自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
第3話『逃げたり、追ったり、躊躇ったり』
主人公名前変換
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「よし、ここまででいいじゃろ。すまんかったな、九条。付き合わせてしもうたの」
仁王に手を引かれ、遥から離れるように食堂から抜け出すことになった秋はいつの間にか裏庭へと来てしまっていた。
ここへ連れて来た張本人は秋から手を離して抱えていた弁当箱も返し、軽い謝罪をするがなぜ裏庭なのか分からず秋は尋ねてみた。
「どうして裏庭に? それに遥から逃げる必要はあったのかな……?」
「そりゃあ、お前さんあのままだと西成に付き合うつもりじゃったろ?」
「え? うん、もちろん」
「あやつはの、すーぐ人に頼るから集中力を欠くんじゃ。一対一でもせんとタメにならん」
そういうことだったんだ。彼は彼なりに遥のことを考えて行動したのだと、そう感じた秋は目の前の男子生徒の印象が少し変わった。
「そんでここに連れて来たのは単に目立ちたくないだけじゃな。副生徒会長ともあろう人間が俺に連れられて走り回ってたんじゃ周りの見る目もあるしの」
確かに校内を走り回っていたら『生徒会の人間なのにモラルがない』と思われかねない。
そして手を引っ張った相手である仁王は女子人気も高いのでもし目撃でもされたらそれはそれで大騒ぎになったはず。
あの場では人の数は多くなかったし、注目もそこまでされていなかったので大きな騒ぎにはならなかったが、仁王は色々と気を遣ってくれたのだろう。
仁王雅治。特徴的な口調にどこか掴めない飄々とした性格で女子からの人気も高い生徒。しかし授業態度には少々問題があるようでサボり癖があるらしい。
真面目な秋としては授業をサボることはとてもではないが考えられないので赤宮麻美とはまた違った問題児なのだと思っていた。
だが、先程より仁王への印象が変わったのだ。
「仁王くんは優しいんだね」
「ほぅ? その言い方じゃと優しいとは思ってなかったようやの?」
「え、いや、そうじゃないよっ。ただ仁王くんがどんな人なのか知らなかったから……!」
「まさか副生徒会長さんに変な目で見られてたとはの……さすがの俺も傷つくぜよ」
顔を逸らし、その表情は見えないものの肩が小刻みに震わせているので、相手を悲しませてしまったのではと秋は焦りの色を見せる。
「ご、ごめんなさいっ! 私、そんなつもりはなくて……! 傷つけるつもりはなかったのっ」
「……ククッ」
慌てて弁解する秋だが、相手から堪えるような笑い声が聞こえてきたので「もしかして……」と仁王に問いかける。
「からかったの……?」
「あーすまんのぉ。あまりにもいい反応するからつい、な?」
この手で引っかかるのは久しぶりだったのか楽しくなってしまった仁王が未だに笑い堪えている。
それを見た秋は怒るでもなく呆れるでもなく笑うでもなく、ただホッと安心している表情を見せた。
「傷ついてないなら良かったよ」
「……その反応はいまいちじゃな」
「えっ?」
「あぁ、いや、こっちの話ぜよ。それにしても九条は純粋やの。あんな話に引っかかるとはな」
「最初から信じないで話を聞くなんて失礼だよ」
「立派な心構えじゃき。けどな、時には疑うことも覚えた方がいいぜよ。嘘と本当しかない世界じゃからの」
「仁王くんは一体何を背負ってるの……?」
「プリッ」
その返事は何を意味するのか秋には分からなかった。しかし、逆に分かるものもある。
「……ちょっとだけ仁王くんのことが分かった気がするよ。人をからかうのが好きなんだね」
「ピヨッ。……はたして、それは本当に俺なんかのぅ? 俺ではない俺の可能性も無きにしも非ず……いや、実は裏の裏をかいて九条の言う通りの俺なのやもしれん」
「結局どっちなの?」
「さぁのぅ? 本当の俺を知られたら終わりだっちゃ」
「仁王くんって秘密主義なんだね」
「さて、それもどうなんじゃろな?」
「……」
はぐらかしてばかりの仁王にさすがの秋も眉を下げる。もしかして嫌われてるのでは? という不安が芽生えたから。
そんな秋の様子を察知した仁王が少しやりすぎたかと頬を掻き、秋の目の前に手のひらを差し出した。
「?」
「ようみときんしゃい」
そう告げると何もない手のひらをぎゅっと握りしめた。
「ちちん、ぷりぷり」
拳を作った手とは逆の手でパチンと指を鳴らすと、握りしめた手を開けばそこには飴玉がひとつ彼の手のひらから生まれた。
「あ、あれ? さっきまでは何もなかったのに」
「からかいすぎたお詫びじゃ。受け取りんしゃい」
ころん、と秋の手の上に転がる飴。可愛らしくふたつに結ばれ、イチゴのイラストも描かれている。おそらく味を示しているのだろう。
手品の種は分からないが、仁王の誠意はしっかりと秋には伝わった。
「やっぱり仁王くんは優しいね」
くすりと笑いながら仁王の人柄を何となく理解した秋。そんな彼女に向けて仁王は秋の頭をポンポンと軽く叩いた。
「!」
「優しいのはお前さんぜよ」
フッと笑みを浮かべる仁王の表情に秋は小さく胸が高鳴った。
からかいの笑みとはまた違う優しさがこもったもので、どこか中学生とは思えない色気も漂っている。運動部に入っているとは思えない色白い肌も相まって秋にそう思わせたのかもしれない。
「あ、あの、私、赤宮さんの所に行ってくるねっ。そ、それじゃあっ」
