自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
第3話『逃げたり、追ったり、躊躇ったり』
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「あ、桑原くん。赤宮さんはいる?」
仁王から逃げ出した秋は一旦弁当箱を教室へと置きに戻ってから麻美のいる3年I組へと辿り着いた頃、すでに火照り顔は治まっていた。これならば目的に集中出来ると安心する。
遥の代わりに麻美と少しでも仲良くなれるように秋は近くにいたジャカル桑原に声をかけた。
ブラジル人と日本人のハーフである彼は褐色肌にスキンヘッドという日本では目立つ容姿ということもあり、秋も彼の存在や名前などは入学時から認識していた。
それでも会話をする機会は今までなくて、桑原に声をかけるのは初めてである。
「九条、今度はお前が来たんだな」
「遥は柳生くんに捕まっててね」
「あぁ、そういや言ってたな……テニスのルールを頭に入れさせとかねぇとって柳が」
「本当は一緒に来る予定だったんだけどね。でもマネージャーになったからにはテニスについて知らないといけないのは当然だし、だから遥にはそっちを頑張ってもらって、選手交代として私一人で話してみようかなって」
「そうか。上手くいくといいな。赤宮は中にいるから頑張ってこいよ」
教室の中に入るように言う桑原に礼を言うと秋は麻美の座る席へと向かった。
麻美も秋の存在に気がついたのか、一瞥したあとわざとらしい溜め息を吐き捨てる。
「こんにちは、赤宮さん」
「今度はあんたか」
「遥は勉強中だから。そういえば遥の時みたいに逃げないんだね?」
「副生徒会長様は校内を走り回るような野蛮な奴じゃないだろ」
「野蛮なのかは分からないけど、確かに学校内を走るのは良くないね」
「だから無駄な体力を消費する必要ない」
「そっか」
「用件はなんだ? 世間話するなら帰れ」
キッと睨みつける麻美にびくりと一瞬肩が跳ねた。怖くないといえば嘘になる。誰も寄せつけないような突き刺す目力を前にして秋は萎縮してしまう。
遥はこの視線を恐れなかったのだろうか。そうだとしたらどうやってこの空気を変えられるのか。
元々平穏に暮らしたい性分であり、危ない橋を渡りたくはない性格だから麻美のような手のつけられない人間にどう相手したらいいのか分からない。
「えっと……その、私……赤宮さんと友達になりたいの……」
「……。私を恐れてるのに友達? 何言ってんだ」
「確かにそうかもしれないけど……それは赤宮さんのことを何も知らないからだと思うの。だから少しでもあなたのことを知りたい。友達になりたいの」
それは嘘ではない。麻美のことは確かに怖いと思うこともあるし、相手のことを知らないから怖がっている自覚もある。
秋にとって麻美は噂でしかその人物像を知らない。噂というのは恐ろしいもので自然とそうであるかのように思い込ませるのだ。
しかし、秋は己の目で見た彼女がどういう人なのかはまだ分からない。それに噂で相手を判断してはいけないと自分に言い聞かせたばかりだ。だから秋はとことん麻美と向き合うつもりでいた。
「私は馴れ合うつもりはないって言ったし、友達になる気もない」
そんな秋の思いはどうやら麻美には届かなかったようで強い拒絶反応を見せる。
これ以上、秋には強く言えなかった。
「……そうなんだね、ごめんね。無理言って……」
困ったように笑いながら、しかしその目は悲しげで申し訳なさそうにしていた。
声のトーンも落ちた秋はぺこりと小さく頭を下げて麻美のいる教室を出て行く。
彼女の後ろ姿を見送ったあと興味なさげに視線を戻した麻美に今度はクラスメイトが声をかける。
「赤宮、いいのか? せっかく友達になりたいって言ってきたのに」
一部始終を見ていた桑原がお節介だと思いながらも何だか見過ごせなかったため、麻美の机の前に立ち、秋について話をする。
「西成についてもだけどよ、慕ってくれそうな相手にまで邪険にしなくていいんじゃねーか?」
「私に説教かっ!?」
バンッ! と大きく机を叩いて席を立つ麻美は桑原を強く睨みつける。
蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことか。と、それを身をもって体験する桑原は冷や汗を流しながら両手を上げた。何もするつもりはないという意思表示だ。
「そうじゃねぇけど……同じマネージャーなのにギスギスする関係って嫌じゃねーか」
「別に、どういう関係になろうがあんたが気にすることないだろ」
「……気になるだろ。俺はこっちに来た頃、友達が欲しくてもなかなか出来なかったんだからな」
桑原はブラジルから日本に越して来たため日本生まれではない。
ハーフである彼の言葉からそう察した麻美は桑原の態度からして日本に来た当初はそれなりに苦労があったのかもしれないと考える。
あぁ、だからなのか、と麻美の視線は桑原の頭部へと向けた。桑原がその意味を知ったら「そうじゃねぇけどな!?」と必死に否定していただろう。
「……苦労してんだな、あんたも」
「あ? あぁ、そうだな……」
「まぁ、そっちの言いたいことは分からないでもない。けど、私には必要がない。今までそうだったし、これからもだ」
