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第5話『絡み絡まれ糸切れる怒号』
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「……昨日の女のことなら確かに突き飛ばしたな。先に手を出そうとしたからやり返しただけだ。文句あんのか?」
「当たり前だろ! 怖がって泣いてたんだからな! ずっと痛がってたし、そもそもか弱いあいつが手を出すか!」
「男テニのマネージャー枠を寄越せと言って来た女がそんなヤワなわけねぇだろ」
「あいつがんなこと言うかよ! 嘘ばっか言ってんじゃねぇ!」
これは落ち着いて話が出来るやつではないな?
遥がぼんやりとそう思うもののどうしたらいいのかさっぱりなので、このままでは色んな意味で麻美がヤバいのでは? と心配したその時だった。
「一体何の騒ぎなの?」
麻美でもなく、遥でもない別の女子の声。聞き覚えのある二人が声をした方を向くと、そこには九条秋が気難しい顔で姿を現した。
「っち、九条かよ……」
男子達は苦々しい表情をする。真面目で副生徒会長という地位を得る彼女にとってはいい顔をしない状況ということを理解していたため。
「身に覚えのないいちゃもんつけられてんだよ」
「はあ!? さっきは突き飛ばしたことを認めただろ!」
「先に向こうが手を出したっつー前提だ。手を出してねぇって主張するなら身に覚えは何一つない」
「テメェ……!」
男が拳を作る。今にもブチ切れてしまうのではないかと言うくらいに。おそらく秋がいなかったらすぐにその拳を振るっていたのかもしれない。
秋がどういうこと? と、遥に尋ねて彼女から詳しい事情を聞いた。
「……なるほど、とにかく当事者である彼女さんも連れて話をしないと判断しようがないね」
「そんなことしなくてもどっちが本当のこと言ってるか分かんだろ!? そんな態度の悪い奴が本当のことなんざ言うはずがねぇ!」
「態度が悪いのは君もだと思うけどねぇ」
ぽそっと呟く遥の言葉に秋は「しっ」と唇の前に人差し指を立てる。
「態度の大きさで嘘か本当かなんて分かるとは言えないからちゃんと相手の話を聞かなきゃ。公平な判断は必要でしょ」
「んな客観的な堅苦しいもんはいらねぇって言ってんだよ。どうせあんたも薄々分かってんだろ。こいつが先に手を出したってことをよ」
「……」
麻美はフンと顔を逸らす。認めたくはないがこの時ばかりはこの男の言うことが正しいと思ったから。
どうせこの生真面目な副生徒会長さんはこっちを疑うのだろう、と。
「主観で決めていいって言うなら私は赤宮さんの話を信じるけどそれでもいい?」
「!」
思いもよらぬその返答は男子生徒達と麻美を酷く驚かせた。ただ一人、遥だけはにっこりと満足げに笑っている。
「あんた、何言ってんだ? 恩でも売ろうっての?」
麻美は秋を強く拒絶したばかりだからもう纏わりつくことはないと思っていた。それなのになぜこちらの肩を持つのか分からず、裏があると勘繰ってしまう。
「昨日言ったでしょ? 友達になりたいって。やっぱり諦めきれなくて……だからまずは赤宮さんのことを信用することから始めたいの」
昨日とはうって変わるような柔らかい微笑み。萎縮していたのが嘘のようで、言い換えれば秋なりに決心がついたとも言える。
秋の言葉に偽りはなさそう。そう思い始めるものの、相手は成績優秀な人間。頭がいいのでそういうふうに見せている可能性もあるんじゃないのかと麻美の中では否定出来ないでいた。
そんな中、もう一方の驚いていた人物が声を上げる。
「副生徒会長って割に見る目もなけりゃ相当イカレてやがんな! オイ、西成! お前も言ってやれ! 世間一般的にはどっちの味方するかってよ!」
まさか九条秋が麻美の味方になるとは思わなかった。だったら……と、男子生徒は次に遥を名指しする。
遥はというと、にまーっと笑顔で麻美の傍に寄り、そして一言口にする。
