自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
第3話『逃げたり、追ったり、躊躇ったり』
主人公名前変換
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その日の放課後の部活時間。遥は口から魂が抜けたような表情で呆けていた。
それもそのはず、テニスコートの外で練習試合をする部員達を観戦しているのだが、遥の隣には柳生が立っていて、まるで教育係だと言わんばかりに彼女に逐一テニス用語からルールなどを説明していたのだ。
昼休みだけでは足らなかったようで終わりの見えない柳生の授業はテニス知識皆無の遥の精神を蝕んでいた。彼の丁寧な説明を右から左へ受け流すくらいには。
「うわっ、先輩の顔すげー死んでるじゃないッスか!」
そこへたまたま通りかかったラケットを手にした切原が遥の表情を見て指差しながら笑っていた。そんな彼の声にハッと意識を取り戻したような顔になる遥はすでにレギュラーの名前を覚えたこともあり、助けを求めるように彼に縋りつく。
「た、助けておくれ赤也! 柳生が滅びの呪文を唱えるっ!」
「滅びの呪文ってめっちゃウケるんスけど」
「ウケないで!」
「滅びの呪文とは心外ですね。私は西成さんのために分かりやすくかつ丁寧にお教えしているはずですか?」
カチャリと眼鏡を上げながらしっかりと集中しなさいと言いたげな柳生の強い圧に遥は「ひぃっ」と声を上げる。
「だ、だだだって勉強って聞くと頭に入らなくなるんだもん!」
「それは確かにそッスね」
「でしょっ!? あたし達は仲間だ!」
「切原くんは口を挟まないでいただきたい」
「へーい」
「せっかくの仲間に沈黙を与えないでよ柳生っ」
勉強嫌い仲間が出来たと思ったのに! そう口にしようとしたらコート内のテニス部員が焦るような叫び声を上げた。
「西成危ねぇ!」
「へ?」
部員の打ったボールがコントロールを誤って遥の方へと向かう。強めの打球のようでこのままでは顔面に当たってしまう。
「わ、わわわわっ!」
「西成さんっ!」
柳生が慌てて庇おうと遥の前に立った。遥はそれでも自分に当たるかもしれない恐怖を抱き、腕で顔を覆うようにガードをして目を閉じるが、ボールの当たる衝撃も音もなく、その代わり球を打ち返す音が目の前から聞こえた。
「っし!」
「!」
目を開いた先には柳生の背中。そしてその向こうには切原がラケットを振った姿が見えた。
どうやら彼女に向かったボールを2年生エースの切原が返してくれたようだ。
余裕そうなその表情とピンチな状況から助けてくれたその姿を見た遥は息をするのも忘れてしまいそうなくらい彼に見とれてしまう。
「西成さん、大丈夫ですか?」
柳生の声にハッとした遥は大きく頷きながら自分の無事を知らせるように何度も頷いた。
「それは良かったです。切原くんもありがとうございました」
「全然いーッスよ。あれくらい大したことないんで」
ニッと笑みを浮かべ、大したことないと口にするが助けてくれた事実は変わらないので遥は慌てて礼を口にしようとした。
「あ、赤也っ。ありがとうね! 凄いかっこ良かったよ!」
「へへっ。まぁ、俺にかかればチョロいもんですって」
鼻の下を指の背で擦りながらふんぞり返る切原に遥の目はさらに輝いた。そして、興奮からなのか心臓の動きが活発になる。
「ま、先輩に何ともなくて良かったッスよ。もしぶつかってたらせっかく柳生先輩が時間かけて色々教えてくれたのにそれが全部パァになっちまいますもんねっ」
「頭に叩き入れたテニス知識の心配じゃなく純粋にあたしの身体の心配して!」
「でも大丈夫なんっしょ? 俺が返したんだし」
「そ、そうだけど……」
「それはそうと、念の為もう少し離れておきましょうか。またボールが飛んできたら大変ですのでね」
レギュラーならばあのような事故は起こらないだろうが、他の部員までそうだとは限らない。またさっきのようなことにならないためにも柳生は場所を移ることを提案する。
「あ、そんじゃ俺もそろそろ行くッス。スパルタ教育頑張ってくださいね~西成先輩~」
「あ、うん」
からかい気味に手を振っては先にその場を後にした切原の背中を見つめる遥は未だに心臓の鼓動が増していることに気づく。
「では私達も……おや? 西成さん少し顔が赤いようですが大丈夫ですか?」
「えっ? あ、そ、そうかなっ? ちょっと暑いかもしれないもんね!」
あははっと笑いながら手で扇ぐ様子を見せるが、遥は「もしかしてこれは……」と、ある感情の芽生えを自覚した。
切原がボールを打ち返した姿を思い出せばあの時の胸の高鳴りが今でも再現される。
(や、やばいっ! 赤也がかっこ良すぎてやばい!!)
