃあ……とお願いすることになり今に至る。
「いや、本来ならば校門前に向かった赤宮の役割を1年にお願いするべきなのに、赤宮のやる気に水を差し、業務に支障が出ると判断してしまった俺にも責任がある」
「そんな……柳くんがデータで導き出した答えなら責任なんて感じなくていいよ」
「ならばそっくりそのまま返そう。九条も責任を感じて謝罪などしなくていいのだ。それに最初に言っただろう? 困ったことがあったら俺達がサポートすると」
幸村の病室にてテニス部の手伝いになろうと口にしたあの日、確かに柳はそう言っていた。それを思い出した秋は申し訳なさそうな表情から安堵するような笑みに変わる。
「そうだね、ありがとう。柳くんは優しいね」
「……」
その言葉を聞いた柳は細目で秋を見つめたままただ黙っていた。そんな反応のない彼に秋は何かまずいことを言ってしまったのかと焦りを見せる。
「柳くん……? 何か気に障ること言っちゃったかな……?」
「あぁ、いや、気にしないでくれ。お前から見た俺はそう見えるのかと考えていただけだ」
「? だって柳くん、困ったことがあったら教えてくれるし、助けてくれるんだもの。もちろん、私にだけじゃなく周りにもそうしているところをよく見るし」
確かに困っていれば助けることもあるだろう。柳は秋の言葉に偽りはないと考えて頷いた。
ただ彼は秋に対して優しいかと問われるとそうとも言いきれないとも思っている。
何せ幸村の提案に乗り、秋を騙してマネージャーに引き入れたのだ。それを本人が知ったら優しいなんて印象は180度変わるだろう。
そのことを後悔してるのかと言えばそれはNOだ。ちゃんと彼女に真実を話してマネージャーに勧誘する手ももちろんあったが、萎縮してしまい「やっぱり私には合わない」と言われて辞められる可能性もなくはない。
秋は責任感があるからそのまま続けてくれる可能性もなくはないが、やはり確実性を増す方を柳は選んだ。秋の感情は考えずに。
責任感のある彼女が自分の口からマネージャーを志願すれば早々には逃げられない。
バランス良いマネージャー達が一人でも欠ければおそらく残り二人のマネージャーにも響くだろう。それは避けたいところだ。
結局のところテニス部のことしか考えず、特に秋に至っては嘘で手に入れた人材である。
罪悪感がこれっぽっちもないわけではないが、その分の償いとして少しは秋のことを気にかけるようにはしていた。
とはいえ悪事の片棒を担いだ人間が優しいと言えようか? 柳は自問自答しながら自嘲する。
「フフッ。優しいのは見てくれだけだ。中身がそうとは限らないだろう」
「そうだとしても、そう見えるように行動し続けていくのは凄いことだと思うよ。だから私は柳くんは優しいと思うの」
お世辞だろうと思った。しかし秋の顔を見れば一目瞭然である。彼女は柳の返答に困ることなく、柔らかく微笑みながら告げたのだ。その表情を見た柳がつられて口元が緩むほど。
「なるほど。お前がそう思うのなら多少胸を張っても良さそうだ」
「うん。だって柳くんははっきりものを言うことがあっても、人を傷つけるようなことはしてないしね」
客観的に見るとそうなのか、それとも秋の感性なのか、どちらにせよ今の秋を見ると退部する心配はないようなのでこのまま良好な関係を保っていようと柳は心に決める。
すでに終わった嘘もわざわざ彼女に言う必要はないだろう。嘘も方便なのだから。
そんな二人の元に不機嫌そうな麻美が戻ってきた。その両手には遥と切原の首根っこを掴んで引きずっている。
二人は眠っているのか、それとも麻美が気絶させたのかは分からない。
「おかえり、麻美っ。えっと……遥と切原くんは一体どうしたの?」
「……こいつらまたバスの中で寝ていやがったから次のバス停でぶん殴って引きずり降ろした」
「次のバス停、ということは赤宮はわざわざ走ったのか?」
「当たり前だろ」
「ほぅ。さすが、体力はあるな……」
ふむふむと頷きながら柳はノートを開き、メモを取っているようだった。
「そんなのはいいからこいつらをどうする?」
「そうだな、やはり弦一郎の元へ連れて行き、一度叱られてもらおう」
「分かった」
弦一郎の元へ、と聞いた麻美は秋と柳から離れると、そのまま二人を引きずりながら真田の元へ向かう━━その途中だった。
「待て待て待て、赤宮っ! 一度ストップ!」
麻美の前に突然丸井が現れた。
「丸井……何の用だ?」
「用って言うか、返すもんがあってよ……」
少し躊躇いがちではあったが丸井はポケットから生徒手帳を取り出し、麻美の前に差し出す。その瞬間、麻美は掴んでいた遥の首根っこを離し、中身を確認することなく瞬く暇もないスピードでそれを取り上げた。
気絶している遥は彼女の手が離れたことによってそのまま地面の上で転がってしまう。
「なんでお前が持ってんだっ!?」
ずいっと顔を寄せて睨みつける麻美に丸井は両手を上げながら背中と目を逸らす。
「いやいやいや、ぶつかって鞄をぶちまけた時があったろぃ? 多分そん時にでも間違って俺の鞄の中に━━」
「中身、見たのか?」
「名前の確認したくらい……」
「……中見てたらただじゃおかないからな」
脅すような言葉を突きつけ、麻美は再び遥の首根っこを掴み、フンと鼻を鳴らして丸井の横を通り過ぎた。
しかし、すでに中身を見てしまった丸井はよっぽど見られたくなかったんだな、と麻美の態度を見て確信する。
それと同時に写真を見てしまったことがバレたらただじゃすまないと言われたので、桑原の言う通り誰彼構わず麻美の秘密を明かさないため、口にチャックをした。
「……あそこまで言うってことは自分から秘密があるって言ってるようなもんじゃねーか」
ぽつりと呟くがもちろん麻美の耳に届かない音量なのでまださほど遠くない彼女に聞こえている様子はなかった。