「麻美!」
「は!? なんでだよ! お前は梨依奈の友達じゃねーのかよ! あいつを裏切るのか!?」
「鴨川くんよ、あたしの友達は梨依奈だけではないのだよ。何せ麻美とも友達なのだからね!」
「……」
あははは! と隣で笑う遥を一瞥した麻美は「こいつならそう言うだろうと思っていた」と謎の確信をしてしまったと同時に遥を信じていたという事実にも気づいてしまい、少なからずショックを受けつつ遠くを見るような目をしていた。
「それにね、麻美が言ってたマネージャー枠をちょーだいとか言ってたくだり、あたしは本当だと思うよ。だって梨依奈はずっと幸村のファンだし、昨日だってあたしがマネージャーになったのを知ると『いいな~。私もそんなコネが欲しいな~』ってマネージャーになりたそうにこっちをチラチラ見てきたんだもの。だから麻美は嘘は言ってないぜ! てか、麻美がわざわざ嘘つく必要ないっしょ! 意味ないんだしっ」
「は? 梨依奈が幸村のファン? マネージャーになりたがってた? そんなわけねぇだろ!?」
「そんなわけも何もあたしにそう言ったのは梨依奈だよ? 友達であるあたしの言葉も信じないって言うのかい?」
「当たり前だろ!」
男はわなわなと震えると、後ろに控えていた友人と思わしき他の男子生徒達も動揺しながら鴨川というリーダー格の男を宥め始める。
彼女が誰かのファンと言えども自分以外の男になびくとは思っていなかったからだ。
「っち。私が突き飛ばしたっつー話は信じるがその他は信じないだけじゃなく、あんたの彼女のダチの信じたくない話も信じないってのか。都合のいい奴だ。あんた馬鹿だな」
「テメェ……! どちらにせよ突き飛ばした事実は変わらねぇだろ! 梨依奈を傷つけた罪はしっかりと払ってもらうぜ!」
拳をボキボキと鳴らす鴨川はもう後戻り出来ないほど麻美への憎しみが膨れ上がり、酷い目に遭わせないと気がすまないでいた。
そこにいるだけで軽いストッパーとなっていた副生徒会長の秋がいようと今の彼には関係ない。
後々叱られようが停学されようが、ただただあのお高く止まった顔をめちゃくちゃにしたかった。
さすがに秋と遥もこれ以上は危ないと判断するが、麻美はそうでなかったようで待っていましたと言わんばかりに、一歩、二歩と前に進む。
「いいだろう。あんたみたいなどっちが強者か理解出来ないクズは早々に殴るに限るからな」
肩を回しながらやる気を見せる麻美に二人は何とかして踏みとどまらせようと声をかける。
「赤宮さんっ、落ち着いて! 相手にしたら赤宮さんを擁護出来なくなっちゃうから!」
「ひとまず落ち着くのだ! そうっ、深呼吸をしよう! ほら、ヒッヒッフー! ヒッヒッフー!」
「遥、それはラマーズ法……」
わざとなのか本気なのか分からない遥の発言を訂正する忙しい秋だったが、麻美と鴨川の睨み合いは終わらない。
「オイ、お前らも本気であいつを押さえつけろよ」
「……鴨川、本当にヤバくねぇか? 何より関係ない奴らに見られてるってのに」
「そもそも赤宮が俺達に敵う相手なのか?」
どうやら鴨川の後ろに控える友人達も今から起こる壮絶なバトルに参加させられる様子だが、乗り気ではなかった。
女子一人に対して男子複数。麻美にとっては不利と思われるが、それは誤りである。ここまでしなきゃ男子達に勝てる見込みがないからだ。
「いいからかかってこい。あんたら全員叩きのめしてやるからよ」
「言ったな? 試してやるよ!!」
鴨川が駆け始めた。ワンテンポ遅れて後ろの友人達も鴨川に続き走り出す。
あわあわと慌て出した秋と遥は回避する方法がないか急いで考えたその時、怒鳴り声が響いた。
「当たり前だろ! 怖がって泣いてたんだからな! ずっと痛がってたし、そもそもか弱いあいつが手を出すか!」
「男テニのマネージャー枠を寄越せと言って来た女がそんなヤワなわけねぇだろ」
「あいつがんなこと言うかよ! 嘘ばっか言ってんじゃねぇ!」
これは落ち着いて話が出来るやつではないな?