落ちるつもりなんてこれっぽっちもなかった恋の落とし穴に遥は面白いくらいに真っ逆さまに落ちてしまったのだった。
それもそのはず、テニスコートの外で練習試合をする部員達を観戦しているのだが、遥の隣には柳生が立っていて、まるで教育係だと言わんばかりに彼女に逐一テニス用語からルールなどを説明していたのだ。
昼休みだけでは足らなかったようで終わりの見えない柳生の授業はテニス知識皆無の遥の精神を蝕んでいた。彼の丁寧な説明を右から左へ受け流すくらいには。
「うわっ、先輩の顔すげー死んでるじゃないッスか!」
そこへたまたま通りかかったラケットを手にした切原が遥の表情を見て指差しながら笑っていた。そんな彼の声にハッと意識を取り戻したような顔になる遥はすでにレギュラーの名前を覚えたこともあり、助けを求めるように彼に縋りつく。
「た、助けておくれ赤也! 柳生が滅びの呪文を唱えるっ!」
「滅びの呪文ってめっちゃウケるんスけど」
「ウケないで!」
「滅びの呪文とは心外ですね。私は西成さんのために分かりやすくかつ丁寧にお教えしているはずですか?」
カチャリと眼鏡を上げながらしっかりと集中しなさいと言いたげな柳生の強い圧に遥は「ひぃっ」と声を上げる。
「だ、だだだって勉強って聞くと頭に入らなくなるんだもん!」
「それは確かにそッスね」
「でしょっ!? あたし達は仲間だ!」
「切原くんは口を挟まないでいただきたい」
「へーい」
「せっかくの仲間に沈黙を与えないでよ柳生っ」
勉強嫌い仲間が出来たと思ったのに! そう口にしようとしたらコート内のテニス部員が焦るような叫び声を上げた。
「西成危ねぇ!」
「へ?」
部員の打ったボールがコントロールを誤って遥の方へと向かう。強めの打球のようでこのままでは顔面に当たってしまう。
「わ、わわわわっ!」
「西成さんっ!」
柳生が慌てて庇おうと遥の前に立った。遥はそれでも自分に当たるかもしれない恐怖を抱き、腕で顔を覆うようにガードをして目を閉じるが、ボールの当たる衝撃も音もなく、その代わり球を打ち返す音が目の前から聞こえた。
「っし!」
「!」
目を開いた先には柳生の背中。そしてその向こうには切原がラケットを振った姿が見えた。
どうやら彼女に向かったボールを2年生エースの切原が返してくれたようだ。
余裕そうなその表情とピンチな状況から助けてくれたその姿を見た遥は息をするのも忘れてしまいそうなくらい彼に見とれてしまう。
「西成さん、大丈夫ですか?」
柳生の声にハッとした遥は大きく頷きながら自分の無事を知らせるように何度も頷いた。
「それは良かったです。切原くんもありがとうございました」
「全然いーッスよ。あれくらい大したことないんで」
ニッと笑みを浮かべ、大したことないと口にするが助けてくれた事実は変わらないので遥は慌てて礼を口にしようとした。
「あ、赤也っ。ありがとうね! 凄いかっこ良かったよ!」
「へへっ。まぁ、俺にかかればチョロいもんですって」
鼻の下を指の背で擦りながらふんぞり返る切原に遥の目はさらに輝いた。そして、興奮からなのか心臓の動きが活発になる。
「ま、先輩に何ともなくて良かったッスよ。もしぶつかってたらせっかく柳生先輩が時間かけて色々教えてくれたのにそれが全部パァになっちまいますもんねっ」
「頭に叩き入れたテニス知識の心配じゃなく純粋にあたしの身体の心配して!」
「でも大丈夫なんっしょ? 俺が返したんだし」
「そ、そうだけど……」
「それはそうと、念の為もう少し離れておきましょうか。またボールが飛んできたら大変ですのでね」
レギュラーならばあのような事故は起こらないだろうが、他の部員までそうだとは限らない。またさっきのようなことにならないためにも柳生は場所を移ることを提案する。
「あ、そんじゃ俺もそろそろ行くッス。スパルタ教育頑張ってくださいね~西成先輩~」
「あ、うん」
からかい気味に手を振っては先にその場を後にした切原の背中を見つめる遥は未だに心臓の鼓動が増していることに気づく。
「では私達も……おや? 西成さん少し顔が赤いようですが大丈夫ですか?」
「えっ? あ、そ、そうかなっ? ちょっと暑いかもしれないもんね!」
あははっと笑いながら手で扇ぐ様子を見せるが、遥は「もしかしてこれは……」と、ある感情の芽生えを自覚した。
切原がボールを打ち返した姿を思い出せばあの時の胸の高鳴りが今でも再現される。
(や、やばいっ! 赤也がかっこ良すぎてやばい!!)
落ちるつもりなんてこれっぽっちもなかった恋の落とし穴に遥は面白いくらいに真っ逆さまに落ちてしまったのだった。