自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
vol.20 また怪我をするようなことがあったらと思うと心配だよ
主人公名前変換
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「ふんふふ~ん」
機嫌良さげな鼻歌を歌いながら山吹の選手が控えるベンチに座り、手鏡を持って自分の身なりを整える少女がいた。下梨誉 である。
つい先日、聖ルドルフから山吹に転校した彼女はすぐさま女子テニス部に入部。そしてその実力から早くもレギュラーとしての地位を確立した。
全ては赤宮麻美に勝つために。再び大会で戦うために彼女はもう後はないと見限ったルドルフから再戦が出来そうな学校に移動したのだ。
「まぁ、ほんとに5位決定戦で敗退するとはね~。誉ちゃんってば先を読む力も長けててさすがすぎ~! 確か氷帝が勝ったんだっけ。そーいえば氷帝って部員数もクソやべぇ上にイケてるメンズが揃ってるって風の噂に聞いたわね。5位決定戦から這い上がったなら氷帝に行ったら良かったかな~。お金持ちもいるみたいだし、侍らせたいな~」
はふっ、とわざとらしい溜め息をつくと鮮やかなオレンジ髪の男子テニス部の一人が声をかける。
「え~? 氷帝に行かなくて良かったって俺は思ってるよ。誉ちゃんみたいな可愛い子がうち来ただけじゃなくテニスも強いだなんて素晴らしいことこの上ないよ!」
「あー……千石さんですかぁ。今日も女の子に目がなくて何よりですね~」
「誉ちゃん、ちょっとだけ俺に冷たくない?」
「まぁね~。だって千石さんってば女の子なら誰でも持ち上げるじゃないですかぁ。誉ちゃんは誉ちゃんだけをよいしょしてくれる人が好みなんでーす!」
「そんな自己愛の強い君も魅力的だよ」
「話聞いてんの? 鼻の下伸び男」
ジトッと千石に目を向けるが、相手はその意味を汲むどころかデレデレと鼻の下を伸ばしているばかり。
「おやおや、仲が良さそうですねぇ」
「でっしょ~伴爺っ」
「んなわけないでしょ伴爺!」
そこへ始終笑みを浮かべる男子テニス部顧問の伴田幹也が姿を現す。茶化すような顧問の言葉に対する二人の反応は真逆のものだった。
「それよりミクスドの初戦は青学でしょ? 向こうのオーダー表はまだなの? 誉ちゃん結構待ってるんですけど~!」
「いえね、それがまだ青学の出場登録がまだのようでして。そろそろ締切時間なんですけどねぇ」
伴田が腕時計を見て時間を確認する。そんなに時間はないのだろう。
「あらら。そうなの? このまま締切過ぎて不戦勝しちゃうかもな~。それだったらラッキーなんだけど、青学がそんなことするとは思えないのもまた事実なんだよね」
「はあっ? 戦わずにして勝つのは誉ちゃんとしても楽でいいけど、それは他の学校じゃなきゃ嬉しくないわよ! あの赤宮さんと対戦しなきゃ意味がないんだからせめて戦ってから敗退しなさいよ! なんのために誉ちゃんが山吹に入ったか分からないじゃないのっ! ……ハッ! まさか誉ちゃんがあまりの可愛さに恐れをなしたのかもね!」
「ややっ! それは大変だ! 小悪魔的なキュートさが誉ちゃんの売りなのに! まさかそれが仇となるだなんて……」
「千石さんほんと黙って。誰にでも軽々しく褒め讃えるその口で誉ちゃんを持ち上げないでちょうだいっ!」
女好きでなければ千石の言葉も素直に受け入れ、むしろ調子に乗っていたのだろうが、女の子なら誰でも声をかけるナンパ師の言葉は誉にとっては羽よりも軽いものである。