遥がぼんやりとそう思うもののどうしたらいいのかさっぱりなので、このままでは色んな意味で麻美がヤバいのでは? と心配したその時だった。
「一体何の騒ぎなの?」
麻美でもなく、遥でもない別の女子の声。聞き覚えのある二人が声をした方を向くと、そこには九条秋が気難しい顔で姿を現した。
「っち、九条かよ……」
男子達は苦々しい表情をする。真面目で副生徒会長という地位を得る彼女にとってはいい顔をしない状況ということを理解していたため。
「身に覚えのないいちゃもんつけられてんだよ」
「はあ!? さっきは突き飛ばしたことを認めただろ!」
「先に向こうが手を出したっつー前提だ。手を出してねぇって主張するなら身に覚えは何一つない」
「テメェ……!」
男が拳を作る。今にもブチ切れてしまうのではないかと言うくらいに。おそらく秋がいなかったらすぐにその拳を振るっていたのかもしれない。
秋がどういうこと? と、遥に尋ねて彼女から詳しい事情を聞いた。
「……なるほど、とにかく当事者である彼女さんも連れて話をしないと判断しようがないね」
「そんなことしなくてもどっちが本当のこと言ってるか分かんだろ!? そんな態度の悪い奴が本当のことなんざ言うはずがねぇ!」
「態度が悪いのは君もだと思うけどねぇ」
ぽそっと呟く遥の言葉に秋は「しっ」と唇の前に人差し指を立てる。
「態度の大きさで嘘か本当かなんて分かるとは言えないからちゃんと相手の話を聞かなきゃ。公平な判断は必要でしょ」
「んな客観的な堅苦しいもんはいらねぇって言ってんだよ。どうせあんたも薄々分かってんだろ。こいつが先に手を出したってことをよ」
「……」
麻美はフンと顔を逸らす。認めたくはないがこの時ばかりはこの男の言うことが正しいと思ったから。
どうせこの生真面目な副生徒会長さんはこっちを疑うのだろう、と。
「主観で決めていいって言うなら私は赤宮さんの話を信じるけどそれでもいい?」
「!」
思いもよらぬその返答は男子生徒達と麻美を酷く驚かせた。ただ一人、遥だけはにっこりと満足げに笑っている。
「あんた、何言ってんだ? 恩でも売ろうっての?」
麻美は秋を強く拒絶したばかりだからもう纏わりつくことはないと思っていた。それなのになぜこちらの肩を持つのか分からず、裏があると勘繰ってしまう。
「昨日言ったでしょ? 友達になりたいって。やっぱり諦めきれなくて……だからまずは赤宮さんのことを信用することから始めたいの」
昨日とはうって変わるような柔らかい微笑み。萎縮していたのが嘘のようで、言い換えれば秋なりに決心がついたとも言える。
秋の言葉に偽りはなさそう。そう思い始めるものの、相手は成績優秀な人間。頭がいいのでそういうふうに見せている可能性もあるんじゃないのかと麻美の中では否定出来ないでいた。
そんな中、もう一方の驚いていた人物が声を上げる。
「副生徒会長って割に見る目もなけりゃ相当イカレてやがんな! オイ、西成! お前も言ってやれ! 世間一般的にはどっちの味方するかってよ!」
まさか九条秋が麻美の味方になるとは思わなかった。だったら……と、男子生徒は次に遥を名指しする。
遥はというと、にまーっと笑顔で麻美の傍に寄り、そして一言口にする。
「麻美!」
「は!? なんでだよ! お前は梨依奈の友達じゃねーのかよ! あいつを裏切るのか!?」
「鴨川くんよ、あたしの友達は梨依奈だけではないのだよ。何せ麻美とも友達なのだからね!」