胸が熱くなり、顔まで火照らせた秋は口早にこれからの予定を告げると貰った飴玉を強く握り、その場から逃げ出すように仁王の前から去っていった。
「照れ屋さんやのぅ」
仁王に手を引かれ、遥から離れるように食堂から抜け出すことになった秋はいつの間にか裏庭へと来てしまっていた。
ここへ連れて来た張本人は秋から手を離して抱えていた弁当箱も返し、軽い謝罪をするがなぜ裏庭なのか分からず秋は尋ねてみた。
「どうして裏庭に? それに遥から逃げる必要はあったのかな……?」
「そりゃあ、お前さんあのままだと西成に付き合うつもりじゃったろ?」
「え? うん、もちろん」
「あやつはの、すーぐ人に頼るから集中力を欠くんじゃ。一対一でもせんとタメにならん」
そういうことだったんだ。彼は彼なりに遥のことを考えて行動したのだと、そう感じた秋は目の前の男子生徒の印象が少し変わった。
「そんでここに連れて来たのは単に目立ちたくないだけじゃな。副生徒会長ともあろう人間が俺に連れられて走り回ってたんじゃ周りの見る目もあるしの」
確かに校内を走り回っていたら『生徒会の人間なのにモラルがない』と思われかねない。
そして手を引っ張った相手である仁王は女子人気も高いのでもし目撃でもされたらそれはそれで大騒ぎになったはず。
あの場では人の数は多くなかったし、注目もそこまでされていなかったので大きな騒ぎにはならなかったが、仁王は色々と気を遣ってくれたのだろう。
仁王雅治。特徴的な口調にどこか掴めない飄々とした性格で女子からの人気も高い生徒。しかし授業態度には少々問題があるようでサボり癖があるらしい。
真面目な秋としては授業をサボることはとてもではないが考えられないので赤宮麻美とはまた違った問題児なのだと思っていた。
だが、先程より仁王への印象が変わったのだ。
「仁王くんは優しいんだね」
「ほぅ? その言い方じゃと優しいとは思ってなかったようやの?」
「え、いや、そうじゃないよっ。ただ仁王くんがどんな人なのか知らなかったから……!」
「まさか副生徒会長さんに変な目で見られてたとはの……さすがの俺も傷つくぜよ」
顔を逸らし、その表情は見えないものの肩が小刻みに震わせているので、相手を悲しませてしまったのではと秋は焦りの色を見せる。
「ご、ごめんなさいっ! 私、そんなつもりはなくて……! 傷つけるつもりはなかったのっ」
「……ククッ」
慌てて弁解する秋だが、相手から堪えるような笑い声が聞こえてきたので「もしかして……」と仁王に問いかける。
「からかったの……?」
「あーすまんのぉ。あまりにもいい反応するからつい、な?」
この手で引っかかるのは久しぶりだったのか楽しくなってしまった仁王が未だに笑い堪えている。
それを見た秋は怒るでもなく呆れるでもなく笑うでもなく、ただホッと安心している表情を見せた。
「傷ついてないなら良かったよ」
「……その反応はいまいちじゃな」
「えっ?」
「あぁ、いや、こっちの話ぜよ。それにしても九条は純粋やの。あんな話に引っかかるとはな」
「最初から信じないで話を聞くなんて失礼だよ」
「立派な心構えじゃき。けどな、時には疑うことも覚えた方がいいぜよ。嘘と本当しかない世界じゃからの」
「仁王くんは一体何を背負ってるの……?」
「プリッ」
その返事は何を意味するのか秋には分からなかった。しかし、逆に分かるものもある。
「……ちょっとだけ仁王くんのことが分かった気がするよ。人をからかうのが好きなんだね」
「ピヨッ。……はたして、それは本当に俺なんかのぅ? 俺ではない俺の可能性も無きにしも非ず……いや、実は裏の裏をかいて九条の言う通りの俺なのやもしれん」
「結局どっちなの?」
「さぁのぅ? 本当の俺を知られたら終わりだっちゃ」
「仁王くんって秘密主義なんだね」
「さて、それもどうなんじゃろな?」
「……」
はぐらかしてばかりの仁王にさすがの秋も眉を下げる。もしかして嫌われてるのでは? という不安が芽生えたから。
そんな秋の様子を察知した仁王が少しやりすぎたかと頬を掻き、秋の目の前に手のひらを差し出した。
「?」
「ようみときんしゃい」
そう告げると何もない手のひらをぎゅっと握りしめた。
「ちちん、ぷりぷり」
拳を作った手とは逆の手でパチンと指を鳴らすと、握りしめた手を開けばそこには飴玉がひとつ彼の手のひらから生まれた。
「あ、あれ? さっきまでは何もなかったのに」
「からかいすぎたお詫びじゃ。受け取りんしゃい」
ころん、と秋の手の上に転がる飴。可愛らしくふたつに結ばれ、イチゴのイラストも描かれている。おそらく味を示しているのだろう。
手品の種は分からないが、仁王の誠意はしっかりと秋には伝わった。
「やっぱり仁王くんは優しいね」
くすりと笑いながら仁王の人柄を何となく理解した秋。そんな彼女に向けて仁王は秋の頭をポンポンと軽く叩いた。
「!」
「優しいのはお前さんぜよ」
フッと笑みを浮かべる仁王の表情に秋は小さく胸が高鳴った。
からかいの笑みとはまた違う優しさがこもったもので、どこか中学生とは思えない色気も漂っている。運動部に入っているとは思えない色白い肌も相まって秋にそう思わせたのかもしれない。
「あ、あの、私、赤宮さんの所に行ってくるねっ。そ、それじゃあっ」
胸が熱くなり、顔まで火照らせた秋は口早にこれからの予定を告げると貰った飴玉を強く握り、その場から逃げ出すように仁王の前から去っていった。
「照れ屋さんやのぅ」