自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
小話
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柳蓮二×九条秋(『今日の立海大附属』設定より)
その日は生徒会があった。生徒会室の窓から見える曇天の空は今にも降り出しそうというような色をしている。
ちょうど会議を終え、会長等は急いで帰るぞという意気込みであった。まぁ、今にも、というより正確にはあと4分後に降られる確率が98%だがな。
自分で弾き出したデータの結果、念の為に片倉達にもそのことを伝えたが、用事があるのか雨に打たれてでも帰ると急いでいた。他のメンバーも同様で気づけばあっという間に生徒会室は静かになる。俺と九条だけを残して。
「そんなに急がなくとも通り雨なのだから少し待てばいいものの」
「それを言えば何人かは思い留まったかとしれないね」
小さく笑う九条はおそらく「柳くんはうっかりさんな所もあるね」と考えているだろう。彼女の性格上あえて言わなかったとは思うまい。あまり人を疑わない九条らしくもあり、危うい所でもある。
二人きりになるために仕組んだなんて九条が知ればどんな顔をするだろうか。予想は出来ても確証は得られない。
希望的観測や己の気持ちが入り交じって客観的なデータを導き出せないのだからやはり恋情ほど厄介なものはない。……貞治、お前はこんな俺を笑うだろうか?
「九条は急ぎの用事はないのか?」
「急ぎの用事は特にないかな。それに通り雨くらいなら待てるしね」
「そうか。急ぎではないならこのまま待つのもいいが、俺はちょうど折り畳みの傘を持っている。九条を一人取り残すのも忍びないので一緒に帰らないか? もちろん家まで送ろう」
自分の鞄の中から折り畳み傘を取り出す。九条はぱちくりと硝子玉のような目でそれを見ると、戸惑う様子を見せた。
「え。でも、そんな柳くんに悪いよっ。折り畳み傘だとそんなに大きくはないだろうし、それに家まで送ってもらうだなんて申し訳ないよ……」
ぶんぶんと控えめに首を横に振る九条の返答は読んでいた。いや、読むまででもない。彼女はそういう人間なのだから。
「九条、俺が自ら言ってることだからお前が気にすることはない」
「けど……」
「遠慮するのは悪いことではないが、度が過ぎると相手にも悪いぞ。お前が嫌だと思わない限り俺も引くつもりはないのだが」
そう告げると彼女は一瞬考えた素振りを見せたあと、躊躇いながらゆっくり頷いた。
「柳くんの迷惑じゃなければ……お願いしてもいいかな?」
「あぁ」
ようやく引き出せた彼女の言葉を聞いて唇が少しばかり緩んだ。通り雨が止む前にすぐに行動を移さなければ。
九条と共に校舎の出入口へと向かい、折り畳み傘を差して彼女へと目を向ける。
「さぁ、行こうか」
「う、うん。お邪魔します」
傘の下に招き入れ、学校の敷地へと出る。彼女の歩幅に合わせて歩くが、それでも俺と九条の間は少しばかり間が空いている。これでは彼女が傘から出て濡れてしまう。
九条ならそれでも構わないと言い出しそうなので口で言うよりも彼女の肩を掴んでぐいっと自分の元へ寄せた。
「!?」
「あまり離れるな。濡れてしまうぞ」
「え、あっ、でもくっつき過ぎじゃない、かな……?」
顔を赤くした彼女があわあわと慌てふためく様子はどこか愛らしい。むしろそれがいいのだが、とうっかり口を滑らさないようにしなければ。
「俺は気にならないな。どちらかと言えばお前を濡らしてしまう方が気になって仕方ない。俺のためにも身を寄せてもらいたいな」
「そ、う? それなら……うん」
頷いたので彼女の肩から手を離す。ぴたり、とくっついたまま九条の熱が離れずに済んだことを安堵した。
「九条はもう少し人を頼るべきだろう。遠慮ばかりは良くない」
「そんなに遠慮してたかな……」
「自分でも気づかないくらい自然のことなのだろう。美徳とも言えるだろうが、少なくとも俺は頼ってもらいたいな」
「柳くんは頼られたいの?」
「誰にでも、ではない。少なくともお前には、だ。それに頼ってもらう方が嬉しいものだ」
好いた相手ならば尚のこと。それだけ男というのは単純な生き物ではある。
「あと心を許してもらえているとも思える」
「そうなんだね。じゃあこれから少しずつ柳くんを頼っていくよ。あ、もちろん鬱陶しかったら言ってね」
「九条にそのような心配は最初からしていないので無用な気遣いだな」
「親しき仲にも礼儀あり、だからね。あと柳くんも私を頼ってほしいな。私ばっかりじゃ気が引けちゃうから」
その方が対等だもんね。そう告げる九条の言葉はとても穏やかなものだった。彼女が求めるのなら、と俺は頷いた。
「俺は元よりお前を頼っているさ。生徒会でも部活でも。……しかしそうだな、それ以外でも何かあれば九条に頼ることにしてみるか」
「うん、是非っ」
両手に拳を作って気合いを見せる九条にそこまでしなくても、と心の中で小さく笑ってしまう。
なかなかに味わえないこの状況を客観的に見ながらも相合傘というのも悪くはないなと思っていることに九条が知るはずもない。
その日は生徒会があった。生徒会室の窓から見える曇天の空は今にも降り出しそうというような色をしている。
ちょうど会議を終え、会長等は急いで帰るぞという意気込みであった。まぁ、今にも、というより正確にはあと4分後に降られる確率が98%だがな。
自分で弾き出したデータの結果、念の為に片倉達にもそのことを伝えたが、用事があるのか雨に打たれてでも帰ると急いでいた。他のメンバーも同様で気づけばあっという間に生徒会室は静かになる。俺と九条だけを残して。
「そんなに急がなくとも通り雨なのだから少し待てばいいものの」
「それを言えば何人かは思い留まったかとしれないね」
小さく笑う九条はおそらく「柳くんはうっかりさんな所もあるね」と考えているだろう。彼女の性格上あえて言わなかったとは思うまい。あまり人を疑わない九条らしくもあり、危うい所でもある。
二人きりになるために仕組んだなんて九条が知ればどんな顔をするだろうか。予想は出来ても確証は得られない。
希望的観測や己の気持ちが入り交じって客観的なデータを導き出せないのだからやはり恋情ほど厄介なものはない。……貞治、お前はこんな俺を笑うだろうか?