すると伴田の元に大会関係者が声をかけ、一枚の用紙を彼に手渡した。伴田はそのプリントに目を通し、さらに深い笑みを浮かべる。
「下梨さん、喜んでいいですよ。あなたの望み通りの対戦相手となりました」
「ほんと!? 赤宮さんとやり合えるのね! よっしゃあ! 待ってなさいよ、暴君悪役女王様! 今こそこのヒロイン枠である誉ちゃんがぶちのめしてあげるわ!」
グッと拳を作り、空へと突き上げる。そんなテンション爆上げの誉に向けて千石が嬉しそうに拍手をし、伴田はうんうんと頷いた。
「……でもさー、伴爺。ほんとに誉ちゃんのミクスドペアの相手はあいつでいいの? ちょっと大変じゃないかな?」
「むしろ下梨さんでなければ彼とは組めないかと。それに彼女はあなたとだけは絶対に組みたくないと言ってましたからねぇ」
「うぐっ。傷つくなぁ……」
トホホ、と肩を落とす千石をよそに誉はダブルスの相方となる彼に目を向けた。
「そ・う・い・う・わ・け・で~! 亜久津さん、よろしくお願いしますねっ! きゃぴっ」
星を飛ばすような勢いのウインクと猫撫で声で気だるそうにベンチへと腰掛ける亜久津に話しかけると、不良生徒の彼は誉に向けてギロリと突き刺すような睨みを利かせた。
「うるせぇ。話しかけんじゃねぇ。ドタマかち割られてぇのか!」
「あら? あらあら~? もしかしてそれで脅してるおつもりで~? 生憎だけど誉ちゃんより怖いものなんてないのよね! ま、可愛すぎて怖いっていうものだけど。亜久津さんには備わってない怖さですよね~!」
「……」
「無視してんじゃないわよ! 負け惜しみなわけ!?」
「馬鹿が伝染る。喋んな」
「はあああああ!? むしろ天才の申し子ですけど~!?」
「ほら、あのように亜久津くんに動じない女子はそうそういませんよ。息も合いそうですし」
「……息は合わないんじゃないかな」
満足そうに笑う伴田とは違って千石は苦笑いしながら亜久津と誉を眺めていた。
機嫌良さげな鼻歌を歌いながら山吹の選手が控えるベンチに座り、手鏡を持って自分の身なりを整える少女がいた。
つい先日、聖ルドルフから山吹に転校した彼女はすぐさま女子テニス部に入部。そしてその実力から早くもレギュラーとしての地位を確立した。
全ては赤宮麻美に勝つために。再び大会で戦うために彼女はもう後はないと見限ったルドルフから再戦が出来そうな学校に移動したのだ。
「まぁ、ほんとに5位決定戦で敗退するとはね~。誉ちゃんってば先を読む力も長けててさすがすぎ~! 確か氷帝が勝ったんだっけ。そーいえば氷帝って部員数もクソやべぇ上にイケてるメンズが揃ってるって風の噂に聞いたわね。5位決定戦から這い上がったなら氷帝に行ったら良かったかな~。お金持ちもいるみたいだし、侍らせたいな~」
はふっ、とわざとらしい溜め息をつくと鮮やかなオレンジ髪の男子テニス部の一人が声をかける。
「え~? 氷帝に行かなくて良かったって俺は思ってるよ。誉ちゃんみたいな可愛い子がうち来ただけじゃなくテニスも強いだなんて素晴らしいことこの上ないよ!」
「あー……千石さんですかぁ。今日も女の子に目がなくて何よりですね~」
「誉ちゃん、ちょっとだけ俺に冷たくない?」
「まぁね~。だって千石さんってば女の子なら誰でも持ち上げるじゃないですかぁ。誉ちゃんは誉ちゃんだけをよいしょしてくれる人が好みなんでーす!」
「そんな自己愛の強い君も魅力的だよ」
「話聞いてんの? 鼻の下伸び男」
ジトッと千石に目を向けるが、相手はその意味を汲むどころかデレデレと鼻の下を伸ばしているばかり。