そう言い切る麻美に桑原は少しだけ溜め息をつきながら「そうか」と話を切り上げることにした。
友達を必要ないという強い理由があるのだと感じたから。
仁王から逃げ出した秋は一旦弁当箱を教室へと置きに戻ってから麻美のいる3年I組へと辿り着いた頃、すでに火照り顔は治まっていた。これならば目的に集中出来ると安心する。
遥の代わりに麻美と少しでも仲良くなれるように秋は近くにいたジャカル桑原に声をかけた。
ブラジル人と日本人のハーフである彼は褐色肌にスキンヘッドという日本では目立つ容姿ということもあり、秋も彼の存在や名前などは入学時から認識していた。
それでも会話をする機会は今までなくて、桑原に声をかけるのは初めてである。
「九条、今度はお前が来たんだな」
「遥は柳生くんに捕まっててね」
「あぁ、そういや言ってたな……テニスのルールを頭に入れさせとかねぇとって柳が」
「本当は一緒に来る予定だったんだけどね。でもマネージャーになったからにはテニスについて知らないといけないのは当然だし、だから遥にはそっちを頑張ってもらって、選手交代として私一人で話してみようかなって」
「そうか。上手くいくといいな。赤宮は中にいるから頑張ってこいよ」
教室の中に入るように言う桑原に礼を言うと秋は麻美の座る席へと向かった。
麻美も秋の存在に気がついたのか、一瞥したあとわざとらしい溜め息を吐き捨てる。
「こんにちは、赤宮さん」
「今度はあんたか」
「遥は勉強中だから。そういえば遥の時みたいに逃げないんだね?」
「副生徒会長様は校内を走り回るような野蛮な奴じゃないだろ」
「野蛮なのかは分からないけど、確かに学校内を走るのは良くないね」
「だから無駄な体力を消費する必要ない」
「そっか」
「用件はなんだ? 世間話するなら帰れ」
キッと睨みつける麻美にびくりと一瞬肩が跳ねた。怖くないといえば嘘になる。誰も寄せつけないような突き刺す目力を前にして秋は萎縮してしまう。
遥はこの視線を恐れなかったのだろうか。そうだとしたらどうやってこの空気を変えられるのか。
元々平穏に暮らしたい性分であり、危ない橋を渡りたくはない性格だから麻美のような手のつけられない人間にどう相手したらいいのか分からない。
「えっと……その、私……赤宮さんと友達になりたいの……」
「……。私を恐れてるのに友達? 何言ってんだ」
「確かにそうかもしれないけど……それは赤宮さんのことを何も知らないからだと思うの。だから少しでもあなたのことを知りたい。友達になりたいの」
それは嘘ではない。麻美のことは確かに怖いと思うこともあるし、相手のことを知らないから怖がっている自覚もある。
秋にとって麻美は噂でしかその人物像を知らない。噂というのは恐ろしいもので自然とそうであるかのように思い込ませるのだ。
しかし、秋は己の目で見た彼女がどういう人なのかはまだ分からない。それに噂で相手を判断してはいけないと自分に言い聞かせたばかりだ。だから秋はとことん麻美と向き合うつもりでいた。
「私は馴れ合うつもりはないって言ったし、友達になる気もない」
そんな秋の思いはどうやら麻美には届かなかったようで強い拒絶反応を見せる。
これ以上、秋には強く言えなかった。
「……そうなんだね、ごめんね。無理言って……」
困ったように笑いながら、しかしその目は悲しげで申し訳なさそうにしていた。
声のトーンも落ちた秋はぺこりと小さく頭を下げて麻美のいる教室を出て行く。
彼女の後ろ姿を見送ったあと興味なさげに視線を戻した麻美に今度はクラスメイトが声をかける。
「赤宮、いいのか? せっかく友達になりたいって言ってきたのに」
一部始終を見ていた桑原がお節介だと思いながらも何だか見過ごせなかったため、麻美の机の前に立ち、秋について話をする。
「西成についてもだけどよ、慕ってくれそうな相手にまで邪険にしなくていいんじゃねーか?」
「私に説教かっ!?」
バンッ! と大きく机を叩いて席を立つ麻美は桑原を強く睨みつける。
蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことか。と、それを身をもって体験する桑原は冷や汗を流しながら両手を上げた。何もするつもりはないという意思表示だ。
「そうじゃねぇけど……同じマネージャーなのにギスギスする関係って嫌じゃねーか」
「別に、どういう関係になろうがあんたが気にすることないだろ」
「……気になるだろ。俺はこっちに来た頃、友達が欲しくてもなかなか出来なかったんだからな」
桑原はブラジルから日本に越して来たため日本生まれではない。
ハーフである彼の言葉からそう察した麻美は桑原の態度からして日本に来た当初はそれなりに苦労があったのかもしれないと考える。
あぁ、だからなのか、と麻美の視線は桑原の頭部へと向けた。桑原がその意味を知ったら「そうじゃねぇけどな!?」と必死に否定していただろう。
「……苦労してんだな、あんたも」
「あ? あぁ、そうだな……」
「まぁ、そっちの言いたいことは分からないでもない。けど、私には必要がない。今までそうだったし、これからもだ」
そう言い切る麻美に桑原は少しだけ溜め息をつきながら「そうか」と話を切り上げることにした。
友達を必要ないという強い理由があるのだと感じたから。