「九条は急ぎの用事はないのか?」
「急ぎの用事は特にないかな。それに通り雨くらいなら待てるしね」
「そうか。急ぎではないならこのまま待つのもいいが、俺はちょうど折り畳みの傘を持っている。九条を一人取り残すのも忍びないので一緒に帰らないか? もちろん家まで送ろう」
自分の鞄の中から折り畳み傘を取り出す。九条はぱちくりと硝子玉のような目でそれを見ると、戸惑う様子を見せた。
「え。でも、そんな柳くんに悪いよっ。折り畳み傘だとそんなに大きくはないだろうし、それに家まで送ってもらうだなんて申し訳ないよ……」
ぶんぶんと控えめに首を横に振る九条の返答は読んでいた。いや、読むまででもない。彼女はそういう人間なのだから。
「九条、俺が自ら言ってることだからお前が気にすることはない」
「けど……」
「遠慮するのは悪いことではないが、度が過ぎると相手にも悪いぞ。お前が嫌だと思わない限り俺も引くつもりはないのだが」
そう告げると彼女は一瞬考えた素振りを見せたあと、躊躇いながらゆっくり頷いた。
「柳くんの迷惑じゃなければ……お願いしてもいいかな?」
「あぁ」
ようやく引き出せた彼女の言葉を聞いて唇が少しばかり緩んだ。通り雨が止む前にすぐに行動を移さなければ。
九条と共に校舎の出入口へと向かい、折り畳み傘を差して彼女へと目を向ける。
「さぁ、行こうか」
「う、うん。お邪魔します」
傘の下に招き入れ、学校の敷地へと出る。彼女の歩幅に合わせて歩くが、それでも俺と九条の間は少しばかり間が空いている。これでは彼女が傘から出て濡れてしまう。
九条ならそれでも構わないと言い出しそうなので口で言うよりも彼女の肩を掴んでぐいっと自分の元へ寄せた。
「!?」
「あまり離れるな。濡れてしまうぞ」
「え、あっ、でもくっつき過ぎじゃない、かな……?」
顔を赤くした彼女があわあわと慌てふためく様子はどこか愛らしい。むしろそれがいいのだが、とうっかり口を滑らさないようにしなければ。
「俺は気にならないな。どちらかと言えばお前を濡らしてしまう方が気になって仕方ない。俺のためにも身を寄せてもらいたいな」
「そ、う? それなら……うん」
頷いたので彼女の肩から手を離す。ぴたり、とくっついたまま九条の熱が離れずに済んだことを安堵した。
「九条はもう少し人を頼るべきだろう。遠慮ばかりは良くない」
「そんなに遠慮してたかな……」
「自分でも気づかないくらい自然のことなのだろう。美徳とも言えるだろうが、少なくとも俺は頼ってもらいたいな」
「柳くんは頼られたいの?」
「誰にでも、ではない。少なくともお前には、だ。それに頼ってもらう方が嬉しいものだ」
好いた相手ならば尚のこと。それだけ男というのは単純な生き物ではある。
「あと心を許してもらえているとも思える」
「そうなんだね。じゃあこれから少しずつ柳くんを頼っていくよ。あ、もちろん鬱陶しかったら言ってね」
「九条にそのような心配は最初からしていないので無用な気遣いだな」
「親しき仲にも礼儀あり、だからね。あと柳くんも私を頼ってほしいな。私ばっかりじゃ気が引けちゃうから」
その方が対等だもんね。そう告げる九条の言葉はとても穏やかなものだった。彼女が求めるのなら、と俺は頷いた。
「俺は元よりお前を頼っているさ。生徒会でも部活でも。……しかしそうだな、それ以外でも何かあれば九条に頼ることにしてみるか」
「うん、是非っ」
両手に拳を作って気合いを見せる九条にそこまでしなくても、と心の中で小さく笑ってしまう。
なかなかに味わえないこの状況を客観的に見ながらも相合傘というのも悪くはないなと思っていることに九条が知るはずもない。