「……」
あははは! と隣で笑う遥を一瞥した麻美は「こいつならそう言うだろうと思っていた」と謎の確信をしてしまったと同時に遥を信じていたという事実にも気づいてしまい、少なからずショックを受けつつ遠くを見るような目をしていた。
「それにね、麻美が言ってたマネージャー枠をちょーだいとか言ってたくだり、あたしは本当だと思うよ。だって梨依奈はずっと幸村のファンだし、昨日だってあたしがマネージャーになったのを知ると『いいな~。私もそんなコネが欲しいな~』ってマネージャーになりたそうにこっちをチラチラ見てきたんだもの。だから麻美は嘘は言ってないぜ! てか、麻美がわざわざ嘘つく必要ないっしょ! 意味ないんだしっ」
「は? 梨依奈が幸村のファン? マネージャーになりたがってた? そんなわけねぇだろ!?」
「そんなわけも何もあたしにそう言ったのは梨依奈だよ? 友達であるあたしの言葉も信じないって言うのかい?」
「当たり前だろ!」
男はわなわなと震えると、後ろに控えていた友人と思わしき他の男子生徒達も動揺しながら鴨川というリーダー格の男を宥め始める。
彼女が誰かのファンと言えども自分以外の男になびくとは思っていなかったからだ。
「っち。私が突き飛ばしたっつー話は信じるがその他は信じないだけじゃなく、あんたの彼女のダチの信じたくない話も信じないってのか。都合のいい奴だ。あんた馬鹿だな」
「テメェ……! どちらにせよ突き飛ばした事実は変わらねぇだろ! 梨依奈を傷つけた罪はしっかりと払ってもらうぜ!」
拳をボキボキと鳴らす鴨川はもう後戻り出来ないほど麻美への憎しみが膨れ上がり、酷い目に遭わせないと気がすまないでいた。
そこにいるだけで軽いストッパーとなっていた副生徒会長の秋がいようと今の彼には関係ない。
後々叱られようが停学されようが、ただただあのお高く止まった顔をめちゃくちゃにしたかった。
さすがに秋と遥もこれ以上は危ないと判断するが、麻美はそうでなかったようで待っていましたと言わんばかりに、一歩、二歩と前に進む。
「いいだろう。あんたみたいなどっちが強者か理解出来ないクズは早々に殴るに限るからな」
肩を回しながらやる気を見せる麻美に二人は何とかして踏みとどまらせようと声をかける。
「赤宮さんっ、落ち着いて! 相手にしたら赤宮さんを擁護出来なくなっちゃうから!」
「ひとまず落ち着くのだ! そうっ、深呼吸をしよう! ほら、ヒッヒッフー! ヒッヒッフー!」
「遥、それはラマーズ法……」
わざとなのか本気なのか分からない遥の発言を訂正する忙しい秋だったが、麻美と鴨川の睨み合いは終わらない。
「オイ、お前らも本気であいつを押さえつけろよ」
「……鴨川、本当にヤバくねぇか? 何より関係ない奴らに見られてるってのに」
「そもそも赤宮が俺達に敵う相手なのか?」
どうやら鴨川の後ろに控える友人達も今から起こる壮絶なバトルに参加させられる様子だが、乗り気ではなかった。
女子一人に対して男子複数。麻美にとっては不利と思われるが、それは誤りである。ここまでしなきゃ男子達に勝てる見込みがないからだ。
「いいからかかってこい。あんたら全員叩きのめしてやるからよ」
「言ったな? 試してやるよ!!」
鴨川が駆け始めた。ワンテンポ遅れて後ろの友人達も鴨川に続き走り出す。
あわあわと慌て出した秋と遥は回避する方法がないか急いで考えたその時、怒鳴り声が響いた。