「おやおや、仲が良さそうですねぇ」
「でっしょ~伴爺っ」
「んなわけないでしょ伴爺!」
そこへ始終笑みを浮かべる男子テニス部顧問の伴田幹也が姿を現す。茶化すような顧問の言葉に対する二人の反応は真逆のものだった。
「それよりミクスドの初戦は青学でしょ? 向こうのオーダー表はまだなの? 誉ちゃん結構待ってるんですけど~!」
「いえね、それがまだ青学の出場登録がまだのようでして。そろそろ締切時間なんですけどねぇ」
伴田が腕時計を見て時間を確認する。そんなに時間はないのだろう。
「あらら。そうなの? このまま締切過ぎて不戦勝しちゃうかもな~。それだったらラッキーなんだけど、青学がそんなことするとは思えないのもまた事実なんだよね」
「はあっ? 戦わずにして勝つのは誉ちゃんとしても楽でいいけど、それは他の学校じゃなきゃ嬉しくないわよ! あの赤宮さんと対戦しなきゃ意味がないんだからせめて戦ってから敗退しなさいよ! なんのために誉ちゃんが山吹に入ったか分からないじゃないのっ! ……ハッ! まさか誉ちゃんがあまりの可愛さに恐れをなしたのかもね!」
「ややっ! それは大変だ! 小悪魔的なキュートさが誉ちゃんの売りなのに! まさかそれが仇となるだなんて……」
「千石さんほんと黙って。誰にでも軽々しく褒め讃えるその口で誉ちゃんを持ち上げないでちょうだいっ!」
女好きでなければ千石の言葉も素直に受け入れ、むしろ調子に乗っていたのだろうが、女の子なら誰でも声をかけるナンパ師の言葉は誉にとっては羽よりも軽いものである。
すると伴田の元に大会関係者が声をかけ、一枚の用紙を彼に手渡した。伴田はそのプリントに目を通し、さらに深い笑みを浮かべる。
「下梨さん、喜んでいいですよ。あなたの望み通りの対戦相手となりました」
「ほんと!? 赤宮さんとやり合えるのね! よっしゃあ! 待ってなさいよ、暴君悪役女王様! 今こそこのヒロイン枠である誉ちゃんがぶちのめしてあげるわ!」
グッと拳を作り、空へと突き上げる。そんなテンション爆上げの誉に向けて千石が嬉しそうに拍手をし、伴田はうんうんと頷いた。
「……でもさー、伴爺。ほんとに誉ちゃんのミクスドペアの相手はあいつでいいの? ちょっと大変じゃないかな?」
「むしろ下梨さんでなければ彼とは組めないかと。それに彼女はあなたとだけは絶対に組みたくないと言ってましたからねぇ」
「うぐっ。傷つくなぁ……」
トホホ、と肩を落とす千石をよそに誉はダブルスの相方となる彼に目を向けた。
「そ・う・い・う・わ・け・で~! 亜久津さん、よろしくお願いしますねっ! きゃぴっ」
星を飛ばすような勢いのウインクと猫撫で声で気だるそうにベンチへと腰掛ける亜久津に話しかけると、不良生徒の彼は誉に向けてギロリと突き刺すような睨みを利かせた。
「うるせぇ。話しかけんじゃねぇ。ドタマかち割られてぇのか!」
「あら? あらあら~? もしかしてそれで脅してるおつもりで~? 生憎だけど誉ちゃんより怖いものなんてないのよね! ま、可愛すぎて怖いっていうものだけど。亜久津さんには備わってない怖さですよね~!」
「……」
「無視してんじゃないわよ! 負け惜しみなわけ!?」
「馬鹿が伝染る。喋んな」
「はあああああ!? むしろ天才の申し子ですけど~!?」
「ほら、あのように亜久津くんに動じない女子はそうそういませんよ。息も合いそうですし」
「……息は合わないんじゃないかな」
満足そうに笑う伴田とは違って千石は苦笑いしながら亜久津と誉を眺めていた。